第173話 対戦順
「相変わらず斬新なことをするのう」
「見ていて飽きないですね」
「こんな方法で予選通過したのは初だと思うよ」
「はははっ」
3人の居る観客席に戻ると、3人から褒められているかよく分からない言葉をかけられた。
「この後は受付に行って、開会式が1週間後だっけ?」
「そうだな」
今日はこれから特にやることはなく、受付に行って本戦出場の手続きをするだけだ。その後は1週間後の開会式と抽選を行い、その3日後から本戦開始となる。
受付のところではさっき以上に俺達は注目の的となっていた。…俺達と言うよりも俺だけかもしれないけど。受付で手続きを終えると、道場の方にすぐに戻った。
「ヌルヴィスは本戦では大鎌を使うのか?」
「使うつもりだけど、初戦から使うかは悩んでる」
道場内に入ると、師匠から質問された。
正直言うと、あの連続優勝者と当たるまで大鎌は使いたくない。だが、戦うつもりがなかった予選と違い、1対1の本戦では全体に戦わないといけない。また、負けたらそこで終わりなので、下手に出し惜しみはできない。マジックポーチも使えないので大鎌を使うなら背負わないといけない。大刀を使っても大鎌を背負っていたらあまり意味は無いだろうしな。
「魔力を使わないなら大鎌の出し惜しみは危ないぞ」
「そうだよな…」
魔力無しだから出し惜しみし過ぎるのは良くないだろう。本戦は相手次第でもあるが、最初から大鎌を使うことにしよう。ただ、無属性魔法はシールドしか使わずに行けるところまで行こう。無属性魔法をシールドを作り出すスキルと誤認させよう。
『これより!開会式を始めます!』
1週間後の今日、これから開会式が始まろうとしている。この1週間はいつも通り修練をしていたらすぐにやってきた。
『まずは予選通過者の入場!』
そのアナウンスで俺達予選通過者の28人はまとめて控え室から舞台へと向かった。
「うわ…開会式なのに客席いっぱいになるのか」
今日は開会式と抽選しかないのに観客席は全ての席が埋まっていた。
「賭けをする人にとっては選手の状態を見れたり、対戦相手が決まる今日は重要だからね」
「ああ、なるほど」
この大会では単勝、複勝、3連単、3連複などの賭けが可能である。どうせ連続優勝者が単勝なのは大体の人が予想していると思うが、それ以外ではクジ運も重要となるだろう。また、その賭けを行うための期間として本戦開始までに3日間あるそうだ。
『次に4位から入場です!』
別の入口から今度は4位、3位と順に入場して行く。予選通過者の入場よりも大きく盛り上がっている。また、1人ずつのため軽くその人の紹介もされるのだが、4位、3位、2位と一強道場の者が続いた。
『最後に昨年…いや!今年8連続となるであろう1位の入場です!』
1位が入場すると、観客席の盛り上がりは最高潮となった。
(あれがずっと1位の奴か…)
俺はゆっくり観客席に手を振りながら入場している1位の様子を観察した。ずっと1位ということはあって足取りからして弱くは無いであろう。それに防具や剣がかなり高価そうで強いな。
それから軽く開会式が始まった。選手宣誓などはなく、国のお偉いさんが簡単に開始を宣言するとかで終わった。
『では、これよりクジ引きを始めます!』
また観客が盛り上がる。クジ引きの順番は1位から4位の順で引き、後は予選の番号が早い順に引く形だ。
(1位と2位から4位まででブロックが別れたな)
対戦表はトーナメント方式だが、1位と2位から4位までは完全にブロックが別れた。
その次は予選の1回戦の者からクジを引いていった。
『1番!』
(おっ!姉弟子のクジ運は良いぞ!)
姉弟子は1位と同じブロックではあるが、1位と当たるのは準決勝なのでクジ運はいい方だろう。ただ、1番までなので姉弟子の試合は最初になるな。
その後もクジは引き続けられ、俺の番が来た。
『31番!』
「げっ…」
思わず嫌な声が出た。俺は姉弟子とは違うブロックなのはいいが、初戦の相手が一強道場の予選通過者だ。さらに、お互いに勝ち上がったら4位、3位、2位と順番に戦うことになる組み合わせだった。
『これにて開会式は終了します!皆さん、賭け忘れには気を付けて!』
ここで開会式は終了した。もう俺達も退場しても良いので姉弟子と一緒に舞台に降りようとしたが、それはできなかった。
「運良く人族が予選通過したと聞いたが、そこそこやるようだな」
「あ?」
舞台から降りようとする俺に話しかけてきたのは4位、3位、2位を取り巻きとして連れている連続優勝者だった。いきなりの言い草にイラッときた。
「入る道場さえ間違えなければもっといい線行ってたと思うぜ。まあ、本戦に出れただけで記念にはなっただろう。良かったな」
「いい道場に入ったおかげで予選通過できたわ。どこぞの群れるだけの道場に入らなくてよかった。群れなきゃ予選通過すらできない集団だもんな。本戦でも誰かと一緒じゃないと戦えないんじゃないかって心配してるんだが、1人でも大丈夫か?」
「てめぇ…」
これ以上こいつと会話を続けてたら思わず手が出そうになるので、まだ何か言ってくるのを無視して姉弟子と舞台から降りて控え室に向かった。
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