第187話 表彰式

『これより!表彰式を行う!』


俺達が舞台への入場口にいる中、そうアナウンスがかかる。


『まず、1位!護守道場!ヌルヴィス!』


俺を呼ぶアナウンスがかかったので俺は歩いて舞台の中央へと行く。ほとんど誰にも賭けられてはいなかったはずなのに、観客席からは大歓声が聞こえてくる。

俺の移動が完了して歓声が収まると、次のアナウンスがかかる。



『そして、2位!同じく護守道場!ラウレーナ!』


何と、次に呼ばれるのは姉弟子なのだ。本当なら連続優勝者が2位となるはずだが、そうではないということはあの時の手に持っていたのは魔導具だったということか。

2位に姉弟子が呼ばれたことで困惑からか歓声はすぐには聞こえなかった。しかし、そんなのは一瞬ですぐに俺の時以上の歓声が聞こえてくる。俺は自分の人気のなさと同時に姉弟子の人気を実感した。


『最後に3位!無所属!サルロン!』


次に呼ばれたのは俺と準決勝で戦い、姉弟子と3位決定戦で戦った一強道場の長槍使いだ。俺よりも歓声が小さいのを聞いて安心した。

そして、3位までが舞台中央に揃うと、ついに連続優勝者の事をアナウンスで話し出す。



『撃砕道場のジャンソルが決勝で手に持ったものについて調べたが、それは相手を激しい目眩と麻痺をさせる効果を持つ魔導具であった。その後、撃砕道場内を捜索すると、隠されていた属性武器も魔導具の1種であり、他にも隠された魔導具は複数見つかった。その属性武器は準決勝に使われたものであり、準決勝でも魔導具を使用した可能性が高い。

これは計画性もあり、非常に悪質ということで撃砕道場は全財産没収かつ取り潰し。魔導具に関わっていた者は全て逮捕となった。これから更なる余罪を追求していく。

また、魔導具に関してはジャンソルのみが使用しており、その他の大会参加者は魔導具に関して何も知らなかった。そのため、元撃砕道場のジャンソル以外の大会参加者には特にペナルティは与えないものとする。ただ、これから逮捕したものに話を聞き、魔導具の使用があった場合は同じく逮捕する予定だ』


つまり、魔導具の使用が確定し、一強道場は全財産没収で取り潰し、連続優勝者を含む魔導具使用に関与していたものは全員逮捕ということか。そして、大会に参加していた他の一強道場の面々は特に何も無しって感じだな。

概ね、師匠が話していた処置に近くなったな。



『これより!トロフィーの授与を行う!3位!無所属!サルロン!』


「はい!」


3位はアナウンスがかかり、前に出て50cm程の金属が使われ、自分の名前が刻まれたトロフィーを貰う。


『2位!護守道場!ラウレーナ!』


「はい!」


今度は姉弟子のアナウンスがかかって姉弟子もトロフィーを貰いに行った。姉弟子が受け取ったトロフィーは1m程で3位のものとは違って宝石などの装飾が少し付いている。


『1位!護守道場!ヌルヴィス!』


「はい!げぇ…」


俺は返事をして前に行ったが、渡される予定のトロフィーを見て顔をしかめる。


「君のおかげで助かったよ。ありがとう」


「あ、はい…」


俺は2m程で宝石が何個も付いた豪華なトロフィーを受け取る。


(重っ…)


俺の大鎌の何倍も重い。トロフィー部分は金属のため、かなりの重量がある。俺はそれを落とさないように持ちながらさっきの場所に戻る。


『今年はイレギュラーがあったが、無事に大会を終えられたことを嬉しく思う!これにて、表彰式を終了する!』


観客席からの大歓声が聞こえてきて、ここで表彰式は終了となり、俺達も舞台から退場する。



「あー、重かった」


「それならトロフィーを交換する?」


「絶対しない」


俺は観客席から見えないところまで行くと、すぐにトロフィーをマジックポーチにしまう。それから俺と姉弟子は師匠と先生と合流する。



「1位と2位おめでとう。表彰式の様子を見てると、さながらラウレーナの両親を見ているようだった」


「そうですね」


確か、ラウレーナの両親は個人戦ではクジ運も良くて1位と2位をほぼ取っていたらしいからな。その姿は俺とラウレーナと重なるところがあるだろう。


「それと大丈夫だと思っていたが、ヌルヴィスに魔導具使用の疑いがかからなくてよかったな」


「え?」


師匠から思わぬ言葉をかけられて驚いた。なぜそんなことになるのだ?


「見るものが見れば身体強化のモヤが大きくなったのははったりだと気付く。そうなると、急に強くなったのは他のスキルか魔導具ということになる。今回は目の上のたんこぶであった撃砕道場の魔導具使用が確定であったから追求はされなかった。ただ、撃砕道場の者はヌルヴィスも魔導具を使ったと騒いだらしいが、犯罪者の言うことは誰も聞かん」


「うわー…」


一強道場という確定した巨悪がいたおかげで俺の存在は見逃されたのか。

ただ、今回のことで魔導具使用の取り締まりはかなりキツくなるそうで、絶対に魔導具は持ち込めなくするそうだ。そのため、もし次回の大会に出るとしてもその時は決勝と同じことをしても魔導具使用の疑いは大丈夫とのことだ。


「それじゃあ、屋敷に帰るぞ」


そして、それから俺達は屋敷へと帰った。

もう一強道場はなくなり、大会の成績は俺と姉弟子が1位と2位になって大満足の結果となった。

全てが上手くいったからか俺は完全に油断していた。それから数日後、俺は路上で顔を隠した見知らぬ者に突然話しかけられることになるとはつゆ知らず…。

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