第118話 演習本番
「演習場所に着いたぞ!これより、演習を始める!演習の目標はそこの森の中で1日間生き続けることだ!ただ、魔物の討伐証明でポイントが付くから積極的に魔物を狩ってくれ!そのポイントで演習の順位を付けるからな」
演習場所となる森の手前に付くと、拡声器の役割の魔導具を使って1人の教師がそう言う。
「いや…貴族共は馬車からすら出てこないのかよ」
「…貴族は目上の命令以外では自分中心のため、時間にルーズですから」
これから演習が始まるというのに、貴族共はまだ馬車でお休みしているのか。あいつらは何しに来たんだよ。
「さあ!誰から行く!?」
教師のその言葉で全員がキョロキョロと周りを確認する。しかし、誰1人動こうとしない。
「わたくし達が1ば…」
「青年!行くぞ!」
誰が何か言った気がするが、駆け出しながら発した俺の声と被って聞こえなかった。
「あ…はい!」
「「っ!?」」
青年と女達も慌てて先にいる俺に追い付こうと走り出す。こうして、俺達が一番乗りに森に入った。
「少し魔物を避けて奥まで行くぞ」
「構いませんが、何ででしょうか?奥に行くほど魔物は強くなりますよ」
軽く走りながらの俺の指示に青年は納得しながらも、その理由を聞いてくる。
「できるだけ後ろとは距離を取りたい。獲物の取り合いや討伐証明の奪い合いはしたくない。多分俺達が1番人数が少ないから相手によっては平気で襲われるぞ」
「っ!…そうですね」
青年は驚きながらも、どこか納得したような感じだった。青年は生徒からも舐められてるから、他の演習者と鉢合わせたらそういったトラブルは起こり得るだろう。だからそのトラブルを回避するためにできるだけ遭遇すらしたくない。仮に奪い取る行為が禁止されていたとしてもやる奴は必ず出てくる。
「…この辺でいいだろ」
結局俺達は森の中を30分以上走る結果となった。女達の速度に合わせたことで思ったよりも離れられなかった。
本当ならまだ距離を取りたいところだが、今は仕方がない。
「魔物が来たぞ」
「や…やっ!」
現れた2体のビックボアに青年は向かっていく。
ここから先は走るよりも前に魔物と遭遇してしまうほど魔物が多くなっている。
止まる直前には魔物がいるからと4回方向転換したのにすぐに違う魔物が現れたので、ここからは魔物を避けては通れないだろう。つまり、倒していくしかない。
「この程度ならやれるか?」
「はい!大丈夫です」
ビックボアの2体を青年は無事に倒す。俺は女達に命令してビックボアの討伐証明をナイフで切ってもらう。青年はその命令に眉をひそめはしたが、文句は言ってこなかった。
「さて、このビックボアの肉はどうする?」
女達がビックボアの討伐証明をたどたどしくナイフで切り終えたのを確認してから青年に質問する。
「置いていきます。2人のカバンの中に残り4日分くらいの食事はあります。それに、1日程度なら食べなくても問題ありせん。そんなことで荷物を重するのは無意味です。そして、血の匂いで魔物が一気に寄ってくるかもしれませんので、ここから速やかに離れましょう」
「了解だ」
多少は勿体なく感じるが、ここにビックボアは置いていくことにした。その判断は俺も正しいと思う。無駄に荷物を増やすのは悪手だろう。
ただ、俺のマジックリングを使えばビックボアは持って行ける。しかし、それをするほど高価でもないし、下手に貴族に目を付けられて欲しがられても面倒だから使うつもりは無い。
「次行くぞ」
「はい!」
その後も魔物が現れる度に青年は1人で戦い続けた。そして、限界が来た。
「はあ……はあ……」
「そろそろ2時間か」
慣れない狩りを続けてからか、演習の本番が始まってから戦い続けた青年は疲労困憊となった。魔物を倒し終わったから必ず槍を地面に刺して、討伐証明を取るのが終わるまで槍に体を支えてもらっている。無理をさせればまだ戦えるとは思うが、一旦ここまでだな。
「次からは俺が戦う。後ろで女達を守ってやってくれ。体力が回復したと思ったからまた交代だ」
「はい……」
こうして、青年が回復するまでの間は俺が狩りをすることになった。
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