第157話 闘装取得

「やっとできた…!」


修練開始42日目にして、俺はついにモヤを圧縮し、闘装を纏うことに成功した。



「だが、動けるか?」


「…全く動けない」


闘装には成功したのだが、全身を1枚の闘装で覆ってしまっているので全く動けない。とりあえず纏っただけで関節とかは何も考えてなかったな。


「とりあえず、今日はその状態を維持してみろ」


「は、はい」


まずは関節などを考えて闘装を纏うよりも、纏うのを持続できるようにする方が先らしい。だから俺は動けないままただただ闘装を維持し続けた。闘装を維持するよりもずっと同じ体勢で動けない方がキツかった。

そして、昼になって闘装を解いてステータスを確認すると、闘装Lv.1が新しく追加されていた。


ちなみに、その日の午後に魔装を取得することはできなかった。師匠曰く、無属性魔法のシールドを使うことで闘力を圧縮して壁を作ることには少なからず慣れていたから闘装の方が取得が早かったとの事だ。



「よしっ!」


夜に自主練をしたこともあり、次の日には闘装を纏うだけなら苦しく感じなくなった。


「それなら次は自分が動きやすいようにイメージしながら闘装を使ってみろ」


「おっす」


俺は自分が動くのに邪魔にならないようにイメージしながら闘装を纏ってみる。


「動けるか?」


「…あんまり」


しかし、そのイメージで行った闘装は今までより多少マシになった程度で満足に動けるようなものではなかった。


「それなら自分の装備をイメージして闘装を纏ってみろ」


「ああ、なるほど」


俺は軽装のため、装備は俺の動きを邪魔することは無い。だから俺は自分の装備を思い浮かべて闘装を使用する。


「おお、一気に随分良くなったな」


「これなら全く動きに影響は無いぞ」


今の俺は胸周り、前腕周り、太もも周りに闘装を纏っている。全く重さも感じず、薄くて動きも邪魔されないから完璧な仕上がりだ。


「それに上腕周り、脛周りも追加で纏ってみろ」


「はい」


さらに追加で言われた部位にも闘装を纏う。


「とりあえず、ヌルヴィスの戦闘スタイル的にも闘装を纏う部位はそこらで良いだろう。足りなかったり、邪魔だっりしたらまた変えればいい」


「これが俺の闘装…!」


甲冑のように全身を纏う師匠の闘装と違い、俺は急所である胴体と傷付くと戦闘に支障が出る腕と脚だけを守る軽装のような闘装だ。


「まあ、ここに追加で魔装も加わるから色々と変わるだろうが、それもその時に考えればいい。じゃあ、一旦闘装を解け」


これに魔装が追加するとまた色々と変わりそうだ。それを楽しみに思いながら言われた通りに闘装を解く。


「今から纏えと解けの2つを交互に言う。言われたらすぐに闘装を纏ったり解いたりしろ」


「はい」


なるほど、今度は即座に着脱するための練習をするのだな。


「では行くぞ」


「え?」


師匠は急に俺に向かって来て、軽くではあるが、殴ってきた。俺は慌ててそれを避ける。闘装の着脱の練習はどこいった?


「纏え」


「えっ!ちょ!」


拳を避けたタイミングで急に纏えと言われても上手くできず、拳が迫っていた上半身にだけ闘装を纏ってしまう。


「どんな状況でも即座に全身にしっかり纏うんだぞ。解け!」


「は、はい!」


そこからは闘力が無くなりそうになるまでずっと闘装を纏ったり解いたりを繰り返した。

師匠からの攻撃を避けながらこれを行うのが中々面倒だった。ただ、攻撃された箇所を直す時はこれの何倍も大変と言われたらこれくらいできるようにならないといけない。

最初に師匠と戦った時に師匠がやっていた、攻撃される瞬間にその箇所にだけ闘装を纏うことがどれほど卓越した技術なのか分かった。攻撃を完璧に察知した上でその箇所にドンピシャで闘装を纏うなんて今の俺では考えられない。

ただ、闘装で全身でどこを纏うかを事前に決めているのもあり、この1日で慣れてきた。最終的には無意識に近い形でできるようになった。



「次は攻撃して割られた所をすぐに直せ」


「は、はい」


そして、難関の割られた所をすぐに直すのが始まった。やって見ると、闘力の消費を考えないのなら全ての闘装を一旦解いてから新しく闘装を纏う方が簡単だった。

どこが割れたかを瞬時に理解し、その場所だけすぐ直すというのがかなり難しい。また、それだけに集中してしまうと、闘装を纏っていない顔面を殴られてしまう。

この技術は昨日までのとは違い、数日程度で慣れれるような難易度では無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る