第151話 尊敬

「魔族では無いですよね?」


「もちろんだ。それは確認したぞ。ちゃんと人族であった」


模擬戦を終えたところで先生が師匠にそう質問していた。やはり、そこが気になっちゃうよね。


「闘力と魔力を使ってたよね!?」


「あ、うん…」


師匠達に意識を向けていると、痺れが取れたのか姉弟子が肩を掴んで話しかけてきた。


「どっちも持っているの?!」


「そうだよ」


姉弟子は肩を掴んだまま話を続ける。ここから隠そうなどという意味の無いことはするつもりは無い。


「私のステータスを見せるからステータス見せて!」


「っ!いいよ」


俺から言おうと思っていたやつを姉弟子から言ってくれた。どうやって聞けばいいか悩んでいたからありがたい。


「「ステータスオープン」」


俺と姉弟子はお互いにステータスを見せ合った。


「「え?」」


そして、お互いに相手のステータスを見て驚く。

俺が驚いた姉弟子のステータスはこうだ。



【名前】  ラウレーナ

【種族】  獣人族

【年齢】  17

【職業】  魔拳士

【レベル】 23 


【生命力】 367/572    

【魔力】  286/396  


【物攻】  247

【防御】  210  

【精神】  175  


【スキル】

・格闘術Lv.5・身体属性強化Lv.4・体術Lv.4

・水魔法Lv.4・魔力操作Lv.4・生活魔法Lv.3

・危険感知Lv.2・気配感知Lv.2・魔装Lv.2

・闘力感知Lv.1





「【魔攻】が無くて【物攻】になっている…」


姉弟子のステータスには独特なところは多いが、1番気になったのが魔力があるのに、【魔攻】が【物攻】になっているところだ。


「これだったら…」


「魔法でダメージは与えられないよ」


俺が考えていたことを先に姉弟子が言ってくれた。

【魔攻】は魔法での攻撃力を表すものだ。それが無いということは、ただ詠唱して放つ魔法ではダメージを与えられないということだ。

もちろん、高いところから大量の水を魔法で出して落としたりしたら別だけど。まあ、その場合は途中で水の操作自体を止めないといけないけど


「流れ出ろ!ウォーターランス!」


姉弟子が水魔法を使って水の大槍を俺に放ってきた。それは俺に一直線に飛んできたが、俺に当たった瞬間に形を保てなくなってビシャッと飛び散った。もちろん痛みは全くなく、これでは水遊び程度の威力しかない。

姉弟子のことを師匠が俺の下位互換と言った意味が理解できた。


「それに【敏捷】が無いからどんなに身体属性強化をしてもあんまり速くならないんだよね」


「あ、そうか」


【魔攻】が無いから物理攻撃をするためのステータスのようなものなのに、素早さの元となる【敏捷】が無い。だからどんなにレベルを上げたとしても素早さは変わらない。接近戦同士では素早さはかなり重要となるのに。だからスピードは俺よりも遅かったのだ。


「それにしてもヌルヴィスのステータスは魔法職と物理職のが全部揃ってるし、スキルレベルも全体的に高いし凄いね!」


「あ、うん…」


それを言われて俺もステータスを見せていたことを思い出した。俺は姉弟子が喉から手が出るほど欲しいであろう【魔攻】と【敏捷】もある。これでは自慢のためにステータスを見せたようなものだ。


「そんな気にしなくていいよ。僕も気にしてないから」


「っ!」


俺の様子を見て姉弟子はそう言った。そう言った時の姉弟子の顔は少し怒っているようだった。


「僕は仮にヌルヴィスとステータスを交換できるとしても断るよ」


「え?」


はっきりとそう断言する姉弟子に俺は今日で一番驚く。


「だって、今ここでそんなの貰ったら2年間の僕の頑張りが全て無駄になるじゃん。僕は自分の努力を裏切るようなことはしたくない。それにどんなステータスだとしてもそれが僕なんだもん。僕は僕自身の力で強くなりたい。

それに、努力だけで僕のことを無能とか言うやつを見返してやったら凄く気持ちがいいでしょ?」


「……そうだね」


俺は余計な心配をしてしまったことを恥じた。姉弟子は俺に憐れまれるような人ではなかった。誰よりも前を向いている素晴らしく尊敬できる人だ。俺が姉弟子の立場だとしてもこんな考えに辿り着けない。



「それに僕の方がレベルが低いのにステータスの【物攻】と【防御】はヌルヴィスに勝ってるしね。というか、防御力低過ぎない?よくそれでそこまでレベル上げられたね。魔物によっては一撃で死んじゃうよ」


「あっ!俺はそこを気にしてるんだぞ!」


「これから強く殴らないように気をつけた方がいい?」


「姉弟子のスピードなら殴られないから気にしなくて大丈夫だよ」


「あっ!言ったな〜!」


もうさっきの重々しい雰囲気は無くなり、お互いがお互いのステータスをからかって笑いあった。

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