第100話シアとルイの今

「え?!いや!とりあえず頭を上げて!」


俺はその異様な光景に慌てながらも何とか彼らに頭を上げるように言うことができた。

俺がそう言うと、4人ともゆっくりと頭を上げてくれた。


「そもそも、ルイはここの家には居ないようだけど、今は学校?何時頃帰ってくるの?」


これがここに来ても姿を見せないことからまだ家には帰ってきていないのだろう。まだ午後になったばかりだから学校に行っていても不思議では無い。

しかし、俺の質問に4人は顔を見合わせて困ったような顔をすると、シア父さんが話し出す。


「…2人は学校の寮に泊まってるからほとんど帰ってこないな」


「そうなんだ」


学校の場所はまだ知らないが、同じ王都なのだから別にここからでも通えるとは思うけどそうしていないのか。より近い方がいいのか?


「2人の今ってどんな感じなの?」


2人と最後にあったのは5年以上前のことだ。その間、約束もあり手紙なども書いていないから今の2人の様子は全くわかっていない。

今回の俺の質問でも4人は顔を見合わせ、今度は4人とも軽く頭を抱えた。そして、今度はルイ父さんが話し出す。


「…私達から今の2人についての明言は避けておこう。ただ、会えば私達のこの反応の意味もわかるだろう」


「そう?」


もしかすると、2人は反抗期だったりするのか?俺はほぼ毎日両親からボコられ、またその間にはボコり返せる機会自体はあったからあまり反抗期というものはなかった。まあ、より強くなろうと忙しかったから反抗期なんかをする暇もなかったというのもあるだろう。


「でも、俺が2人に会う機会ってあるの?」


この家にほとんど帰ってこないのならば、会う機会は無い。俺が学校に行ける訳でもないので、会いたくても会えない。会えないのに助けるというのは俺からしたらかなり難しい。


「今から数ヶ月後に2人の学年の大規模な魔物討伐の演習があるんだよ。2人の護衛は騎士がやると思うけど、貴族では無い平民の生徒は自分達で護衛を探す都合上、冒険者ギルドで依頼として張り出されることになる。それに参加すれば会うことは可能かな?」


貴族に混ざって騎士から護衛をされるなんて2人の職業はそれほど特別というわけか。

しかし、金のある貴族は騎士が護衛してくれるのに、金が少ないであろう平民は自分達でお金を出して護衛を探すというのはアンバランスな気がしてしまうな。


「でも、騎士が護衛してくれるのに俺必要か?」


正直、俺よりも強い騎士は何人も居るだろう。だから俺が守る必要があるのかどうか疑問に思ってしまう。


「…子供の安全を少しでも増やそうという気持ちなのよ。それに、冒険者ならではの視点も野外では必要になる時もあるからね」


「なるほど」


シア母さん曰く、念には念を入れて俺にも気にかけておいて欲しいってことか。確かに堅苦しい騎士と違う視点を冒険者は持っているだろうし、騎士が気付かなくても俺が気付くこともあるかもしれないな。


「わかった。俺もその依頼に参加して2人のことを気にかけるよ。ただ、依頼に参加する以上、俺は依頼主を守るのが最優先だけど問題は無いよね?」


「ありがとうございます」


4人は俺の発言に嬉しそうに微笑み、代表してルイ母さんがお礼を言う。

俺もさっきから含みを持たせてくる2人の現状も気になるし依頼に参加するのは全然構わない。それに、俺が2人を守れるなら守りたいと思う。だってたった2人だけの幼馴染だからな。




「それじゃあ、装備ありがとう」


それから少し雑談をし、3時を過ぎた頃俺は屋敷から帰ることにした。泊まる?と何度も誘われたが、今日泊まってしまうとそこからずるずると何日も泊まってしまうことになりそうだから泊まらないことにした。冒険者として自立したからには自分でお金を払って宿をとって泊まりたい。

俺は4人から昔から使っていたという良い宿を教えて貰い、見送られながら屋敷から出ていった。

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