第72話 2体のオーク

「ちっ!」


このオークも前に見たオークらと同じで2体一緒に行動していたんだ!理由は知らないが、たまたまそれぞれが離れている時に俺が見つけてしまったのだろう。そして、仲間のオーク声を聞いてもう1体がやってきたのか。

2体のオークのそれぞれの区別が少しややこしいので、新たにやってきたオークは新オーク、最初から居た傷がついているオークを傷オークとでも呼ぼう。



「逃げ…いや!闇身体強化!」


頭の中に逃げるという選択肢が浮かんできた。基本的に高ステータスのオークだが、脂肪のせいか足はかなり遅い。走れば逃げることは簡単だ。

しかし、今日の様子では単独行動をしているオークはほぼ居なそうだ。つまり、ここで逃げてしまうと、俺はこの街に滞在する数ヶ月ではCランク帯の魔物を狩ることは不可能ということになる。

今の状況はたまたまオーク達が別行動してくれていたお掛けで傷オークはそれなりに重症なので、運が良い部類だろう。ならここで逃げている場合ではない。


どうせ、オークからまともに攻撃を1発食らったら氷身体強化していても即死を免れるだけで2体もいればそこでボコられて終わりだろう。なら、少しでも早く1体を殺るために攻撃特化で良い。



「凍てつけ!アイスフィールド!」


俺は新オークが少しでも俺の元までやってくるのを遅らせるために、俺から新オークまでの地面に氷を張った。


「無属性付与!」


俺は魔法を使った隙に攻撃してきた傷オークの棍棒を避けながら大鎌に無属性魔法を付与する。本当は最初の大鎌の攻撃で闇付与をしておけば時間経過で倒すことも可能だったかもしれない。これは2体目を予想ずらしていなかった俺の落ち度だ。

だが、今は少しでも早く1対1に戻すために傷オークを殺るか、無力化しないといけない。そのためにより斬れ味、つまり攻撃力を増加させられる無属性付与を選んだ。


「轟け!サンダーボール!」


「ブヒィィ!!」


元々素早さが無い傷オークは俺の魔法を避けることはできず、腹に命中する。しかし、腹回りが少し焦げ付くだけで今の魔法だけでは致命傷には程遠い。だが、痺れて麻痺することで動きはさらに鈍くなった。


「はあっ!」


「ブモオッ!!」


俺は鈍くなった傷オークの左脚を膝下から切断した。本当は胴や首を切断したいが、胴は分厚いし、首は高くにあるから諦めた。だからまずは行動を封じるために脚を斬った。

そして、脚を切断したことで傷オークの巨体が前のめりに倒れ、低い位置に頭がやってきた。これなら首を落とせる。


「ブゥゥゥ!!!」


「もうか!」


しかし、その頭を斬り落とす前に新オークがすぐ近くまでやってきている。俺はもうちゃんと歩けない傷オークから離れることで、もう1体のオークとも離れる。


「ブゥゥゥ!!!」


「あ、心配はしないのね」


完全に重症となった傷オークを心配することで、少しは休める時間があるかと思ったが、新オークは迷わず離れた俺を追ってくる。魔物には仲間の心配する気持ちはないのだろうか。


「斬れ!スラッシュ!」


「ブヒィヒィ!」


俺が大鎌を縦に振って放たれた縦長の斬撃は俺に向かって来ている新オークの真横を通り過ぎた。そのせいで新オークは俺の目の前までやってきてしまう。目の前の新オークはそのノーコンぶりを笑った気がするが、別に今のはちゃんと狙い通りだ。


「ブヒィィ……」


離れたところにいる傷オークから絞り出したような断末魔のような声が聞こえてきた。その声に咄嗟に新オークは傷オークの居る後ろを振り返る。すると、首に深い斬り傷のついている傷オークがいる。

そう、今の無属性魔法の斬撃は傷オークにトドメを刺すために放ったのだ。放置しても良いかと思ったが、這って動くことで仲間を呼ばれたから最悪だからな。


「はあっ!」


「ブモォォ!?」


仲間を心配する気持ちがあったのは結構なことだが、目の前でよそ見をしている新オークをただ見ている俺では無い。俺は大鎌を振って新オークの棍棒を持っていない左腕を斬り落とす。そこで俺は深追いせずに後ろに下がる。


「闇付与」


ここで付与魔法の闇魔法に変更する。もう急いで目の前の新オークを急いで倒す必要は無い。必死に探しても次を見つけるのに30分以上かかるのだから、血の匂いに連れられて仲間が来ることは無いだろう。戦闘経験を積むためにもここはじっくり長く戦いたい。だから俺は2種の身体強化も少し弱めた。


「ブモォォォ!!」


「来い!」


俺は怒って向かってくるオークと真正面から戦った。




「ふう…こんなもんか」


目の前には全身が傷だらけになって死んだ新オークが倒れている。俺は特に攻撃を食らうことなく、新オークも倒すことができた。

最初のCランク帯との戦闘だと考えると今日はまずまずの成果だろう。

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