第140話 再会と…

「ふぅ」


俺は今日も今日とて魔物を狩り、ギルドに売りに来ていた。ちなみに、毎日同じ魔物を売り続けていると、在庫過多になり、売値が下がってくる。そのため、そうなる前に魔物の種類は変えている。まあ、狩るのはCランク帯の魔物に変わりは無いけど。

また、あれから暗殺者も音沙汰は無い。1回目で失敗してから追加依頼は出ていないのかもしれない。



「あっ!兄貴っ!」


「ん?」


ギルドから出た瞬間に突然横から呼びかけられた。その呼び名で俺を呼ぶ人間は1人しか知らない。


「カラゼス!久しぶりだな!」


「兄貴も元気そうでなによりです!」


俺が横を見ると、前の街に居た時とほとんど変わらない刹那の伊吹のパーティの面々が揃っていた。


「ここに来たってことは…?」


「はい!俺達もDランクになりました!」


「そうか!おめでとう!」


俺が王都に来てもう3ヶ月くらい経つ。移動時間も考えると、刹那の伊吹はその3ヶ月でランクアップを果たしたのか。


「兄貴の今のランクはいくつですか?」


「俺はCランクになったぞ」


「それは凄いですね!おめでとうございます!」


彼らがランクアップしたのに俺がランクアップしていないなんてことにならなくてよかった。

ただ、この先はランクは追い付かれる気がする。もちろん、だんだんランクが上がりにくくなるというのもあるが、それはソロとパーティの違いというのもある。やはり、パーティの方が効率よく狩りができるのでその分パーティとしてのランクは上がりやすい気がする。



「それと、そろそろ質問していいか?」


「はい!何でもどうぞ!」


再会の会話が一区切りしたので、俺は彼らと再会してからずっと気になっていたことを聞いてみる。


「横の…ろ…獣人は誰だ?」


思わず老人と言ってしまいそうになるほど、刹那の伊吹達と年齢がかけ離れている獣人が彼らと一緒に居たのだ。

その獣人は肌にシワが多くあることから結構な歳をとっていることには疑いがない。だが、だからといって腰が曲がっていたり、杖をついたりはしていない。むしろ、歴戦の闘士と言われても納得してしまうほどの独特な雰囲気を持っている。

そんな老人だが、思わず目を向けてしまうほど特徴的なのが頭の上に生えた長く大きな兎のような耳だ。これを見たら誰だってこの老人が獣人と分かるだろう。


「よく聞いてくれました!この方は昨日、王都に来た時の護衛対象です」


「ああ、なるほどな」


異色な組み合わせは疑問だったが、そう言われたらすっと納得した。


「儂はこの度、この刹那の伊吹らに護衛してもらったギュランタだ。ところで……」


獣人はそう自己紹介をすると、俺のことをじーっと見る。そして、見終わると続きを話す。


「防御力が低いのう。そこが弱点となっておる。いや、ここは攻撃が異様に高く、長所であると言った方がいいのか?長所が飛び抜けておるから逆に短所も目立つことになっておる」


「っ!?」


俺はこの老人に対する警戒度を一気に引き上げた。なぜそんなことまで分かる?!隠蔽は効いていないのか!


「カカカッ!そんなに警戒せんでも良い。それと、こんな場所で長話も何だろう。どこかで食事でもしながら話さんか?」


「…いいだろう」


この老人の謎は解かなければいけない。ならば、色々と話しを聞く必要がある。だからといってこのギルトの前で長話は難しい。老人の後を追って近くに個室のあるような少し良い飯屋に移動した。


「さて、ここは儂の奢りだから好きに食べなさい」


「「「いただきます!」」」


老人にそう言われ、刹那の伊吹は遠慮なくメニューを見る。きっと護衛中もこんな感じなんだったのだろう。ただ、俺はメニューを見ずに老人を観察する。

ここに来る途中にもし、老人が俺の冒険者生活を脅かすようなことをするようなら、老人を脅す事も仕方がないと考えていた。しかし、後ろから老人を強襲したところで上手くいくとは思えないほどこの老人には隙がなかった。こんな老人が王都に来る時に刹那の伊吹が護衛に必要とも思えない。謎が深まるばかりだった。


「兄貴の分はどうしますか?」


「適当に何か頼んでおいてくれ」


「分かりました!」


それからカラゼスは自分達の分と俺の分も適当に注文してくれた。


「まあ、いきなり警戒を解けというのも無理な話だったかのう。だから何でも聞きたいことを聞いてくれて構わないぞ」


「…なぜ俺の防御力が低いとわかった?」


ここに来るまでそのことをずっと考えていた。最初に思いついたのは刹那の伊吹が老人に話したということだ。だが、俺が魔法職のステータスを持っているという秘密を話したところで防御力が低いという話にはならない。だから訳が分からないのだ。


「それは儂の看破というスキルだな。このスキルでは相手の長所と短所が分かるものになっておる」


「なるほど」


それによると、俺の長所は攻撃力とレベルの高い武技で、短所は低い防御力だったそうだ。

…話を聞く限り、どうやら俺が魔法職のステータスを持っていることはバレていないようだ。多分だが、この老人は俺が隠蔽しているステータスを看破しているようだ。隠蔽しているステータスの数値もステータスが変化する度に変えているため、物理職だけで考えたらその看破した内容は概ね正しいと言える。

とりあえず、秘密がバレた訳では無いなら一安心だ。

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