第115話 集合
「うわっ…でっか」
俺は地図通りに進み、学校が見えて驚いた。その学校の校舎は俺の見てきた建物の中で一番大きい。もちろん、王城なんかはもっとでかいのかもしれないが、王城を実際に見れる距離には一般人は入れないからな。
「…敷地自体もデカイな」
学校の門の前まで来たが、建物以外も校舎と同じかそれ以上に広い。外で魔法なども使う授業もあるからこんなに広くなっているかな?
俺はそんな門を通って校舎に入っていくが、そんなに緊張していない。なぜなら、俺と同じように依頼を受けた冒険者がそれなりに居るからだ。先に入った冒険者やこの後に来る冒険者のことを考えたら、依頼ボードに張り出されたのを全て受けたとしてもこの人数には満たない気がする。だからきっと名家などはお抱えの有用な冒険者に指名依頼をしているのだろう。
「お名前は?」
「ヌルヴィスだ」
門の近くに設置してある受付のような場所に行く。そこで冒険者ごとに依頼主の元に案内するのだろう。貴族の子がいる中で下賎な者を入れないための対策なのだろう。
「ヌルヴィス様ですね。確認が取れました。Cグラウンドへどうぞ」
「ありがとう」
そして、名前を告げて少し経って次の場所への簡素な地図を貰う。その簡素な地図には比較的近くにあるCグラウンドまでの最短な道しか記されていない。俺はその地図に従ってCグラウンドまで移動する。
「…うっわ。探すの大変じゃね?」
Cグラウンドにはそれなりの数の人が集まっていた。その半分以上は冒険者のような気もするが、この人混みの中で探すのは大変そうだ。
「あっ!ヌルヴィスさん!こちらです!」
「お、おう」
そう思っていたが、俺を真っ先に見つけた青年が大声で呼びながら大きく手を振ってきた。なるほど依頼主が依頼者を見つけるのか。俺は歩いて青年の元へ向かう。
「ん?」
その移動中、俺は学生と冒険者の両方からかなりの注目を浴びているように見える。俺が学生と間違われるくらい若く、1人だから目立っているのか?
「お待ちしてました!」
「呼んでくれて助かったよ」
正直、呼んでくれなかったから見つけられた気がしない。
「…装備凄いな」
「はい!今日は本番なので気合を入れてきました」
青年の装備は素人目で見てもこの前よりグレードアップしている。軽装のようでありながらも、二の腕や脛なんかもちゃんと守っている。そして、何よりも…。
「その2本の槍がメイン武器か」
「はい」
青年の背にはこの前見たやつでは無い槍が2本背負われていた。種類的にも片方が長槍なのは変わらないが、もう1本は長槍の半分ほどの短槍だった。
よく見ると、後ろの女の2人の装備も前回よりもグレードアップしたように見える。ただ、魔法使いの装備の善し悪しの判断は難しいから多分だけど。
「この前の助言は余計だったか」
「いえ!長槍で近くに入られない手段は参考になりました」
青年は近くの敵には短槍を使うようならこの前の助言の意味がないかと思ったが、そうではないようでよかった。まあ、発言は俺に気を使ってくれているだけかもしれないけどな。
「それと……」
青年はそう言うと、自然な動きで俺の耳に口を近付ける。
「前回負けたのを装備のせいにするつもりはありません。…大鎌の赤鬼もメインの装備を使っていませんでしたから」
「知ってた…いや、調べたのか」
大鎌の赤鬼というのは前回の街で呼ばれていた二つ名だ。それをこの十数日で調べ上げたのか。本当にそうだとするなら、この青年はそれなりの名家なのかもしれないな。普通はそんな短期間でそんなことまで調べられない。
「ちなみに、赤い死神という名もありましたよ」
「それは知らなくてよかった」
俺の知らないところで知らない2つ名がどんどん広がっているみたいだな…。
「それはさておき、今回の演習では基本的に僕の指示で動きます。一応そういう演習内容にもなっています」
まあ、学校の行事なのだから生徒である青年が自主的に動くのは当たり前なのだろう。ただ、前回の約束があるからそれの許可を取ったのだろう。別に何から何まで指図するつもりは無いので、俺はそれに頷く。
「ただ、その指示が正しくなかったり、もっと良いものがありましたら遠慮なくその場で言ってください」
「分かった」
俺が了承すると、青年は俺からそっと離れる。
こうして、青年との密談は終わり、それからはなんてことの無い世間話になった。その世間話は教師と思われる者の壇上への登場まで続いた。
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