第147話 ランニング

「どうした!遅れておるぞ!」


「くっ…!」


次の日も昨日と同じように走っていた。ただ、今日は既に朝の6時頃からもう6時間以上走っていた。

ちなみに、いくら軽くの身体強化とはいえ何時間も使い続けると闘力が無くなりそうになったので、12時を過ぎてからは身体強化を身体属性強化に切りかえた。それをした結果、俺は師匠から遅れ始めているのだ。



「くっそ…」


今の俺はスピードを上げるために雷身体強化をしている。雷による身体属性強化はステータスで言うところの敏捷が大きく上がる。普通の身体強化と違い、強化箇所が特化しているため、軽くだとしても強化量が大きいのだ。つまり、その分スピードが上がることになるのだが、それに合わせて師匠もスピードを上げている。

ただでさえ慣れていない身体属性強化なのに、今までよりも走るペースが上がったせいで障害物を上手く避けれなくなった。それが積み重なり、どんどんと師匠から離れさせていく。


「強化の種類を変えようとするなよ!」


「ちっ!」


俺が強化の属性を氷か闇に変えようとしたのがすぐにバレた。その2つなら速さは下がるからやり易くなったのに!


「ほいっ」


師匠が目の前の魔物を殴り殺した。一応走っているのは浅い森なので、時々魔物は現れる。その魔物の全てを師匠が片付けている。もちろん、俺の近くに来たら俺が殺るつもりなのだが、そんなタイミングはまだ1度もない。もしかすると、師匠は俺に魔物がやって来ないように避けながら移動しているのかもしれない。


「この程度の特訓すらできないようでは防御術を教え始められるのは何年後になるか分からんぞ〜」


「今すぐその背中に張り付くほど追いついてやるわ!」


「かっか!その意気だ」


確かに今やっている闘力と魔力の操作は防御術を覚えるための基礎中の基礎だろう。だからこれくらいさっさとできるようにならないといけない。俺は必死になって師匠に置いてかれないように走り続けた。




「儂が待つことなく、今日一日走り続けられたな」


「何とかね…」


結局、真後ろまで追いつくことはできなかったが、最初以上に離されることも無く、夜を迎えて2日目を終えることができた。途中で身体属性強化でのモヤを留めるコツも掴めたのが大きいだろう。


「今日からは夜の見張りもしてもらうぞ。飯を食ってから3時間がお主の担当だ。交代したら朝まで儂が見張りをやる」


「え?比率おかしくない?」


今はまだ20時前で、明るくなるのは5時頃だ。つまり、師匠は俺の倍ほどの時間、見張りをするということになる。


「儂なら2時間も寝れば余裕で次の日は万全に動ける。ただ、今日は昨日が徹夜だったから一応1時間多く貰ってるくらいだ。冒険者なら短時間の眠りで回復できるようになっておいた方が良いぞ」


そういえば、師匠は昨日徹夜だったのに今日はそんなこと頭から抜けるくらい普通に動いていたな。

しかし、冒険者は特に短時間の睡眠で体力を完全に回復させられた方がいいよな。場所によっては魔物が多く、あまり眠れないなんて場所もあるだろうし。


「では、3時間後になったら起こしてくれ」


「分かった」


そして、それから俺は見張りを行った。時々ゴブリン程度の弱い魔物が出たが、それだけだった。

ちなみに、見張りの時間も身体強化や身体属性強化を行って特訓してろと言われた。昼間にコツを掴んだのもあるが、全く動かなくていいからやりやすかった。魔導具で低ランクの魔物が来ないようにしていないのはこのやりやすいという感覚を3時間で実感するためかもしれないな。まあ、翌朝魔導具を使わない理由を聞いたら魔導具を信用できないからという俺の予想とは関係ない理由だったけど…。

その後、時間になったら師匠を起こして交代で俺が眠った。


次の日からは少し強化度合いを強くしてまた走った。また、その次の日、次の日と日が変わる事に少しずつ強化を強くしていった。

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