第126話 親オーガ

「轟け!サンダーボム!」


「ガア!!」


親オーガは子オーガに放った魔法を身を呈して受けることで子オーガを守る。

もうあれから5発くらい魔法を放っているが、ずっとこの調子で庇っている。


「ガアッ!!」


「岩が無くなったら木を投げるか…!」


ただ、親オーガも無抵抗でいる訳では無い。遠距離で攻撃できる投擲という手段で俺に攻撃してきている。前までは近くの岩を投げていたが、岩が無くなったのか、今度は木を抜いて投げてきた。


「ちょっ…投げる頻度上がってないか!?」


親オーガは俺から子オーガを背に隠しながらも移動しながら近くにあるデカい物をひたすら投げてくる。


「轟け!サンダーボム!」


「ガア…!」


だが、俺もただ黙って投擲を避けるだけでは無い。投擲を避けながらも魔法を放つ。親オーガは魔法を避けずに受けて、投擲を繰り返す。

親オーガは投げるものを魔法の盾にしたり、投擲で魔法を打ち返したりはしないようだ。まあ、俺が魔法を動かした時に瞬時に反応するには自分で受けるしかないのだろう。



「んぐっ…とっ!」


俺は持久戦を覚悟し、魔力ポーションと闘力ポーションをマジックリングから取り出して飲み干す。その間も投擲は続いているので、それも避ける。



「ふぅ…はぁ……」


「ガア……」


あれから10分ほど投擲を避けながら魔法を放ち続けていた。さすがの親オーガも少し疲れている様子だ。まあ、それは俺も同じだけど。

また、親オーガは投擲は一旦やめて俺を睨んでいる。親オーガに作戦があるのかもしれないので、何かあった時にすぐに対応できるように魔法を放つのをやめて2種のポーションを飲んでおく。


ちなみに、俺は稀に投擲の破片が当たるくらいで軽傷だが、親オーガは俺の魔法を何発も当たって全身の正面に傷が付いている。ただ、致命傷と言える傷はない。それは単純に俺の火力が足りないからと、親オーガが当たる場所を選んでいるからだ。もっと近付けばその2つはどうにかできるのかもしれないが、傷だらけとはいえ近くに子オーガもいるので、それはリスクが大きい。また、闇魔法ならもっとダメージを与えられるのだが、ストックがあるうちは闇魔法は使えない。



「ガアッ!!」


「マジかっ!」


親オーガは突然、子オーガを置き去りにして俺に勢いよく向かってきた。


「グガア!!」


「くっ…」


向かってきた親オーガは俺に拳を振り下ろしてきた。俺は横に転がって避け、すぐに立ち上がって次の親オーガの蹴りを後ろに飛んで避ける。

親オーガは子オーガよりも攻撃の威力が強いのはもちろんだが、何よりもスピードが速い。子オーガよりも巨体なのに、子オーガよりも遥かに速く感じる。きっと根本的に身体の使い方が子オーガとは少し違うのだろう。


「轟け!」


俺は親オーガの攻撃を必死に避けながら魔法の詠唱を始める。しかし、それでも親オーガは俺に接近して攻撃を続ける。


「サンダーラ…」


詠唱が大詰めといったところで俺はあることに気付いた。それは親オーガで俺の視界が埋まっていて子オーガを狙えないことだ。


「ンス!」


「ガア」


仕方なく、俺は親オーガを狙ったが、魔法を放った瞬間に1、2歩下がって魔法を避ける。そして、再び俺に接近をしてくる。

くそ…魔法を見せ過ぎたから魔法の軌道が完璧に把握されている。しかも、詠唱のせいで魔法が連続で放てないことも理解している。


「…しかも、ここだけ森が開けている!」


親オーガが移動しながら投擲を続けたせいで、ここの一帯だけ歪な円状に障害物が何も無い大きなフィールドができあがっている。そのため、親オーガの巨体でも好き勝手に暴れられている。


「ストックを使えば……」


ストックを使えば親オーガが魔法を避けた隙に子オーガを殺れるかもしれないが、そこまでして子オーガを先に殺る必要は無い。そんなことよりも、より効果的に親オーガにストックを当てる方がいいだろう。


「でもまあ、この状況でどうするかは決まってるよなっ!」


「グガアッ!!」


俺は親オーガの放つ拳を大鎌で迎え撃った。


「ぐっ…!」


その結果、親オーガの指が少し斬れ、俺は踏ん張っていたのに大きく後ろに下がらされた。俺は親オーガにパワーでは負けているが、傷を付けることはできている。


「グガ!!!」


「来い!」


親オーガは俺から離れまいとすぐに近付いてくる。俺はそんな親オーガを真正面から迎え撃つ。

正直、俺もこのままでは親オーガが倒れるよりも先にポーション類が無くなりそうだったから、より強い攻撃をするためにもいつかは接近戦はしたかった。しかも、今回は親オーガは子オーガから離れたし、子オーガを隠すために必ず俺と子オーガの対角線に居ないといけないしな。俺が何かしようとしても親オーガは下手に避けれないわけだ。

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