第160話 組み合わせ
「切り替え」
「っ!」
大会予選まで残り2ヶ月を切った。闘装だけでなく、魔装をも取得しもう数日か経ったが、俺のやっていることは相変わらず闘装と魔装を着脱したり、ヒビを修復したり、切り替える修練だ。
あ、ちょうどこの前16歳になった。キリの良い誕生日しか祝わないので、だからといって何もない。
「闘装と氷の魔装の修復がまだ甘いな。それと、闘装と魔装の種類を変えるのもまだ遅いな」
「だよね」
それは俺も自覚している。自分でもスムーズにできていないのはやりながら実感できている。ただ、だからといって急速に上手くなることはできない。
「お主がやる機会があるかは分からんが、魔装を取得した者同士の戦いでは魔装の種類の変更はよく行われるからな」
「気を付けるよ」
魔装には弱点となる属性があるので、相手の魔法や魔装が自分の弱点だったら魔装を変えることがよくある。姉弟子のように魔法を1つの属性しか持っていなければそれはできないが、大体の者は数属性持っているそうだ。
また、相手が防御する瞬間にパッと攻撃者の弱点属性に変えるなんてこともあるそうだ。
「これらが上手くできるまで闘装と魔装を使ってでの戦闘はダメだからな。変な癖がつくかもしれない」
「ちゃんと分かってるよ」
俺の修復や切り替えができない状態で姉弟子や師匠らと戦闘すると、闘装が割れたけど上手く修復できないからこのまま強行突破するなどの悪い戦い方の癖がつきかねないそうだ。
そうなった者を知っているのかこれは何度も言われている。だから模擬戦でも全くやろうとは思ってない。
「それにしても闇の魔装へのだけの切り替えは上手いのは不思議だ」
「はははっ」
闘装や雷、氷魔装からの闇魔装への切り替えだけは、師匠が今まで見た誰の切り替えよりも完璧だと言うくらい上手くできる。闇魔装はその独特な形が固定なので感覚的にはただ魔力を適当に込めるだけ自動でできるようなものだ。だからこれ以上無いくらいスムーズに行える。
まあ、逆に闇魔装への変更がスムーズ過ぎる故に他の変更が上手くできないように実感できるのだろう。
「ただ、野外で特に夜に闇の魔装をする時は気を付けろよ。後ろから見たら魔物と間違えるぞ」
「それは気を付けるよ」
闇魔装の俺を後ろから見たら高ランクのアンデッド系の魔物と見間違えそうらしい。それくらい俺の闇魔装は不気味な感じがするそうだ。だからこそ、俺が初めて闇魔装をした時は無意識に飛び退いたらしい。
今はもうかなり慣れたが、それでも急に闇魔装をされると一瞬身構えてしまうそう。
「闘装と魔装を同時に使ってみるか」
「おっ!いいの?」
それからさらに5日が経ち、ようやく少し慣れてきたと思われるくらいにはスムーズに闘装と魔装の修復と切り替えができるようになってきた頃に師匠からそんなことを言われた。
「もうただの着脱だけは十分にできるようになったからここらで1度試しても良いだろう」
闘装と魔装を同時に行った者など歴史上にも存在しないと思われる。だってそれは闘力と魔力を同時に持っていないとできない芸当だからだ。
つまり、誰も試したことがないため、それらを同時にする相性が悪い可能性がある。その時に自身の身に危険が及ぶ前にすぐに解除できる力量がつくまでは同時に行うのは危険だったそうだ。
「よし、じゃあ闘装」
俺はまず闘装を行う。当たり前だが、ここまでは普通にできる。問題は次だ。
「氷魔装」
俺はそれからさらに氷魔装を使った。
「どうだ?」
「…重なって動きづらいくらいかな?」
結果、闘装と魔装の相性は良くも悪くもなかった。お互いに全く干渉はしていない。強いて言うとすれば闘装と氷魔装の相性は良くないくらいだ。同じ場所に纏っているというのもあるが、闘装の上に魔装が重なって少し違和感がある。まあ、この違和感は普段よりも厚くなっているからであって、防具はもっと厚いのだからすぐに慣れる程度の差だろう。
「じゃあ、続いて……雷魔装」
氷魔装を解除すると、次は雷魔装を行った。これも特に問題は無い。氷魔装と違って雷魔装は雷を全身に纏う形なので氷魔装よりは防御力は少し低いが、闘装で守られていない箇所も守れるのは良い。また、氷魔装のように板のようにはなっていないので動きづらいとかもない。
「最後に……闇魔装」
雷魔装を解除すると、次で最後の闇魔装を試した。
「どうだ?」
「…何も問題ないな」
闇魔装という問題児だから闘装との組み合わせで何かあるかと思ったが、現時点では特に何もない。闇魔装の魔力回復は攻撃を喰らわないといけないので、闘装を併用しても問題が無さそうで良かった。
「問題無さそうだし、闘装と魔装を同時に着脱も行うぞ」
「はい」
それからは右手上げて、左手上げないで右手下ろすという遊びのように、闘装と魔装の着脱を行った。
闘装をしないで闇の魔装をするとかの最初にある騙しは要らないと言ったのだが、状況判断を養うからと言い返されたら否定も出来なくなってやるのに苦労した。
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