第154話 力関係

「はあっ!」


俺の振った大鎌は姉弟子の腕に弾かれた。姉弟子はその隙に攻撃してくるが、それを何とか大鎌で防御する。


「やっぱり魔力無しはキツイな」


本格的に修練を始めて5日目だが、毎日同じこと続けるのもつまらないとの事で、日に1、2回姉弟子と戦っている。ちなみに、まだ闘装と魔装の取得について何ら進展は無い。

また、前回の姉弟子との戦いでは雷無し、今回は魔力無しで戦っている。雷無しの時はストックを使って隙を作り、そこから闇魔法でゴリ押しすることで何とか勝利することができた。次はストックというものがあるとバレているのでどっちが勝つかは微妙である。

そして、今の魔力無しの俺はというと、姉弟子の魔装を突破する手立てが何も無くて困っている。


「やっ!あっ…」


「ふふっ」


魔装を突破しようといつも以上に大振りになった大鎌を片手で掴まれた。すぐに大鎌を引っ張ろうとするが、姉弟子はそのまま前蹴りを放ってくる。俺は仕方なく大鎌を手放し、蹴りを腕でガードする。


「ぐっ…!」


姉弟子の攻撃は親オーガ程ではないにしろ、俺よりも全然強い。だからガードしたとはいえ、腕がかなり痺れる。


「大鎌は返してくれないよな…」


姉弟子は大鎌を取り返されないために自分の真後ろに置いて拳を構える。遠くに置くと素早さ的に取り返せたかもしれないのにな。

ちなみに、この戦いは修練の一貫ということで基本的にどちらかが完全に負けた状態になるまで行う。だから武器が取られたからって終わりにはならない。また、マジックポーチの中身を使うことも禁止されているので、大刀を取り出すことはできない。


「やあっ!」


姉弟子に接近して殴った訳だが、もちろんダメージは無く、その腕も簡単に掴まれた。


「かほっ…」


そして、気が付いたら俺の体は浮いていて、地面に叩き付けられた。


「がっ…」


その後姉弟子は流れるように仰向けになった俺の腹に膝をめり込ませると、馬乗りになって首を掴んできた。また、もう片手はギュッと握られていて、いつでも振り下ろせるように構えている。さすがにここまでになったら俺の負けである。

やはり、魔法を使わないと姉弟子に手も足も出ないな。



「魔力を使わないとかなり弱いね」


「そんなはっきり言われなくてもちゃんと分かってるよ」


やはり、魔力を使わないだけで俺はかなり弱い。まあ、本来の力の約半分を使わないのだから当たり前なのかもしれないけど。闇魔法を使って良い勝負をした次の日に魔力を無しで戦わされたのはそれをより自覚させるためかもしれないな。


しかし、これで俺と姉弟子との現時点での力関係は分かってきた。

力関係は、魔力無し俺<魔装無し姉弟子<<雷無し俺=姉弟子<雷あり俺

こんな感じなのだろう。ただ、どちらかが何か新しい技とかを身に付けた時点でこの力関係は一気に逆転する可能性はある。



「僕はどうやったらもっと強くなると思う?」


「やっぱりカウンターをもっと上手く決められるようになれば強くなれると思う」


姉弟子の雷以外の弱点はスピードの無さだ。そのせいで物理職には自分から向かって行って攻撃を当てるのは難しい。そのため、基本的にカウンターで攻撃することが多くなる。今の姉弟子には魔力無しの俺でもそのカウンターを防げるくらいの精度しかない。もし、そんなカウンターの精度が上がれば雷無しの俺でも姉弟子に適わなくなるだろう。


「カウンターの精度か…確かになるほどだよ!ありがと!」


師匠や先生ではカウンターが決まろうが、ダメージにはならなそうだから気付かなかったのかもしれないな。師匠や先生はこういった自分達では気付けないことに気付くようにするために弟子同士で戦わせているのか?



「それにしてもヌルヴィスの弱点はやっぱり防御力だよね。1回掴まれて投げられて膝落とし食らっただけでもう終わりってさ。さすがに低いと思うよ」


「確かにそう聞くとかなり弱いな…」


姉弟子と戦うと自分の防御力の低さがよく分かる。もちろん、戦闘スタイルの違いもあるが、さすがに俺の防御力は低過ぎる。闘装や魔装の重要性がよく分かる。


「まだ5日目だからヌルヴィスはまず闘装と魔装の取得を目指して頑張ろうね!僕も雷の克服とカウンターの精度を上げるのを頑張るからさ」


「ああ、一緒に頑張ろう!」


差を比べて落ち込んでしまうこともあるけど、一緒に頑張れる仲間が居るのは心強いな。

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