第71話 Cランク帯の魔物

「よし、準備はバッチリだ」


指名依頼が終わって3日経ち、今日俺は本来Eランクの冒険者ではできないとされるCランクの常設依頼に挑む。

ちなみに、この3日間で減った回復ポーションを補充したり、念の為追加で魔力ポーションと闘力ポーションなどを買い揃えた。また、もう1度念の為あの指名依頼の場所を見に行った。やはり、魔物の数は12体と少なかった。

そして、昨日は刹那の伊吹に特訓をした。刹那の伊吹は前とは比べ物にならないくらいにパーティとしての戦い方が上手くなった。全員が自分の役割を理解して動けている。さらに、回復魔法使いの子がまだ弱くはあるが、バフを使えるようになった。それによって戦闘力も高くなっている。将来が楽しみなパーティである。




「えっと…こっちか」


俺はギルドで渡された地図を見ながら道を間違えないように進んでいく。ここにいるC-ランクはあまり多くは無いらしいが、それなりに林の奥に居る。そのため、行くだけでもかなりの時間がかかる。もしかすると、林の中で野宿をすることになるかもしれない。




「一応ここから生息地か…」


2時間と少しでC-ランクの魔物が生息するとされている場所に着いた。


「…何か雰囲気が違うな」


気の所為かもしれないが、今までの森や林と違って空気が重い気がする。これはただ俺が緊張しているからそう感じるのか、実際に違うのかは分からない。


「行くか…」


俺は身体強化と氷身体強化をし、緊張しながら静かにC-ランクの魔物を探し始めた。



「いた…!」


30分と少し探してやっと目的のC-ランクのオークを見つけることができた。ちなみに、イスブルクの近くに居るCランク帯の魔物はオークだけらしい。と言うよりもオークが基本的にどこにでもいるが正確かもしれない。

オークは豚が人間のように二足歩行しているような魔物である。ただ、その身体は2m以上あるため、170cm程の俺よりも大きい。俺はまだ成長期なので身長は伸び続けているが、オークよりも大きくなることは無いだろう。



「だけど…これは…」


しかし、発見したオークには問題があった。オークは2体一緒に居たのだ。これを逃したら次にまたオークを見つけられるかは分からない。俺は1体だけのオークを探すか、目の前の2体のオークを倒すか悩んだ。



「…1体のを探そう」


さすがにC-ランクの初戦が2体は少しキツイかもしれない。もちろん、オークに先に気が付かれたら戦うしかないが、今はオークが俺に気付いていない。ならここは一旦別のオークを探した方がいい。


ところで、C-ランクと聞くと、ただD+ランクの1つ上かと思うが、それは間違いである。もちろん、同じアルファベットでランクが1つ上がると強さ、厄介さがそれなりに上がりはする。しかし、アルファベット自体が変わると、その強さは一気に跳ね上がる。Eランクの魔物は弱過ぎたため、Dランクの魔物にそこまで危険を感じたことは無いが、それはCランク帯の魔物を警戒しない理由にはならない。





「1体だけだっ!」


1体だけのオークを発見して俺は少し喜んでしまった。だって、最初のを見逃してから2時間で2回オークを目撃したが、そのどちらも2体セットだった。もうここのオークは2体セットかと思ったら1体だけのオークも居た。


「暗がれ、ダークランス!」


俺は早速オークの背後の茂みの中からダークランスを放つ。その魔法はまだ俺に気付いてすらいない無防備なオークの背中に命中する。


「ブモォ!!?」


「浅いか!」


魔法はオークに直撃したが、貫通するほどの威力はなかったようだ。単体対策に1番良いダークランスを使ってもダメだったか。

魔法を受けたオークは後ろへ振り向き、茂みに向かってきた。オークは嗅覚がいいとされているので、さすがにもう俺の居場所もバレただろう。俺は大鎌を脇の方に引き、茂みから飛び出す。


「はあっ!」


勢い飛び出した俺はそのまま大鎌をオークの腹目掛けて横に振る。しかし、俺の大鎌ではオークの分厚い脂肪を突破して内臓を傷付けることはできなく、さらには刃がオークの腹の途中で止まった。闇身体強化はしていないとはいえ、身体強化は全力なのでこれには驚く。



「ブモゥ!!」


「っ!」


オークがどっから拾ってきたのか分からない木の棍棒を俺の頭目掛けて振り下ろす。俺は大鎌を抜き、慌ててそれを避けたが、棍棒が当たった地面には軽くクレーターができている。…これは氷身体強化をせずに頭にでも食らったら即死だな。

しかし、目の前のオークは背に大きい穴が空いていて、腹にも浅くない切れ込みが入っている。そのどちらからも血が少しずつ流れているので、このままいけば時間の問題で勝てるだろう。



「ブモゥ!」


「え!?」


なんて甘い考えをしていると、目の前のオークからではなく、横からオークの鳴き声が聞こえてきた。目線を横に移すと、茂みからもう1体のオークがやってきていた。

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