第175話 皆の1回戦
『始め!』
姉弟子とその対戦相手の入場が終わると、すぐに試合が始まった。
また、姉弟子の相手は一強道場の者で電気が迸る槍を持っている。
「はあーーっ!」
姉弟子の相手は槍を振りかぶりながら姉弟子へと向かっていく。槍の届く範囲になると、槍先を姉弟子へと突き出す。
「流れ出ろ、ウォーターバインド」
「あっ!」
しかし、姉弟子が準備していた魔法によって捕まる。その隙により近付いた姉弟子によって槍ごと右手を握られると、相手は姉弟子に殴り続けられた。
槍が動かせなくなって為す術がない相手は気絶するまでひたすら殴られた。雷の武器を使えば姉弟子に勝てると思って油断してたな。
『勝者!
姉弟子は簡単に初戦を突破した。ちなみに、俺と姉弟子の道場は
「姉弟子、おめでとう」
「とりあえずは1回戦突破できてよかったよ」
確か姉弟子は去年は1回戦で負けてしまったからこの初戦突破は嬉しいはずだ。だが、まだ大会は始まったばかりで、これは優勝までの5勝のうちのたった1勝に過ぎない。
「それじゃあ、姉弟子が次の試合で戦うことになる相手の試合を見ようか」
「そうだね」
1日に4試合やる訳だが、それからは残りの3試合を見た。2試合目は一強道場と他道場の試合だったが、他道場が勝ち上がった。そのため、次の姉弟子の試合は他道場の者と戦うことになる。
『勝者!撃砕道場!ジャンソル!』
2日目の試合で1番盛りあがったのは一強道場である連続優勝者が危なげなく勝ち上がった瞬間だった。まあ、賭けている者が多い分、応援も誰よりもされているだろう。
ちなみに、一強道場の正式名称は撃砕道場で、連続優勝者の名前はジャンソルだそう。まあ、そんな名前を覚える気は無いからこれからも一強道場と連続優勝者と呼ぼうと思う。
また、3日目も特に変わった事は起こらず、予想通り前回の2位が勝ち上がった。
そして、ついに1回戦の最後となり、俺が出場する4日目がやってきた。
『1回戦最後となる第16試合を行う!』
昼過ぎに今日最後の試合となる俺の番がやってきた。俺は舞台上で開始の合図を待っていた。
その前の3試合も見たが、順当に3位と4位が勝ち上がっていた。2位もそうだが、3位と4位もクジ運だけで前回その順位になったのでは無いと分かるだけの実力はあった。
「予選は運良く勝ち上がれてよかったな。だが、初戦の相手が俺とは運が無いな」
「………」
審判が開始の合図をする前に喋りかけてくるが、無視をする。一強道場の者というのは分かるが、こいつの存在なんて知らん。連続優勝者しかり、一強道場の者は道場の強さを自分の強さと勘違いしていないか?
ん?俺が無視しているからか、相手は勝手に1人で怒り出した。
『開始!』
その合図でそいつは火の魔装を行い、俺から距離を取ろうとする。相手が魔法職なのは師匠から聞いていたので、俺は即座に身体強化を行う。
「燃え尽きろ!」
「はあっ!」
詠唱を始めた瞬間に俺は背の大刀を抜いて相手に投げ付け、投げた方に俺も走る。
ちなみに、師匠からの事前情報の内容で大鎌は使う必要は無いと感じたから持ってきていない。
「わっ!」
相手は投げられた大刀を魔装を厚くして弾く。ただ、それに集中し過ぎたせいで詠唱が勝手にキャンセルされる。
「よっ」
「あっ…」
俺は弾かれた大刀をジャンプして掴み、そのまま大刀の先を相手に向けて突き出しながら落下する。
「ぎぃあーー!!」
俺の大刀は相手の太ももを貫通して、舞台にも突き刺さる。これでも詠唱をする気なら傷口を広げるつもりだったが、この様子ならそこまではしなくて良いだろう。
「降参するか?」
「降参!降参!」
『勝者!護守道場!ヌルヴィス!』
呆気なく1回戦での俺の勝ちが決まった。まだ予選から闘装すらしてないぞ。
ただ、この試合でも負け筋はちゃんとあった。師匠による事前情報では今回の相手の【魔攻】は恐らく俺よりも高いらしい。だから魔法を使われて近付けさせてくれなかったら危なかった。だから固定砲台として頑張って予選は通過できたそうだ。ただ、魔法以外の全てがお粗末だったので急に投げられた大刀の対処もまともに出来ていなかった。
次の4位との試合はこんなふうにはいかないだろうな。俺は2回戦からが本番だ。
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