第69話 大満足
「やっぱり上手くいかないな」
俺は宿のベッドの上でそう呟く。
刹那の息吹に特訓をしてから2日経ったが、その2日間の狩りでも段々と魔物を狩れる数は減っている。昨日は40と少ししか狩れなかった。
「多分、戦い方の問題では無いんだよな」
戦い方を倒してすぐに移動するようにしたから狩れる数が減ったのかとも考えたが、それは違うと思う。
そもそも広場の近くに魔物が居なくなったのだ。だから広場で待つのはもう意味が無いだろう。だからといって狭いところで魔物がやってくるのを待つのも少し手際が悪い。なぜなら、開けた場所と違い、魔物から発見されることが少ないからだ。だから今は血の匂いに寄ってきた魔物を移動して自分から狩っているのだ。
「これは魔物が減っているのか?」
俺が何日もあそこで狩りを続けたことで魔物の数自体が減ったというなら狩れるペースが落ちていることは問題ではない。むしろ、依頼が進んでいいことである。
「しかし、釈然としないな…」
俺はあの倒しても倒しても休み無しに押し寄せる量の魔物と戦い、スタミナなどを鍛えるためにこの指名依頼をしているといっても過言では無い。その目的が果たせていないことが何だかもやもやしてしまう。最近では魔法を使う回数も減っている。
そんな不安を抱えながらも、次の日も変わらず同じ場所に狩り行く。
「ん…?ここは…?」
より魔物に合うために今日はペースを上げて少し奥まで林の中に入っている。そんなところで、最初の広場よりも2倍近く広い場所が合った。
「あっ」
そこで気が付いたが、この広場の端と端でベア5体とビックウルフ10体程が睨み合っていた。俺はちょうど広場の真ん中くらいの場所に入ったので一瞬で魔物には気が付かなった。
「離れるか…?いや!」
まずここを離れることが頭に過ぎったが、俺はそれをすぐに否定する。だって、もしかすると、俺が待ちわびていたあの初日のようなことがここなら起こるかもしれないのだ。逃げている場合では無い。
「斬れ!スラッシュ!!」
俺は大鎌を大きく俺の周りを1周するように振り、全方向に斬撃を飛ばす。遠くに飛ばすには大鎌を振った方が良い気がする。
その斬撃は遠くに行くほど威力は落ちるが、何とか2種の魔物まで届き、かすり傷を付ける程度の役割はしてくれた。
「「「ガアッ!!!」」」
「「「ワオォーン!!」」」
「来い!」
傷が付けられたことで2種の魔物が俺を敵と認識して向かって来た。俺はそれを迎え撃った。
「よしっ!追加が来たぞ!」
ビックウルフを狩り終え、毛皮の脂肪が分厚いベアに少し苦戦していると、新しくビックウルフがまた追加でやってきた。この広場でなら前のようなことあの狩っても狩っても押し寄せる魔物を体験できるな!俺はそれからやってくる魔物を狩り続けた。
「はあ…はあ……!ふぅ…」
最初に攻撃をしてから2時間ほど経過した。さすがに魔物がやってくるペースは少し遅くなった。
「まだ3分の1は魔力も闘力も残ってる」
俺は魔物が途切れたタイミングを使い、魔法で殺った魔物以外をマジックポーチに入れながらステータスを確認してそう呟く。あの日からステータス的にはそんなに変化は無い。あ、今確認したら今日は1レベル上がっていたけど。
なら、なぜこんなに魔力と闘力が余っているかというと、単純に2種の身体強化を全力で行っていないからだ。別にこの辺の魔物を倒すためにそれらを全力でかける必要はそもそも無い。だけど、前の時は押し寄せる魔物の対処をするために全力だった。
しかし、多数の魔物との戦いになれ、2種類の魔物に挟まれないように魔法を使いながら上手く立ち回ることで最低限の身体強化で良くなった。まあ、その加減のせいで最初は複数のベアとかには少し苦戦してしまったが、ベア相手には少し出力を上げることで対処した。ちなみに、ベア以外にもタイガーという虎のようなD+の魔物も現れたが、ベアと同じ処置を行った。
「お、また来たか」
なんて考えていると、また魔物がやってきた。俺はそれを殺るために自ら向かって行く。
「こんなもんか」
結局、この日は夕方まで狩りを続け、今日だけで数的には200体以上は狩ったと思う。もう魔物が現れ無くなったので、これで今日は打ち切りだろう。また、魔力と闘力は自然回復もあり、どちらも5分の1程度は残っている。
ちなみに、魔物に踏み潰されたり、魔法の傷がついている魔物は置いておいたのでマジックポーチには100体弱ほどしか魔物は入っていない。しかし、これでマジックポーチはほぼいっぱいだ。一応ベアとタイガーというランクが少しでも高いのを優先して入れた。
目的の狩りができたことで俺は大満足でこの広場を出て街を目指して歩き出した。
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