王都編
第97話 いざ、王都へ
「…意外に列が長くないな」
王都により近づくと、王都へと入るための列が見えてきた。王都という大都市だから入るための列も長く、かなり待たされることになることになると思ったのだが、列は思いのほか並んでいない。
「入口が7つあるからな」
「7つ?」
王都に入るための入口は7つあるらしい。しかし、パッと見て並んでいる列は4つしかないように見える。
「馬車が並んでいる2つ門の列が商人用で、人が立って並んでいる2つの門のが冒険者用。そして、誰も並んでいない3つの門が貴族用だ」
「…ほとんど出入りしない貴族の入口が一番多いのかよ」
貴族というのは緊急時や召集や祝い事がない限り自分の居る街から出ないと母さんから聞いている。だから貴族とトラブルが起きたら街から逃げるのが効果的だそうだ。
そんな移動をしない貴族が冒険者や商人のようなよく出入りする者よりも入口が多いそうだ。
「貴族様のプライドは高いからね」
「なるほどね…」
貴族様は冒険者や商人よりも出入口が少ないことは嫌だそうだ。そんなどうでもいいプライドを捨てればもっと王都は豊かになるのにな。
俺達は商人用の列へと並ぶ。
「身分証提示をお願いします」
「はい」
少しして俺達の番がやってきた。商人は言われるがままに何かを門番に見せる。
「次に冒険者方々もお願いします」
「ああ」
商人の確認が出来たら次は護衛の冒険者もその場で確認するそうだ。俺達は順々に冒険者ギルドカードを見せていく。
「確認が取れました。では、王都へようこそ」
確認が終わると、分厚い門を潜って俺達は王都へと入った。
「おお……」
外から見ても王都は大きいと思っていたが、中から見るとさらにその大きさを実感する。最初の街の何倍も広いと思う。
それから俺達は冒険者ギルドへ向かった。
「では、これが依頼料だ。ここまでありがとうな」
ギルドで依頼の完了を報告すると、依頼料が払われた。その金額は金貨2枚だった。
「それじゃあ、またな。今回は色々と教えてくれて助かったよ」
依頼も終わったので俺は大男達に別れを告げて去ろうとする。
「なら、ヌルヴィス。俺達のパーティに入らないか?」
「は?」
その提案には心の底から驚いた。だって今まで誘われる素振りずらされていなかったぞ。
「俺が入ったらBランクが遠のくぞ?」
大男達のパーティはBランク直前だ。それなのにDランクの俺を入れたら、Bランクになるには数年かかる可能性すらある。
「それでも俺は、俺達はヌルヴィスに入ってもらいたいって思ったんだ」
「………」
大男の後ろにいる3人も頷いていることから4人で真剣に話し合って全員が納得したのだろうな。
だが、それでも俺の返事は変わらない。
「すまんが、その提案は断らせてもらう。理由は俺の実力だと足でまといになるからと、俺はまだ1人で好き勝手暴れたいんだ」
そのどちらの理由も本音だ。魔法無しの俺の実力では少なからず大男達の足を引っ張ってしまうだろう。だからといって大男達に魔法を見せるのもしたくない。刹那の伊吹は緊急時だから使わざるを得なかったが、どんな相手でもできれば見せたくない。何があるか分からないから知る人間は少ないに越したことはない。
それに、俺はやっぱりパーティに縛られずに自由に冒険者を楽しみたいんだ。
「そうか。なら仕方がないな。だが、もし気が変わったら言ってくれよな」
「ああ、ありがとうな」
俺は今度こそ大男達に背を向けて離れた。そして、俺はそのまま依頼ボードを見に行く。
「王都だからか依頼が段違いに多いな」
最初の街と比べて王都の依頼の量は5倍以上はある。それは常設依頼も含まれている。
ちなみに、冒険者ギルドの広さも最初の街の3倍はある。
「やっぱり魔物が多いんだな」
王都近辺には様々な種類の魔物が多いようだ。これは人が多くいるから魔物も集まってくるというのが一番有力な説らしいが、詳しいことはわかっていないそうだ。
「まあ、今日はとりあえず…」
依頼はとりあえず見ただけで、今日は常設依頼も含めてどれも受ける気は無い。俺はそのままギルドへ出る。
「さて、ルイ父さんの家に行くか!」
俺は新たな大鎌に期待をしながらルイ父さんから貰っていた地図を頼りにルイ父さんの家へと向かった。
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