第153話 取得の仕方

「まずは身体属性強化をモヤをそのままでしてください」


「分かった」


俺は雷身体強化をモヤを減らさず行う。最近はモヤを少なくするのが当たり前だったので、何もしないことに少し違和感がある。


「そのモヤを圧縮して身体にまとわりつけるようにするイメージで操作してください」


「わかっ…ん?…おっ…?」


言われた通りにやろうとしても全くできない。モヤを減らすのは身体に押し込む形で、実際にモヤを操っている訳では無い。だからそもそもモヤの操り方が分からない。


「焦らずにゆっくりでいいですよ。いきなり出来たらもう取得できることになりますから」


身体属性強化を圧縮して固くして纏うのが魔装を取得するのに1番簡単な方法なんだそうだ。

また、身体属性強化から作っているから魔装を使用すると、身体属性強化が使えないかと少し心配になったが、そんなことは無いらしい。ちゃんと完成すると、魔装という別のスキルとして分かれるので、同時併用できるそうだ。


「うーん…」


とはいえ、モヤを圧縮しようとしてもうんともすんとも言わない。やはり、体の中にモヤを押し込めようとするのとは全然感覚が違う。


「あっ!そうだ。守れ、シールド」


俺はあることを思いついて無属性魔法の盾を5枚出す。それで俺の前後左右と上を箱状にして囲む。そして、中に居る窮屈になるように盾を操作する。


「これで勝手に圧縮されたな」


シールドに閉じ込められることで自動的にモヤが行き場を失い、圧縮された。とはいえ、身体に纏うほど圧縮はできていない。そこまで細かくシールドを操作できない。ただ、外部から圧縮することでその状態を感じ取ることで無理やり圧縮する感覚を掴もうとしているわけだ。

それからも感じ取ろうとしていたが、結局この日の短い時間ではコツを掴むことはできなかった。



「では、裏の屋敷を紹介するぞ」


修練が終わると、俺が住むこととなる道場の裏の屋敷を案内された。と言っても俺が使うのは俺の部屋として割り当てられた場所とみんなでご飯を食べるためのリビングとかだ。屋敷は基本的に弟子の居住スペースとなっているのだが、今は人が居ないためほとんど部屋が余っているらしい。まあ、そのおかげで俺は大きい部屋を使えるのだけど。

そして、夕飯は雇っている使用人が作ってくれた栄養?まで考えているという献立が出てきた。前の国では味の濃い物が多かったが、ここは素朴な味で美味しかった。



「明日も朝が早いから早く起きろよ」


「はい」


食事を食べ終えたらみんなそれぞれの部屋に行った。まだ8時前だが、朝の4時から朝食を食べて修練が始まると考えたら妥当かもしれない。久しぶりのベッドということもあり、俺はすぐに眠りにつくことができた。



「よし、走るぞ」


次の日、何とか朝4時前に起きて食事を食べると、ランニングが始まった。それが終わると軽く体を動かして体を温めてから修練が始まった。

朝は闘装の取得を目指していく訳だが、魔装と同じく身体強化のモヤを圧縮していくそうだ。これもやはりなかなか上手くいかない。



「初めてやることなんだから上手くいかないのが当たり前だ。取得するのに数ヶ月かかるのが当たり前だぞ」


「…はい」


すぐに取得できるとは思っていなかったが、少し焦る気持ちがある。姉弟子はもう既に魔装を取得済みで、より強固にするために修練を積んでいる。

それに対し、俺はまだ闘装や魔装の初歩すら進んでいない。また、俺は覚えることが2つあるので歩みは姉弟子よりも遅いだろう。これからもどんどん姉弟子に遅れていくのでは無いかと不安になっている。


「…お主は誰かと一緒に修練なんかをした事が無いのか?」


「そう…だな」


少し考えたが、誰かに特訓をしてもらったことはあるが、姉弟子のような一緒に同じことを学んでいくことなんかは無かったな。

そもそも同年代の者と競い合うという経験が無いかもしれない。


「なら言っておくが、人と同じ速度で物事が進むことはまず無い。近くにおる者と比べたくなる気持ちも分かるし、比べるなとは言わん。ただ、比べて落ち込む必要は無い。あれは敵では無く、味方なのだ。幸いお主は遅れておるのだから、見本にすれば良い。

とは言っても言われてすぐに心構えを変えるのは難しいだろう。だからまずはラウレーナとの差はあまり考えず、腐らずに自分の速度で頑張れればよい」


「分かった」


俺は言われた通りに姉弟子との差を考えないようにし、自分にできることをゆっくりでも着々とやろうと決めた。そもそもこの修練を始めるのに1年以上の差があるのだからいきなり追い付こうとしても無理だしな。

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