第101話 チップ
「夕食、クリーン付きで泊まり銀貨2枚です」
「とりあえず、30泊で」
ルイ父さん達のおすすめという宿を訪れた。Bランクが使う宿ということで値段はそれなりにした。前の宿の4倍の値段だ。ただ、前の街よりも少し物価が高い王都と考えたらそこまで突飛して高い訳では無いのかもしれない。
「大銀貨6枚お預かりしました。夕食は18時から24時までです。お部屋へ案内します」
俺はそのまま部屋まですぐ案内された。案内に従って俺は3階まで移動した。
「部屋はこちらです」
「おおっ」
部屋の中にはベッドだけでなく、机と椅子まで用意されている。だから前の宿よりも部屋は2倍ほど大きい。
「こちらは鍵になります」
「ありがとう」
そして、何とこの部屋は鍵が付いているのだ。セキュリティ的にはかなり高いと言える。この時点でこの宿にして良かったと思った。
この前の街には鍵付きの宿なんてあるとは聞かなかった。しかし、王都にはあるということは、寝込みを襲う奴がそれなりにいるということか。鍵のかけ忘れには気を付けないと。
その日はそれからベッドの上でのんびり休んでいた。また、18時を告げる鐘の音と共に1階に降りて夕食を食べた。正直、オークを渡す前の前回の宿の味よりも美味しかった。ただ、オークを出すようになってからと比べると優劣を付けるのは難しいな。だけどどっちかと言われたらこの宿の方が美味いかもしれない。これは純粋な素材の差もあるが、料理の腕なのかもしれない。
夕食を食べた後はすぐに眠った。旅の疲れが予想よりもあったのか、寝具が良かったのかぐっすりと眠ることができた。
ゴーンゴーン!
「…朝か」
そして、次の日の朝6時の鐘の音で目が覚める。俺は装備を整えると、ギルドへ向かった。
「おお、人が多いな」
ギルドの依頼ボードの前には十数人が集まっていた。その他にもギルドの中に点々と人がいる。こんな朝早くから人がギルドにいる光景を見るとはな。まあ、王都にいる冒険者自体が多いから単純に朝にいる冒険者も多くなっているのだろうけど。依頼ボードをちらっと見たが、内容は昨日と特に変わってなさそうだったので、俺は受付へと向かった。
コトっ…
「近場でCランクが多く出る狩場は知らないか?」
それなりに詳しく情報を知っている中年の男の受付に行き、銀貨を3枚置いて質問をした。若い女の受付には集まる人が多いが、こういう情報は知らなそうだからな。
また、基本的に頼み事をする際には銀貨などのチップを渡すのが有効的らしい。チップを渡すことでまたチップを貰えるように要望に沿った有益な情報をくれるらしい。
「…えっと、ランクはいくつでしょうか?」
カッコつけたのだが、ランクを聞かれてしまった。前の街ではほとんど顔パスで通っていたが、ここでは見知らぬただの若造だからランクを聞かれるのは仕方がないな。しかし、チップを渡されてなおランクを聞くというのは仕事熱心とも捉えられるな。
ん?てか、俺は低ランクの癖にチップを渡すことでCランクの狩場を聞くガキと思われたのか?
「Dランクだ」
俺はそう言いながらギルドカードを受付に渡す。Dランクは高ランクとは言えないが、Cランクの魔物の討伐報酬は貰えるランクではある。
「…これは失礼しました。少しお待ちください」
受付はチップをすっと自然に取り、裏の方に行った。良かった。ちゃんとチップは受け取ってくれた。チップを返されたらかなり恥ずかしかったからな。
「これは王都の周りを大雑把に描かれた地図です」
戻ってきた受付はそう言いながら地図を広げる。確かに街並みや外の様子も道が書いてあるくらいで前に貰った地図と比べたらかなり大雑把だ。
「それでですね…」
受付は地図に丸印を数個書き始める。丸は意外と近場にも存在する。
「今、丸を付けた場所にCランクの魔物が多くいます。そして…」
今度は地図にバツ印を書いていく。バツ印は丸印よりも比較的遠くにある。
「罰をつけた場所にはBランクが確認されます。それぞれの詳しい魔物の種類は聞きますか?」
「ああ、頼む」
それから丸印やバツ印のつけられた場所にいるそれぞれの魔物の種類を聞いた。また、その丸印に他の冒険者がどのくらい居るのか、魔物がどのくらいいるのかまで詳しく聞くことができた。
「助かった。ありがとな」
「いえ、お役に立てたようなら良かったです」
俺的に1番良さそうな丸印の1つに向かうため、受付と別れ、ギルドから出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます