第176話 皆の2回戦

『これより!2回戦、第1試合を行う!』


俺の試合の次の日、姉弟子とその他道場の者が舞台に立っていた。姉弟子の対戦相手の男の装備には雷の武器はなく、大剣を装備している。


『始め!』


その合図で姉弟子と大剣男はそれぞれ身体属性強化、魔装と身体強化と闘装をする。それが完了すると、大剣男の方から姉弟子に突っ込んでいく。


「速いな…」


前回の試合でも見たが、大剣を持っているから攻撃特化でスピードは遅いということはなく、かなりのスピードがある。むしろスピード特化だと思われる。


「るあっ!」


叫びながら振るわれた大剣を姉弟子は片腕でガードすると、もう片腕で大剣男にカウンターの拳を放つ。


「ちっ…」


しかし、その拳では闘装にヒビを入れるだけで貫くことはできなかった。あの闘装は相当頑丈にできているな。

そこからはお互いほぼノーガードの乱打戦となった。ただ、それは10分と続かなかった。



「くそっ!」


大剣男が姉弟子から距離を取った。その理由は観客席から見ても明白で、姉弟子の攻撃に闘装の纏い直しが追い付かなくなったのだ。大剣男は一強道場と同じく武器と体の両方に闘装を纏っているが、一強道場と違って体の方がより闘力が込められていると思う。

姉弟子はわざと歩いて距離を取った大剣男を追う。大剣男はあまり攻撃力が高くない。それは今の攻防で傷1つ追っていない姉弟子を見ればよく分かる。ただ、今の攻防を続けて倒れないということは大剣男も防御力は高そうである。



「らあっ!!」


姉弟子が余裕そうに歩いて近付いているのにイラついたのか、大剣男は休憩もそこそこに大剣を振りかぶって姉弟子に向かっていった。

そこからの試合は長くはなかった。



「かふっ…」


大剣男はだんだん闘力が無くなってきたのか闘装を満足に纏えなくなってきた。すると、姉弟子の攻撃が闘装無しで食らうことになり、それからすぐに地面に突っ伏した。



『勝者!護守道場!ラウレーナ!』


「まあ、そうなるよな」


やはり、姉弟子のあの防御を突破するのは難しいようだ。だから一強道場も雷を使って痺れさせて動けなくして場外に落とすのだろう。

その日にはさらに3試合あったが、姉弟子の次の相手も他道場の者に決まった。また、連続優勝者も楽勝に勝ち上がってきていた。




『2回戦最後の第8試合を行う!』


そして、次の日の最後に俺の試合がやってきた。


「1試合目は選ばれた者が相手では無いからは勝ち上がれたんだぞ。だが、お前もここまでだ。なぜなら、ここで一強道場の選ばれた存在であるこの俺と戦うんだからな。1回戦突破しただけでも運が良かったと思うんだな」


「…それは言う決まりでもあるのか?」


前回の1回戦でも似たようなことを対戦した一強道場の者に言われた。対戦相手には必ず言わないとダメなのか?だとしたら大変そうだな。


「選ばれた存在って何だ?」


「あ?そんなのも知らないのか?それは大会の4位以内になった優れた者のことだ。その優れた者はマンツーマンで師匠がつき、様々なサポートが付いてみっちり鍛えて貰えるんだ。道場に人数が多いのも考えものだよな。俺のように優れた者しか熱心には教えて貰えないのだからな。まあ、それもこれも弱いのが悪いんだがな」


「なるほどね」


1位が決まっているのに他の道場生のモチベーションをどうやって保っているのかと疑問だったが、こうやって他にも特別扱いをしているのか。多分、予選通過者にも似たような特別扱いはしているのだろうな。


『始め!』


俺達の会話が終わったタイミングで試合の開始が合図された。俺は身体強化だけをし、背の大鎌を握って抜く。


「どうした?来いよ」


「後悔しても遅いぞ!」


俺が大鎌を振って挑発すると、4位は俺に勢いよく向かってくる。


「しっ!」


「くっ…」


相手は肘から手の先くらいの短い双剣を使っているのだが、その分攻撃スピードが速い。大鎌でガードし切れず、一瞬で腕が斬られた。


「ん?闘装はできるんだな」


「ああ、そのくらいはな」


さすがに闘装を温存するのは無理と判断して、すぐに闘装を行う。


「それなら的くらいにはなれそうだな!」


そう言うと、4位は俺に向かってきて双剣を振ってくる。ただ、双剣1発では弱めの闘装でも少しひび割れるくらいで割られる様子は無い。


「はっ!」


「よっ」


しかし、俺が大鎌を振ると、一瞬で距離をとって避けてから再び勢いよく向かってくる。それは大鎌を何度振っても同じだった。


(いきなり強さのレベルが上がりすぎだろ…)


対戦相手が前と比べて強くなり過ぎだ。だが、こんなところで負けるつもりは無い。


(何か既視感があるんだよな)


こんなタイプと戦うのは初めてのはずなのにその動きにはどこか既視感がある。


「あっ」


その既視感の正体が分かってからの俺の動きは早かった。


「守れ、シールド」


「なっ!」


俺が大鎌を振ろうとして逃げようとした4位の後ろと左右にシールドを配置して咄嗟に逃げられなくした。


「はあっ!」


「くっ…!」


逃げられないと悟った4位は双剣で防ごうとするが、それをいいことに俺は刃を向けて全力で振った。すると、俺のシールドは割れ、舞台の端の方に居たのもあって4位は場外の壁に激突した。


『勝者!護守道場!ヌルヴィス!』


俺はそのアナウンスを聞きながら辺りがシーンと静まった中、舞台を降りて控え室へと移動した。

あの4位の戦い方は闘装取得前の低い防御力に悩んでいた時の俺だ。あの時の俺は防御が無いからヒットアンドアウェイをするしかなった。そんな相手の対処方法は身をもって知っている。防御の上からだろうと強い一撃で粉砕すればよいのだ。

一強道場特有の武器に闘装を強く纏って、体に纏うのを少なくするのが仇となったな。

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