第96話 旅の終わり

「どんどん動きが良くなったな!」


「1度も攻撃は当たっていないけどな」


1度俺が負けてからも少し休憩して大男とは日が暮れ始めるまでほとんど戦い続けていた。

ただ、お互いに闘力には限界が来るので闘力の使用は無しだった。それでも俺は大男の大盾を突破できなかった。



「大盾の対処も分かってきたな」


大男は戦いながら丁寧に大盾の攻略法を教えてくれていた。

そもそも1番の疑問だった大男が大盾の奥から俺の事を見れていたか問題だが、普通に見えていたそうだ。ただ、それはとあるスキルの効果らしく、大盾に仕掛けがある訳では無いと言っていた。だが、俺はそのスキルが何かまでは聞いていない。スキルを詳しく聞くのは冒険者的にはタブーだからな。それに人に聞くということは自分も聞かれたら明かす必要にもなるしな。


そして、肝心の大盾の対処法はガードが追い付かなくなるほど連続で攻撃するか、ガードできないくらい強い攻撃をするか、大盾を引き剥がすなどの力技が最も有効らしい。結局のところ、防御の面は大盾はかなり優れているのでそのくらいでないといけないらしい。ただ、負けないことだけを考えるなら、適度に距離を保つだけで十分だそうだ。

ちなみに、魔法を遠くから連撃するのも有効らしい。


「ヌルヴィスは敵に大盾使いが居たら1人ではキツイだろうな」


「……」


大盾使いは1人限定ではあるが、行動を封じれるほど高い防御力がある。現に俺は大男を突破して他の誰かに攻撃をしようとしても魔法を使わない限り無理だろう。

そして、大盾使いを含む複数人と戦ったら防御は大盾使いがやり、他の者は攻撃に専念できる。だからこそ、大男もパーティに前衛1人で大丈夫なのだろう。


「いつかは仲間を作った方がいいぞ」


「…ああ」


それは両親からも言われていた。俺はお金もそこそこ貯まったので王都で奴隷を買うつもりだった。

だが、1人でどこまで強い冒険者になれるかを試したい気持ちも生まれてしまった。大男の言うような事態に遭遇しても魔法を使えば何とかなると思ってしまう。敵は大鎌を持つ俺が魔法を使うなんて想像もしないだろうから放てば高確率で当たるしな。


「よし、今日も飯を奢ってやるぞ!飯を食いに行くぞ!」


「太っ腹だな!ゴチになるぜ!」

「あら、ありがとう」

「いただきます」


「お前らには言ってねえ!」


「はははっ!」


大男パーティの漫才のようなものを見て笑い、俺達は昨日と食堂でご飯を食べ、宿に戻って寝た。



「全員揃っているな!それじゃあ出発だ!」


そして、次の日予定通り再び王都に向かって旅立った。

それからも度々街に寄ったりしたが、その度に大男と戦った。ちなみに、他の者とは戦うことはなかった。大男が戦闘狂に近いというだけで、別に他のメンバーは好戦的では無いようだ。


また、王都行きという普段からよく使われている道ということもあり、魔物はほとんど見なかった。さらに、盗賊なども1度も見ていない。


こんな平和なら冒険者も要らないのでは?と思ったが、そうでは無いらしい。俺達が遭遇しなかっただけで盗賊は森の中に隠れて居るそうだ。盗賊達は馬車が強そうな冒険者が守っているのをどこかで観察して襲うのをやめているそうだ。だから平和だからと護衛無しにしたらその途端に襲われるらしい。また、盗賊も馬鹿では無いので下手に暴れ過ぎると依頼を受けた冒険者か、自警団や騎士団などが討伐に乗り出すから食うに困らない程度にしか襲わないそうだ。

ただ、たまに強さ故にそれらを恐れず護衛がいろうと関係無しに襲いまくる盗賊なんかも現れてしまうらしい。俺としてはそんなに強ければ普通に冒険者とかをやればいいのにと思ってしまう。



「さて、見えて来たぞ!」


「す、すげぇ……」


俺は離れていても見えるほど高くそびえ立つ城壁を見て語彙力が低下してしまった。しかし、そうなってしまうほど高く、そして広く建てられている。

こうして、俺は初めての大都市である王都にやってきた。

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