第155話 大会
「ふぐっうぐぐ……」
「おお、少し圧縮できておるぞ」
修練開始10日目にして、やっと身体強化と身体属性強化のモヤを少し圧縮することに成功した。
「10日でコツを掴むのは早い方だぞ。上手くいかないと30日経っても変化無しもざらだぞ」
「そうなのか」
プレッシャーになるからとコツを掴むまでは平均ではどのくらいで出来るようになるかなどは教えてくれなかった。
「これなら間に合うかもしれんな」
「間に合うって?」
特に期限なんかは無かったと思うから間に合うと聞いても何の事か分からない。
「大会があるんだ。それに出場するまでに闘装と魔装を取得できそうという話だ」
「大会?」
その大会は年に一度の大イベントらしく、毎年かなりの盛り上がりを見せるそうだ。
「ヌルヴィスはその門下生組に出てもらうことになる」
「部門があるんだ」
その大会には俺や姉弟子などに参加資格がある門下生組(一般参加も可)と師匠や先生などの道場の運営者に参加資格がある師範、師匠組(一般参加も可)の2種類があるそうだ。師匠と同じ大会に出たら勝てる気がしないから部門が別れていてよかった。
ちなみに、門下生組の一般参加が可能と言っても、道場などで教えた経験が少しでもあるものは門下生組には参加できないらしい。
「姉弟子も参加してるんですか?」
「一昨年は3位、……………去年は本戦初戦敗退だ」
ちなみに、この大会の門下生組の本戦は32人でのトーナメントで行うそうだ。また、去年のベスト4は予戦に参加しなくても本戦参加資格があるらしい。
また、その予戦では本戦を行う大舞台で応募者の1/4ずつを同時に戦わせて大舞台で最後まで残った7人を4回選ぶそうだ。
また、師範、師匠組は毎年そこまでの人数が居ないのでいきなり本戦らしい。一般参加には実力テストなるものがあるそうだ。
「…ん?あれ?姉弟子って俺のひとつ上だよね?」
「そうだぞ」
俺はつい最近16歳になった。つまり、姉弟子は今年17歳だ。そして、今年で大会参加が3回目となる。つまり、15歳でステータスを授かってすぐの大会で3位を取ったということか。
「…ちなみに、姉弟子の魔装の取得はどのくらいでできました?」
「10日だな」
「おう…」
俺がやっとコツを掴んだ段階で姉弟子はもう魔装の取得をしていたのか。少しショックを受けてしまう。
「誰の孫だと思っておる」
「あ、それもそうか」
しかし、師匠のその一言で落ち込むのが馬鹿らしくなった。この師匠の孫ならそれくらい当然か。
ただ、姉弟子の両親はどうだったのだろうか?姉弟子の両親の姿は見た事がない。そこら辺は少し家庭の話もあるので聞きにくいから聞けていない。
「大会は大体4ヶ月後にある。それまでに闘装と魔装を使えるようにならんとな」
「はい!」
ちなみに、魔力を使わないと仮定すると、今の俺では予戦落ちするだろうとの事だ。運がよく予戦を通ったとしても本戦の初戦敗退する程度の実力らしい。
ただ、魔力をフルに使えば本線でもいい所まで行けそうとの事だった。
「ちなみに、姉弟子が一昨年と去年に負けた相手って同じ人?」
「…いや、去年に負けた相手は一昨年の本戦1試合目で完勝した相手だ」
去年は運悪く一昨年に負けた相手と初戦で当たって負けたのかと思ったが、違うそうだ。
「何で負けたの?」
俺は聞くかどうか悩んだが、素直に聞くことにした。姉弟子が3位になることで天狗になって修練をサボって完勝した相手に負けたとは思えない。それなら負けたそれなりの理由があるはずだ。俺も出ようとしている大会なのだから何があったかくらい聞いてもいいだろう。
「……相手が全身雷がエンチャントされている装備を使ってきたのだ」
「え?そんなのありなの?」
エンチャントとは、武器や防具に属性を付け加える事だ。姉弟子が3位になった時に水の魔装しか使えないと見抜かれて1年かけて弱点である雷の装備を集められたそうだ。
「ルールでは装備に関して何ら規約は無い。だから雷装備で全身揃えることもルール違反でもなんでもない。それはラウレーナも自覚している」
姉弟子が文句を言わないのに俺が文句を言うのはお門違いだろう。
「相手によっては何をしても勝ちに来るからお主が本戦に行ったら気を付けろよ」
「…ああ」
大会の試合だから安全というわけでなく、何年かに1回のペースで死者とまではいかなくても欠損くらいする者は出るそうだ。魔物と対峙するつもりで挑まないといけないな。
「まあ、その前にまずは闘装と魔装を取得するところだがな」
「確かにそうだよね」
そもそも闘装と魔装を取得しないと大会がどうとか言っている余裕は無い。とりあえず俺は闘装と魔装を頑張って少しでも早く取得しなければ。
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