第102話 新しい武器の性能

「さて、地図だとこの辺か…」


俺は小走りで2時間と少し移動し、王都から1番遠くに書かれた丸印にやってきた。


「確かに冒険者は居なそうだな」


受付の男が言っていたようにここに着くまで残り1時間からは誰の姿も見ていない。


「ここなら問題ないな」


俺の懸念点は他に人が居ないかだ。赤ベアを倒し、強くなったので、多少の数のCランクの魔物なら魔法は使わなくても大丈夫かもしれない。たが、赤ベアの時のような非常時には魔法は使うだろう。その時に誰かに見られるリスクはできるだけ減らしたい。



「お、いたいた」


丸印のポイントを少し歩くと、すぐに魔物と遭遇した。人が来ないからその分魔物も多いのかもしれない。


「あれがホーンライナーか。聞いていた通りだ」


目の前に居る2匹の魔物はホーンライナー、通称角サイと呼ばれる四足歩行の巨体に額には俺の肘から手の先ほどの長い3本の角が生えたC+ランクの魔物だ。


「よし…行くか」


俺は背後から静かに襲いかかる。


「ブガァッ?!!」


「まず、1体」


俺の大鎌は角サイの首を斬り落とした。そして、俺はすぐそばにいるもう1体の角サイに視線を移す。


「ガアッ!」


「おっと!」


もう1体の角サイは3本の角を俺に発射してきた。その情報は聞いていたが、至近距離ということもあってか、その飛んできた角の速度が思っていたよりも早く驚いた。2本は大鎌で弾いたが、1本は大鎌で弾けず、頬を掠った。


「これで終わりっと!」


「ブボッ…」


そして、俺はもう1体の角サイの首も斬り落とした。発射する角は装填するまで十秒ほどはかかるので、1番の武器の失くした角サイは怖くは無い。


「それにしてもいい斬れ味だな」


俺は大鎌を見ながらそう呟く。オークよりもランクが少し上の魔物の首を一撃でスパッと落とせるとは凄い性能だ。これでまだ付与魔法を使っていないのだから、その凄さは計り知れない。


「よっと」


俺は角サイをマジックポーチにしまう。その際、大鎌で弾いた角を拾うとしたが、ボロボロと崩れた。これも聞いた通り、角サイで1番高価な角は発射されると脆くなるようだ。この調子なら次に装填された角は最初から生えていた角よりも脆くなるというのも本当だろう。



「さて…」


俺は大鎌を背負い、マジックポーチから大刀を取り出す。今度はこちらを試す番だ。

また林を歩くと、すぐに今度は1体だけの角サイを見つける。周りを少し探索してもここには1体しか居ないようだ。



「はっ!」


「ブガァッ!!!」


「ちっ…浅い!」


俺は先と同様に背後から角サイの首目掛けて大刀を下から斬り上げる。しかし、首は落とせず、首の1/3ほどで大刀は止まってしまう。


「らあっ!」


「ブフッ…」


すぐに角を発射しようとしたのを見て、俺は角サイの顎を回転して勢いをつけて蹴り上げた。すると、首の傷は深まり、角サイの頭は自分の背中付近まで曲がる。さすがにこれで死んだようで、角サイは横に倒れる。



「これはさすがに俺のスキルレベルの低さと実戦経験不足が原因だな」


木でない本物の大刀を使ったのが初めてというのを加味しても今のは自分でもかなり酷いと思う。もちろん、大鎌術と大刀術ではスキルレベルの差はあるが、斬ることに特化した武器である大刀で半分も斬れないのは頂けない。



「今日は大刀だけだな」


それからは俺は大刀を使い続けた。せっかく大刀も作って貰ったのにこの体たらくは酷過ぎる。この程度の腕では大刀はマジックポーチの中の置物になってしまう。せっかくの武器がそれではもったいない。これは実践練習をしないといけないな。

結局、この日はそれからも11体の角サイと出会ったが、首を大刀で斬り落とすには至らなかった。



「合計で金貨3枚と大銀貨5枚です」


「ああ」


そして、また2時間と少しかけて王都まで戻った俺は討伐報酬をあの受付の男に渡す。夕方ということでギルドにはそれなりの人が集まっていた。


「魔物の解体はどこだ?」


「あちらです」


そして、俺は魔物の解体をしてくれる場所に行き、14体の角サイをマジックポーチから出して渡した。ちなみに、角の3本は貰って置いた。

解体が終わるのは明日になるそうだ。

それから宿に戻り、次の日も同じ場所に狩りに行った。

この生活を当分は繰り返そうと思っていたが、ここは王都で治安が良くは無いことを忘れていた。



「ん?跡を付けられてる?」


王都来て10日程で俺の跡を付けてくる者が現れた。

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