第75話 斬れ味

「よし、2体一緒にいるな」


大鎌を研いでもらった次の日、俺は約束通り作ってもらった朝食を食べ、弁当も貰ってオークのいる林にやってきていた。

オークの生息地に入り、30分ほどで2体並んだオークを発見することができた。オークは2体一緒に行動するのは確定と思っていいだろう。



「3体目は居ないな?」


ただ、そうなってくると、3体目が居ないかをよく観察しないといけない。基本的には2体だが、たまたま3体になっているオークがいる可能性がある。それも、一昨日と似た感じで3体セットなのに、1体だけ近くで別行動をしている場合もあるかもしれない。


「よし、居ないな。闇付与」


3体目が居ないのも確認できたので、俺は目の前のオーク達を殺ることにした。そのために大鎌に闇魔法を付与する。


「暗がれ!ダークランス!」


「ブヒイッ!?」


俺は一昨日と同じようにまずは薮から飛び出しながら不意打ちで1体のオークを攻撃した。ただ、今回は前回の反省を活かして膝下を狙った。俺の魔法では一撃で倒すことはできない。なら、その一撃でどれだけ戦いやすくできるかが重要になる。胴体と比べて薄い脚なら俺の魔法でも貫ける。これで1体の機動力はかなり落ちた。


「ブゥゥッ!!!」


「はあっ!」


俺はそのまま無傷のオークに向かっていく。オークは棍棒を上から振り下ろすが、それを冷静に横に移動して避ける。そして、脇腹付近を大鎌で斬りつけた。


「これはすごい!」


前回と個体が違うので、防御力も少し違うだろうが、俺の大鎌は途中で止まることなくオークの腹を横に斬り裂いた。昨日と同じくらいの強化をしているのに、スっと抵抗が少なく斬ることができた。これは研いだおかげだろう。ただ、元々脂肪が分厚いので胴体を切断はできていない。


「撃て!アタック!」


「ブオッ!?」


俺は腹を斬ったオークに無属性魔法の球をぶつける。吹っ飛ばすつもりだったが、そこまでの威力はなく、オークは転がるように離れていった。そこまでのダメージは受けていなそうだが、2体の分断という目的は果たせたので良しとする。



「凍てつけ!…アイスニードル!」


「ブオッ…」


俺は脚に穴が開きながら何とか立ち上がったオークを魔法の詠唱しながら背中から蹴り飛ばし、再び地面にうつ伏せに倒した。そのタイミングで詠唱が終わり、魔法を発動する。すると、オークの腹付近に地面から氷の太い針が1本生える。オークはそれに刺さるが、貫ける程の威力は無かった。しかし、針に支えられて宙に浮いた状態でオークがじたばたすることでどんどん針が刺さっていっている。



「ブヒィィ!」


「よっ!」


氷の針に貫かれそうになっているオークから目線を外すと、転がったオークが戻ってきていた。今度は横から棍棒で殴りかかってきたが、俺は迎え撃つように大鎌を振り、棍棒を根元から斬った。


「はあっ!」


「ブオッ…」


俺は棍棒を斬るために大鎌を振った勢いを止めず、そのまま一回転すると、オークの腹に回し蹴りを放つ。


「ブオォォ!!」


「打撃は弱いな!」


オークはすぐにぱんちはなち、反撃してきたのを見ると、今の蹴りではオークはあまりダメージを受けていないようだった。それは脂肪のおかげで打撃に強いというのもあるが、元々俺の攻撃力と体術のスキルレベルが低いからだろう。

俺はオークのパンチをしゃがんで避けると、起き上がりながら大鎌の刃のない背でオークの顎を下から打ち抜いた。


「重っ!」


今の攻撃でオークの体が一瞬浮いたが、その代わりに俺の大鎌にもかなりの衝撃がやってきた。このオークは1体何キロくらいあるんだ?軽く100は越えているな。


「はっ!」


俺は浮いた隙にオークの脚を蹴り飛ばす。すると、オークの体は斜めになり、そのまま地面に横に倒れた。


「まず1体!」


すぐに立ち上がろうとしたオークの首を俺は大鎌で斬り落とす。これでまず1体を倒せた。

ただ、大鎌の攻撃でも打撃なら普通に立ち上がろうとしていたのを見るに、スキルレベル関係なく単純に俺の攻撃力が低いようだ。できれば斬れ味とかに頼らずオークを倒したいのだが、それはまだ先の話のようだな。



「凍てつけ!アイスボール!」


そして、まだじたばた暴れているオークの上に氷のボールを落とし、追い打ちをかける。今の一撃が決め手になり、オークは氷の針に完全に貫かれた。


「まあ、一応な」


まだ動いているが、放置していてもそのうち死ぬだろう。だが、生きてることで何か不都合があるかもしれないから、首を落としてしっかりとどめを刺す。


「うわっ、めちゃくちゃヒビ入ってんじゃん」


その氷に貫かれたオークをマジックポーチに入れたが、貫いていた氷は全体にヒビが入っていて折れる寸前だった。ダメージを与えながら動きを封じれるのでいい作戦だと思ったが、両脚が無事で踏ん張れたら折られていたな。


「でも、まあ予定通りか」


一応1体は売るようで魔法を使わずに殺れたから良かった。それに俺も特にダメージを受けていない。俺は魔法を使った方のオークを宿屋に渡すために解体し、マジックポーチにしまう。


「今日はもうワンセット行くか」


念の為、魔力ポーションと闘力ポーションを飲み、それからもう1ペアのオークを狩った。そして、お弁当を食べて街に帰った。

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