第66話 仮想Cランクの魔物

「昨日はビックウルフ22体、ビックボア17体で合計で金貨1枚と大銀貨2枚になります」


「おお…」


昨日は夕方くらいから爆睡し、次の日朝6時過ぎにギルドへ行くと、早速昨日の分のお金を貰った。一気に小金持ちくらいにはなってしまったな。ただ、将来的に強い奴隷や良い武器を手に入れることを考えたらこんなもんでは全然足りない。

ただ、単体で考えると初日などにビックウルフを売ったお金よりも安いのは解体していなかったのと、魔物にそれなりに傷があったからだろう。



「そして、これがヌルヴィス様宛の指名依頼となります」


そう言われて、渡された依頼書を見てみる。

内容的には昨日の場所で魔物を討伐して欲しいというものだった。また、依頼料は普通とは少し違い、1度に30体以上の魔物を売る場合の売値が通常の1.5倍になることだった。30体以上なのはその場所で売る魔物を殺したということを証明するためだろう。全ての死体を持ち帰れないので、討伐数ごとに追加のお金を払うとかでは無いのだろう。とはいえ、1.5倍はかなり大きい。

また、1日で30体を狩れなかったり、狩るのが難しくなったら依頼は終わりなんだそうだ。他にも終わる条件などはあるが、それはいいだろう。



「では、お気を付けて」


「ああ」


個人依頼を受け、俺はまた1人で昨日と同じ場所へと向かった。




「今日は…まだ居ないな」


林を抜けて昨日の広場にひょこっと顔を出すと、そこには骨が少しあるだけ、魔物はいなかった。


「…昨日の死体は全部食われたのかよ」


それなりの量の死体が放置されていたと思っていたが、俺が帰ってからの半日と少しで全部食べ尽くしたようだ。


「よしっ!」


俺は勢いよく飛び出し、即座に広場を抜けて奥まで進む。広場の奥は木々が生えているが、大鎌を遠慮なく振り回せるくらいには隙間が空いている。


「居た」


広場を抜けて1分もしないうちにビックウルフの群れを発見した。早速俺は身体強化と雷身体強化を使い、その群れを殲滅し、死体をマジックポーチに入れる。


「すぐに離れるぞ!」


昨日の狩りをする上での反省点は広場という開けた場所にずっといることになったことだ。どんどん血の匂いが強まり、戦闘音がし続けることで魔物が集まった。だから今日は魔物を狩ったらすぐに別の場所へと走り出す。昨日とは違う意味で動き続けることにはなるが、戦い続けるよりはマシだろう。

また、移動時は強化類を弱めることで昨日よりも魔力と闘力の消耗を抑えられる。




「ん?ベアか?」


そんなことを続け、マジックポーチの中に魔物が50を上回ったくらいで昨日見なかった魔物が現れた。その魔物は熊のような見た目で、身体は立った時は俺の身長よりも大きい。それが3体いる。


「確か、ベアはD+だったか?」


ビックウルフとビックボアはDランクで10体以上の多い群れになるとワンランク上がってD+ランクになる。ただ、ベアは単体でD+ランクになる。さらに、それが3体も同時にいる。


「仮想Cランクと考えればちょうどいいか」


実際のCランクよりは弱いが、3体揃っているので仮想敵には十分だろう。


「はあっ!」


そのため、俺はわざと気付かれるように声を出してから向かって行った。


「ガアッ!!」


「おっと」


ベアは向かってくる俺に腕を大きく振ってその鋭い爪で攻撃してきた。俺は防御力が低いので、1回クリーンヒットするだけで死にはしないが、結構なダメージになってしまうだろう。


「まあ、当たらなければ関係ない!」


俺はベアの攻撃を掻い潜りながら近付き、ベアの腹を大鎌で斬り裂いた。


「一刀両断はできないか」


ビックウルフらとは違い、一撃で殺すことはできないようだ。しかし、かなり深く斬ることはできた。

その後も深追いせずにヒットアンドアウェイを意識することで3体のベアをかすり傷のみで倒すことができた。


「魔法も無しで殺れたし、魔法を使えばCランクも大丈夫そうだな」


もちろん、この3体のベアよりもCランクの魔物の方が強いと思うが、それでも魔法を使えば大丈夫という自身が生まれた。


「よし、次行くか」


今日はその調子で夕方前くらいまで狩りを続けた。すると、マジックポーチの中は初めていっぱいになった。今日の魔物は100体近くの狩った魔物のほぼ全てを持ち帰ることができ、売値は金貨3枚と大銀貨2枚になった。ベアがこの辺では珍しいらしく想像以上に高かった。そして、そこから依頼料で1.5倍され、最終的な報酬は金貨4枚と大銀貨8枚となった。

この調子で毎日狩りを続けた。ただ、次の日からこの狩りの方法では50体未満しか1日で狩れないようになってしまった。

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