第136話 だそうよ?どうする?
「ちょっと何してるのよ!」
「剣聖様と賢者様になんて事を…!今すぐ治療します!」
「小娘どもはそこで黙ってなさい」
「「っ!?」」
シアとルイを殴ったことに文句を言った勇者と聖女だったが、シア母さんに凄みながら睨まれるとビクッとして動きが止まった。
「さて、お話をしましょうっと言いたいところだけど話せる状況では無いみたいね」
「がぐが…」
「ごがごご…」
シアとルイは両鼻から鼻血をだらだらと流しているので、まともに話すことはできなそうだ。現にルイの鼻は曲がっているし、シアの鼻はそもそも形が歪んでおかしくなっている。
「思ってたよりも雑魚だったから、強く殴り過ぎちゃった。ちょっと回復させてしてくれる?」
「分かりました。癒せ!ハイヒール」
シア母さんに声をかけられたルイ母さんは遠くからピンポイントにシアとルイの怪我を回復させた。何気なくやったが、10数メートルも離れた対象を回復させるのはかなりの魔力操作のレベルが要求される。
「さて、2人とも何で殴られたか分かるかしら?ちなみに、ヒントとしてヌルから演習に起こった話は全て聞いたわ」
「…私達がヌルの勧誘をしたから」
シア母さんの質問にシアがそう答えた。
「まあ、それもそうなんだけど。違うわ。そもそもどうしてヌルの前に顔を出せたの?負い目とか何も感じないわけ?そもそも絶交するって約束じゃなかったっけ?もう一度話せばわかるって思ったわけ?」
「「………」」
事情を知らない勇者と聖女が居るから出るだけ言葉を濁してシア母さんはそう言った。
シアとルイを追い詰めるような質問ラッシュに2人はシア母さんから目線を逸らした。
「都合が悪くなったらすぐ目を逸らす。また殴られたいの?」
「「違う!」」
2人はグイッと勢いよく顔をシア母さんの方へ向ける。余程さっきのパンチは痛かったようだ。
「そこの勇者様から言えば私達は悪くないとでも思ってたの?そもそも2人はヌルが冒険者になりたくて学校に通うのは拒否したのを知ってるよね?それなのに誘って了承されるとでも思った?自分がどれだけ崇高な存在だと思ってるのよ」
「剣聖様と賢者様は崇高な存在です!」
シア母さんの話に割り込んできたのは正気を取り戻した聖女だった。
「何で剣聖と賢者は崇高とされてるのですか?」
ルイ母さんが聖女の発言に即座にツッコミを入れた。聖女はよくぞ聞いてくれましたとばかりにぺらぺらと話し出す。
「私の生まれ育った国である神聖国アールフォンの教典の記述では、神様が人類の進化のためにとお創りになられた神様と人間の子である神祖様の能力を参考に人類へ初めてステータスを授けてくださった時の職業が勇者という職業です。その最初に授けてくださった時に人類には物理職と魔法職の2つを同時に授けられないと知った神祖様は続いて魔法に特化した賢者、回復に特化した聖女、武技に特化した剣聖という職業を授けてくださりました。最初に生み出された勇者、賢者、聖女、剣聖はとても崇高な職業なのです!」
正直、教典なんて初めて聞いたので、へぇ〜という印象しかない。
気になることと言えば、何で4番目までを大事にしてそこから下を無視しているのかくらいだ。あと、この聖女の所属する国がここと違ったことくらいだ。留学でもしているのか?
「その神祖様ってどういう存在なんですか?」
「それはもちろん神様の子孫であり、物理職と魔法職のどちらのステータスを有しているお方です」
(っ!!??)
ポーカーフェイスを貫けはしたが、俺の心の中は大混乱である。俺は普通の両親から生まれた普通の子供であり、決して神祖なんて言う存在では無い。
「魔族が両方のステータスを持っているらしいが?」
「それはよくある誤情報です。両方のステータスをお持ちになっているお方は至高な存在である神祖様しかおられません」
なぜ魔族のことを誤情報と断言できるかも凄く気になったが、それは置いておいて、だから俺は神祖では無い。
「もし、神祖様が再び顕現されたらどうするのですか?」
「もちろん、我が神聖国アールフォンの聖都ラバキレクの総本山の聖教会にて祭り上げさせて頂きます」
「つまり、神聖国アールフォンは神祖様の言いなりで動くようになるわけですね?」
「当然です」
聖女も自信満々に答えなくていいから!そして、「だそうよ?どうする?」とばかりにルイ母さんとシア母さんは俺をチラッと見るな!
それをわかったところで俺は何もしないから!
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