第159話 闇魔装の能力
「闇魔装」
「「「っ!」」」
俺が闇魔装をした瞬間に師匠、先生、姉弟子の3人は後ろに飛び退いて俺から距離を取った。
「何だ…その魔装は?自分で操ってそうしたのでは無いだろう?」
「ん?」
師匠から聞かれて俺は初めて自分の姿を見てみる。特に何も意識していないのに闇魔装はフードの着いた長いローブを羽織っているようになっている。一応顔以外全て覆っている形ではあるが、魔装の形としては相応しくない。なぜなら、今の3人が飛び退いた風圧でもゆらゆらと形を歪めるくらい揺れているので、防具の役割を果たしているか疑問だ。
「うーんと…」
そして、この闇魔装の能力を考えると、不思議なことに雷と氷の魔装と違って今の状態でできることが手に取るように分かる。
「よっ」
俺はマジックポーチに入れてある大鎌を取り出す。今日は朝から魔装のトレーニングだったから締まったままだった。俺が大鎌を持つと、身体と同じように大鎌にも闇魔装が纏わりつく。パッと見では闇付与のような効果がありそうだが、これだけでは何も意味が無いのは分かっている。これで攻撃しても普通の大鎌と変化は無い。
「はあっ!」
俺が大鎌を縦に振ると、そこから闇の斬撃が放たれた。その斬撃は床と壁に大きな傷を作り出す。斬撃が放たれると、大鎌に纏った魔装は消えたが、俺が念じると再び大鎌にも魔装が着く。しかし、俺の身体に纏っている魔装が短くなった。だが、魔力を注ぐとそれも元に戻る。
また、俺の闇魔装の能力はこれだけでは無い。
「暗がれ…」
俺は闇魔法のストックがあるというのに闇魔法の詠唱を始める。
「ダークボール」
俺の腕の一部の魔装が消え、闇魔法が発動した。今までストックをしていると、闇魔法が一切使えなかった。だが、ストックをしていても、闇魔装の魔力を使えば闇魔法が使えるようになった。
俺は魔法を消して最後の能力を試そうとする。
「師匠、攻撃してもらってもいい?」
「分かった」
師匠が闘装を纏って俺を殴ってきた。俺は両腕でガードしたが、殴られた腕の魔装は払われたけむりのように勝手に消える。
「痛……!」
「え?大丈夫か?」
両腕を痛めながら蹲る俺を見て師匠は不思議そうな顔をする。警戒して闘装を纏ったが、手加減して攻撃したはずなのに何でこんなに痛がっているのか分からないのだろう。
「俺の闇の魔装には防御する効果は無い」
「「「は?」」」
3人が頭に疑問符を浮かべた。まあ、防御の役割が無い魔装なんて聞いたことがないのだろう。俺の闇魔装は普通のローブのような形で常にゆらゆらしているだけあって、布一枚以下の防御力しか持ち合わせていない。
ちなみに、今の俺は防御する効果が無いことを示すためだけに殴られたのでは無い。一応攻撃された時に使われる能力もある。師匠の攻撃によって消し飛んだ俺の両腕の魔装に使われた倍の魔力が回復した。
つまり、攻撃されて消し飛ばされた魔装の倍の魔力が回復するのだ。ただ、堪えようとすれば攻撃されても魔装を消し飛ばされないようにするのも可能だ。
これを上手く使えば攻撃される瞬間、その箇所にだけ多くの魔力を使った闇魔装を纏えば一気に魔力が回復できるかもしれない。…今の俺にそこまでの技量は無いが。
しかし、俺の闇魔装はとことん攻撃特化だな。
「……昨日はごく稀に攻撃の能力を持つ魔装があると言ったが、儂の知っているその魔装ですら防御もできたぞ」
「…そうっすよね」
呆れたようにそう言う師匠に俺は上手く返す言葉が思いつかない。
「だ、大丈夫!魔装のスキルレベルが上がれば防御もできるようになるかもよ!」
「多分無理だな」
姉弟子の励ましを師匠が即座に否定するが、俺もそう思う。スキルレベルが上がれば斬撃の威力や魔力効率や消し飛んだ回復率が変わることがあっても、新たに防御する能力がつくと思えない。
「お主はステータス通り防御が好かんみたいだな」
「……俺はともかくスキルはそうかも」
俺の大鎌術と闇魔法の最初からスキルレベル4らは攻撃が大好きなようだ。意地でも防御をさせないという強い精神を感じる。
「お主が普通と違うというのはステータスを見て分かっておったことだからいつまでも驚かなくてもいいだろう。
とりあえず、魔装の3種は分かった。後はお主がどうやって戦いたいかだ。現時点でBランクの魔物らと戦うには防御できる闘装と魔装を使った方が良いと思う。だが、この先防御が闘装だけで足りるならば、その時は闇の魔装が輝くぞ。そこをどうするかはお主次第だ」
「ああ」
魔装はどんなに魔法の種類があろうと同時に1つの魔法しか行うことはできない。だからその場に応じてどれを選択するか選ぶ必要があるわけだ。
ポジティブに考えると、防御だけのはずの魔装に攻撃が追加されたのだ。これで俺の戦い方にレパートリーが新たに追加されたのだ。
欲を言うと闇魔装の攻撃と防御の能力をバランスよくして欲しかったが、仕方が無いだろう。だって俺は不遇魔法剣士だしな。
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