第171話 姉弟子の予選
「よし、行くぞ」
「はい」
「おう」
予選当日、いつものように朝から軽く運動してから今日の予選会場でもあり、本戦も行われる闘技場へと4人で向かった。
「やっぱりでかいな…」
「獣人国でも1番大きな闘技場だもん」
一応下見で外からは1度見ていたが、思わず圧倒されるほどに大きな闘技場である。客席には何万という人数が入るそうだ。
「受付をしてくるから着いて来い」
師匠はそう言うと、俺達を先導して闘技場の中に入って行った。受付にはそれなりの人数が居たけどその分受付の人数も多かったから意外と早く終わりそうだ。
「…なんか見られてるな?」
「まあ…そうだね」
周りには同じく参加者であろう者達が多く居るのに俺達は何度見かされるほど見られている。まあ、気にしなくてもいいだろう。
自分の番が来て受付をしたが、名前を言って胸に付ける番号札を貰うだけだった。
「ラウレーナは1回戦、ヌルヴィスは4回戦だったな。ヌルヴィスは1~3回戦でどういうものか見ておれ」
「分かった」
俺は1番最後の4回戦だったおかげでそれまでのを見れるから助かる。ちなみに、姉弟子の番号は143で俺の番号は427だった。同じ道場の参加人数が少なかったらちゃんと予選で同じ道場の者と一緒にならないようにしてくれているそうだ。まあ、協力するのを防ぐためらしいけど。
「僕は行ってくるよ」
「頑張ってね」
「いつも通りやれば大丈夫だぞ」
「もっとリラックスしていいですよ」
姉弟子は1回戦ということで少し緊張して様子で選手控え室に向かった。
「さて、儂らは上で見るぞ」
今日の予選は一般公開されていないが、参加者とその道場の者は見られるそうだ。
「うわっ。舞台も広いな」
「直径50mあるからな」
戦うことになる舞台は直径50mの円で、その周りの場外が10数mほどある。ただ、場外は楕円となっており、入場する左右が長くなっている。
俺はそれを場外の奥から高くなっている観客席で見ている。
「お、始まるようだな」
1時間弱ほどで予選の1回目に参加する者が左右からやって来た。その中にはもちろん姉弟子の姿もある
「…何人いるの?」
「今年は97人だそうだ」
「うげ…」
舞台には97人が乗っている。この中で7人が残るまで戦うことになる。
「……始め!」
それからまた少し経つと、予選の1回戦が始まった。
「…上から見ると一強道場は分かりやすいな」
一強道場はアリの大群のように孤立している別の道場の者へ襲いかかっている。これでルール違反を取らないのが逆に凄いとすら思う。
『104番失格!』
「おっ、1人脱落した」
この予選では場外に落ちるか、横に倒れて動かなくなって5秒経つと失格となるらしい。それを判定するために舞台周りには10人以上の審判がいる。気絶しておいて最後の最後に目が覚めて予選通過はおかしいからな。
また、そのルールがある以上、倒れた者への故意の攻撃は即失格となる。ただ戦うのに邪魔だったりした時に踏んでしまったり、蹴って場外に落としたりは良いらしい。そうならないために気絶から目覚めたら這って場外に出るそうだ。
「さすがは姉弟子だな」
「そうだろう」
姉弟子は3歩後ろは場外という位置に陣取り、向かって来たものを後ろの場外に投げている。
「それと上から見るとそれぞれの強さもよく分かる」
強い者は動きがやはり違う。特に一強道場でない者は何人も相手を失格としているからわかりやすい。
「それまで!103、115、143、148、152、163、196予選通過!」
20分ほど経つと最後に残った7人が決まった。その中には姉弟子の番号もあった。一強道場以外の予選通過は姉弟子の他にもう1人居た。
『30分後に2回戦の入場を始める。それまでに選手控え室に2回戦の出場者は集まっておいてくれ』
舞台上に倒れている選手の処理のために30分かかるらしい。
「勝ったよ!」
「おつかれ」
「よく頑張ったな」
「良かったですよ」
2回戦を待っている間に姉弟子がやってきた。姉弟子はそこまで疲れている訳でもないから余裕だったみたいだな。
それから2、3回戦も見て大体の試合の流れは把握することができた。
『30分後に4回戦の入場を始める。それまでに選手控え室に4回戦の出場者は集まっておいてくれ』
「よし、じゃあ行ってくる」
そして、とうとう俺の参加する4回戦の出場者を呼ぶアナウンスがかかった。
「頑張ってね」
「お主もラウレーナのようにいつも通り戦えば問題無いぞ」
「焦らないように気を付けてください」
「おう」
3人の応援を聞いて俺は控え室に向かった。…ちなみに、控え室への行き方はちゃんと姉弟子に聞いておいた。
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