第67話 約束の1週間後
「兄貴!おはようございます!」
「ん?おはよう」
いつも通り朝6時過ぎにギルドに行くと、あの刹那の息吹のパーティが全員揃っていた。
「珍しいな」
いつも朝から居るが、刹那の息吹に会うのは初めてだ。
「はい!今日は特訓を付けてくれる日なので早く来ました!」
「あっ」
最近はどうやれば効率を戻してあの場所で狩りができるかを考え続けていたせいで、完全に特訓のことが頭から抜けていた。
俺はこの1週間でまだレベルが1つも上がっていない。同じ魔物や自分よりも弱い魔物ではレベルが上がりにくいというのは本当なのかもしれないな。
そんなことよりも、今は完全に忘れていた目の前のパーティの特訓だ。
「よし、まずは命の危険が迫るまでは後ろから見てるからいつものように魔物を倒してくれ。そのためにいつもの狩り場に案内してくれ」
「分かりました!」
約束を忘れていたことを悟られないように当たり前のようにそう装って俺は刹那の息吹に着いていく。その際、槍使いと無口だけはじっと疑うように見ていたが、目を逸らしておいた。
「やっぱりパーティとしてはバランスが取れているな」
狩り場に向かう途中に刹那の息吹の面々の自己紹介を兼ねて職業を聞いておいた。まず、前衛の男と女の職業がそれぞれ剣士と槍士で、無口の職業が盗賊で、後衛の2人が火魔法使いと回復魔法使いだった。
やはり、父さん達のパーティと職業的には似ており、バランスが取れていると思う。
また、職業の話では俺の職業の不遇剣士が少し会話が弾んだ。やっぱり不遇剣士などという職業は聞いたことがないそうだ。
「お、居たな」
目の前に5体のウルフの群れが現れた。
「早速やって見せてくれ」
「はあーー!」
俺の言葉と共に剣士の男が大声を上げて駆け出す。それに追随するように槍士と無口も魔物に向かって行く。その間に火魔法使いが魔法の準備をする。
主に男がウルフを倒し、誰も怪我せず魔法を放つこともなく戦闘は終わった。
「どうでしたか!」
魔物を倒し終わり、剣士がキラキラとした目で見つめてくる。
「まだ終わってない。他に魔物が近くにいないか警戒しろ。それから、すぐに魔物の解体だ」
「は、はい!」
俺がそう言うと、剣士と槍士が解体を始める。その間に無口と魔法使い達が周りを警戒する。
戦闘の音と血の匂いで誘われて近寄ってくることもあるからな。また、頭のいい魔物になると、漁夫の利を狙って近くに潜んでいることがあるらしい。
「終わりました!」
「そうか」
解体が完了し、素材を回復魔法使いが背負い、1回目の狩りは終わった。まだ役割が少ない回復魔法使いが荷物を持つのは良いな。まあ、本当は物理職が持った方がいいのだろうけど。
「とりあえず、比較的安全な場所に移動するぞ」
とりあえず林から出て、道のある少し開けた場所に移動する。
「まず…」
そこで俺が評価を口にしようとすると、剣士がわくわくしたような顔をしている。
「お前が1番悪かった」
「えっ?!」
俺がそんな剣士を指さしてそう言うと、一気に顔が暗くなった。
「まず、魔物に気付かれてないのに大声を出して接近する意味が分からない。まずは静かに近付いて不意打ちをするべきだ」
まあ、俺はよくわざと気付かせてから魔物と戦っているが、あれは一応自分なりに意味があるのでいいとする。
「それから、魔法使いの準備が終わっていないのに1人で突っ込むな。魔法は強力な攻撃手段なんだから、魔力に余裕があるならまずは魔法を放ってもらってもいいだろう」
ファイアボールなら直撃しなくても火傷などのダメージは負うはずだ。そうすることで戦闘は楽になる。
「今度は前衛3人になるが、魔法を使わせる気がないのか?魔法の準備が終わったのなら射線を空けてやれよ」
前回俺と戦った時もそうだったが、上手く魔法を使わせてあげられるような動きができていない。
「それから、後衛の2人は解体に参加しないのか?魔法職でも解体のスキルは取得できるはずだ。警戒は専売特許の盗賊の子に任せて、後衛2人も解体をした方が効率的だ。ナイフを持ってないとしたら、護身用も兼ねてナイフの1本くらい」
別にスキルが無ければナイフが振れないとかは無い。また、悪人に捕まった時のことも考えてナイフくらい持っておいた方がいいだろう。
「わ、わかりました!」
それからは言うことを聞けるように頑張りながら狩りをやっていた。まだ慣れていないから遅くはあるが、後衛も解体に加わったのも良い。素直に言う通りにやろうとする姿勢が何よりもいい。
ただ、唯一全くできていないこともある。
「どうしても魔法の射線を空けるのがな…」
これは魔法を使えないからこそだが、どうすれば魔法使いが魔法を放ちやすいのかが上手く理解出来ていないようで苦戦しているように見える。
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