第185話 決勝戦 2
「あ?俺にそんな見かけ騙しは通用しないぞ?」
連続優勝者は俺の身体強化のモヤが数倍に大きくなったのを見てそう言ってきた。確かにこれはただの見かけ騙しで、モヤを抑える要領で逆に多く発しているだけだ。強化の強さは全く変わっていない。
だが、もちろん見かけ騙しをしたいだけじゃない。
(闇身体強化、氷魔装)
俺は闇魔法での身体属性強化と氷魔装を行う。
(完璧だ)
闇身体強化の黒紫のモヤは無駄に大きい身体強化のモヤが厚い壁になって少なくても観客席からは全く分からない。また、氷魔装は闘装の内側にやることによって闘装が分厚くなっただけに見える。師匠の看破のような特殊なスキルさえなければ決してバレない。それにしても安全面を考慮して観客席から舞台はそれなりに離れているからスキルを使うのも難しいだろう。
まあ、だからと言って魔法職のステータスも持っているとバレる危険性はあるわけだが。
「無駄なことしても意味ねぇーぞ!」
連続優勝者はそう言いながら突っ込んできた。そして、そのまま剣を振り下ろすが、俺は棒立ちで動かない。
「観念したようだ…な……」
「なんだ、こんなもんか」
俺の肩に当たった連続優勝者の剣は闘装を砕きはしたが、氷魔装には軽くヒビを付けるだけだった。もちろん氷魔装を強くしているのもあるが、姉弟子よりも攻撃力が弱いのだ。
「しっかり盾で防げよ!!」
「ぬおおっ…!」
放心している連続優勝者に俺が大鎌を振る。連続優勝者は慌てて盾で大鎌を防ぐが、勢いに負けて仰け反りながら足を引き摺って下がる。
「な、何だ…?何が起こったんだ?」
連続優勝者は突然強さが逆転したことに混乱しているようだが、そんなの俺が知ったことでは無い。俺は連続優勝者の方へ余裕を見せつけるようにゆっくり歩いていく。
「このっ!」
近寄ってきた俺に連続優勝者は剣を振るが、俺はそれを避けもガードもせずにそのカウンターで大鎌を振る。もちろん、先に連続優勝者の剣が脇に当たるが、俺の氷魔装を砕けない。
「ふぐっ…」
再び大鎌を盾で受けた連続優勝者は無様な格好で足を引き摺って下がる。それをまた歩いて追い、同じことをもう3度繰り返した時だった。
「くそっ…はっ?!」
連続優勝者のすぐ後ろが場外の場所まで下がっていたのだ。
「クソがー!!」
連続優勝者はその事に慌ててか大振りで剣を振ってくる。この隙を逃す俺では無い。同じように剣は無視して大鎌を振る。
「がほっ…!」
今度は盾ではなく、右の脇腹に大鎌の峰が当たった連続優勝者は一気に舞台中央付近まで吹っ飛ぶ。闘装は砕け、確実に骨も数本折った。もちろん、場外に出そうと思えば出せた。だから連続優勝者が場外に行かなかったのはわざとだ。
それにしても、今の俺がやっている戦法はいつもやられている戦法な訳だが、絶対に破られない防御力を持ってやるとこんなに強力なのか。
「おいおい!お前はサンドバッグにすらなれないのか?さっきから1発殴っただけで転がるし、今に至っては遠くまで行きすぎだぞ。不良品もいいところだ。サンドバッグぐらいにしかなれないんだからその役目くらいはしっかりしてくれよ。このじゃあ俺が弱いものいじめをしてるみたいだろ」
「てめぇ…」
連続優勝者は脇腹を抑えながら剣を杖のようにして立ち上がる。俺はそれを見ながら連続優勝者へとゆっくり歩く。
「調子に乗るのもいい加減にしろよ」
連続優勝者はそう言うと、ニヤッと一瞬笑う。
「立ってるのも辛いんならさっさとリタイヤしてくれ。俺はこれ以上弱いものいじめはしたくないぞ」
俺がそう言い終わる頃には、ちょうど連続優勝者まで残り10歩弱といったところだった。
「死ねーーっ!!」
連続優勝者は左手に持つ盾を二の腕に付けると、左腕を背中の服の中に回す。そこから取りだした何かを持つと、腕を引いて勢いよく投げようとする。
俺はそれを待っていた。俺は無属性付与をして一気に駆け出す。
「はあっ!」
「なっ…」
取り出した何かを投げる前の左腕に大鎌の刃を向けて振る。闘装は邪魔だったが、防御は高くないのかスっと腕を切断できた。また、切断した瞬間に大鎌を勢いよく横に向け、切断した腕を天高く弾いて飛ばす。天高く飛んだ腕の先の手には握り拳2個分より大きいもの何かが握られている。その何かには紫に光る魔石が目立つ。これなら観客席の者も確実に見たな。
「おっら!」
「ぎゃあー!!ごふっ…」
腕の傷を右手で踞ろうとする連続優勝者の顔面を俺は全力で殴り付けた。もう身体に力も入っていなかった連続優勝者は何度もバウンドしながら舞台から出て、壁に激突して止まる。
「しっ!」
また、殴ったと同時に俺はダッシュで舞台の端まで移動する。その理由は今連続優勝者が取りだした魔導具が地面に落ちると同時に発動する危険性があるからだ。あれから無色透明の毒が出るという場合があるかもしれないから息も止めて置く。
ドサッ
腕が落ちてきたが、握られている何かに着いている魔石は砕けたり色が薄くなったりはしない。魔導具を使うと魔石が砕けたり、色が薄くなるらしいから発動しなかったようだ。もちろん、まだ警戒はするけど。
『しょ、勝者!護守道場!ヌルヴィス!!』
俺はそのアナウンスを聞いてから舞台から降りる。そのまま入場口まで歩き、振り返ると、審判はてんやわんやしていた。その理由は腕が斬られた連続優勝者の治療、そして舞台中央にある切断させた腕が持っている何かだ。
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