第98話 ルイ父さんの家

「えっと…道あってる?」


簡単に描かれた地図の道を移動していくと、どんどん高級そうな家が並ぶ住宅街?になってきた。そして、馬車はよく通るが、歩く人を見ることも無くなった。地図的にはもうすぐなはずたのだが、本当にあってるのか?



「え……ここなのか?」


地図で辿り着いた家…というか屋敷はまず、1m少しの石垣に囲まれていて、入口には金属の格子状の門がある。また、格子の奥には道と庭が見え、その奥に大きい二階建ての建物が見える。



「ここに何の用だ?」


極めつけは格子状の門の前には2人の門番がいることだ。門の前でうろちょろしていると声をかけられてしまった。


「ここってルイ…ルイスの家でいいんだよね?」


「「……」」


俺がそう言うと、武器をいつでも握れるような体勢で警戒を増す。その反応でここがルイの家だと言うのはわかった。


「ルイ父さん…ジョーンさんにヌルヴィスが来たって伝えて欲しいんだけど」


「……確認してくる」


俺の言葉で門番の2人でアイコンタクトをとり、1人が石垣を飛び越えて屋敷の方に向かった。

ただ、門番の人達が言うことを聞いてくれてよかった。これで門前払いとかをされるようなら大声を出してルイ父さんを呼ぶなどの少し強引な方法を取らざるを得なかった。



「ヌルか!よく来たな!」


「あっ!ルイ父さん!」


数分すると、ルイ父さんが屋敷から出てきた。


「この者がヌルヴィス様で間違いないのですか?」


「ああ、大鎌を持って1人でここに来る奴なんてヌルぐらいだろうしな。顔も間違いなくヌルヴィスであってる。入れてやってくれ」


「はっ!」


ルイ父さんとの会話をすると、門番が俺を中に入れてくれた。

話の内容からすると、門番には俺がいつか来ることを伝えてくれていたようだ。


「久しぶりだな。思っていたよりも早かったが、元気そうでよかった」


「うん、元気にやってるよ」


そして、俺はルイ父さんと一緒に屋敷の中に入っていく。屋敷の中にはメイドという主に家事をやる者も廊下に立っていた。高そうな絵や壺なども飾ってある。



「今日はお茶会の日だったからちょうどいいぞ」


「え?」


ルイ父さんはそう言い、ある部屋の扉を開ける。



「ヌル、久しぶりね」

「ヌル、元気そうでよかったです」


その部屋にはルイ母さんだけでなく、シア母さんまで居た。


「はっ!」


俺はテーブルに置かれているティーカップが4つなのを見た瞬間に右拳で裏拳を回転するようにやる。


ぱしっ!


「…ヌルの勘が良くなって残念だよ」


「やっぱり隠れてた」


俺の裏拳は隠密で隠れていたシア父さんの手のひらで受け止められた。初めてシア父さんの不意打ちを防げた気がする。ただ、居場所については全く分かっていなかった。


「ただ、まだ場所を探れるには至っていないようだね?」


「バレたか」


今の一撃で俺が当てずっぽうで拳を振ったことはバレてしまった。まあ、場所が分かってたらその方向にパンチするよな。


「もし良かったら隠密を見つけられる特訓をしてやるか?冒険者として魔物と戦っている今なら覚えられると思うぜ」


「それはお願いしたい!」


魔物にも隠密のような事をできる種類は少なくない。教えて貰えるなら是非教えてもらいたい。


「あだっ!」


「そういう話は後にしなさい。長旅後なんだから座らせてあげなさい。それにヌルと話したいのはあなただけじゃないのよ」


「こっちに座ってください」


シア父さんがシア母さんに頭を殴られて怒られた。そして、いつの間にか用意されていた椅子にルイ母さんに案内されて座る。



「ヌル、かなり来るのが早かったが、何かあったのか?」


「ちょっと大鎌を見てもらったら分かるかも」


俺は背負っている大鎌をルイ父さんに見せる。それを後ろからシア父さんも見るが、シア母さんに分からないんだから大人しく座ってなさいとまた怒られていた。



「…よく研がれているが、もうほとんど刃が死んでるな。ヌルは今Eランクか?」


「いや、Dランクだよ」


「もうDランクなのか!」


ルイ父さんは俺の大鎌を見て何か納得したふうに質問をした。その質問に答えると、シア父さんが声を上げて驚いた。シア母さんとルイ母さんも口を開けて驚いている。移動する日数を考えたらまだEランクと考えるのが普通かもしれない。俺のランクアップ速度は異例の速さだったからな。


「なるほどな。冒険者になってからここに来るまでの話を聞かせてくれるか?」


「わかった!」


俺は村を出て、この屋敷に来るまでの事を時系列に沿って話していく。この部屋にはメイド等の他人もいないので魔法の事も隠さずに全てを話せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る