第60話 反省会
「回復魔法を使える人は倒れてる人に回復魔法を使いなさい!」
ギルド長がそう言うと、騒いでいた人達から何人かが倒れている人達に回復魔法を使い出した。
「何の見返りもなく魔法を使うことが意外かい?」
「っ?!」
そんな光景を見ていると、ギルド長からそう言われた。図星をつかれた俺は咄嗟に返す言葉に出なかった。
確かに俺は冒険者から当たり前のように無償で回復魔法を使うものが何人もいるとは思わなかった。
「君に冒険者とどんなトラブルがあったか知らないし、無法者と呼ばれるような者が冒険者の中に少なくないのも認めるよ。でも、そうじゃない者も多いのも分かって欲しいな」
「…どうだかな」
今は余裕があったし、楽しい思いをできたからそのお返しとして回復魔法を使ってるに過ぎない。もし、これが魔物を目の前でピンチになった時に同じように人を助けるために回復魔法を使えるとは限らない。ほとんどの場合はそんな時は我が身可愛さで逃げると思う。
「まあ、そんなことよりも、反省会だよ」
「え?反省会?」
急に知らない会が開かれようとしている。何の反省をする会なんだ?
「模擬戦が終わったら誰が良かったか、誰が悪かったかを教え合うんだよ。今回は力の差があったから君が一方的に伝えることになるけど」
「何でそんなことを?」
もし、今日の敗戦から俺を更に憎んだとしたら、助言を与えることは自分で敵に塩を送るようなものだ。その助言のせいで強くなられて今度は俺が負けて殺されたとしたら、俺はとんだ笑い者になる。
「冒険者ってのは個々が集まった組織のようで1つの集団の組織なんだよ。もし、この街に魔物による危機が迫った時にはほぼ全員が協力して対応しなければならない。そんな時に仲間が少しでも強かった方が自分も生き残れる確率は上がる」
「でも、俺はこの街から去る予定だ」
俺はこれでEランクになるので、この街を出る予定だ。
「彼らも上を目指すとすれば遠くないうちにそうなるだろうね。最終目的地は君と一緒なんじゃない?その時に為になると思うよ」
「……」
確かにこの国内で移動しながら冒険者をするとなると、最終目的地は俺と同じ王都になるだろう。
「はあ…分かったよ。反省会をするよ」
「回復魔法でもう起きたみたいだし、早速話してきてね」
どんなにゴネてもギルド長を言い負かすことは無理そうなので諦めて反省会とやらをやることにする。
最悪、敵対されたとしても、その時は周りに誰もいない野外だろうし、遠慮なく魔法を使うので負けることは無いだろうしな。
「これから反省会とやらをするけど、いいか?」
俺が5人が集まっているところに向かうと、そう話しかけた。すると、全員が無言で頷いた。それを確認して俺は一方的に話していく。
「まず、前衛の長剣の男と槍使いの女はお互いが傍に居ても自由に武器を振れるようにしろ。今回、2人がやっていたことは順番に1対1をやってに過ぎない。傍で武器を自由に振れればもっと相手を上手く追い詰められる。挟み込むような位置でそれができればなおいいな」
今回、2人は交互に向かってきたから簡単だった。これが挟み込まれて攻撃されたら俺は対処がもっと難しかった。
「その盗賊?の子は前衛の2人が離れたタイミングじゃなくて、2人が攻撃してる的に姿勢を低くしてもっと見つかりずらいようにして妨害目的で足とかを攻撃できたら良かったな。あくまで自分はサポートする立場だと理解できれば良かったな」
無口の子を掴んで地面に叩き付けられたのは前衛2人が離れたタイミングで近付いてきたからだ。これが攻撃中ならそこまでやる余裕はなかった。
また、無口の子は攻撃力は前衛の2人よりも低いだろう。だから一撃で相手を倒すには急所を攻撃するしかない。しかし、敵も急所は1番警戒するので攻撃するのは難しい。だからこそ、相手を弱らせるために足などを攻撃するのが良いだろう。
「魔法使いの子は魔力操作ももっと使えるようにしてアロー系の魔法なら前衛が戦ってる時でも間を縫って放てるようにした方がいいかな。急にそこまでのコントロールは難しいと思うから、まずはもっと早く魔法を放てるようにしよう。あと、魔法が出来たら放てるチャンスを待つんじゃなくて、合図をして前衛に射線を空けてもらうようにしよう」
前衛が居る時に魔法が打てたらかなり脅威となる。もし、今回そうだったから多少の傷は覚悟して前衛を無理やり放置して魔法使いを先に倒しに行っていた。
また、強敵になると大規模な魔法が必要になるから魔法を放つ合図は必ず必要になるだろう。
「そして、回復魔法使いはまだバフとかは覚えてなさそうけど、バフができるようになったら真っ先にバフを使おう。まだできないでも、倒れた仲間が自分の元に来るまで魔法使いの傍で待機じゃなくて、倒れた仲間を回復させに行こう。
それから、回復魔法使いでも攻撃魔法は覚えられるはずだから、自衛ぐらいできるように覚える努力をしよう」
同じ回復魔法使いのルイの母さんはバフなどの魔法や攻撃魔法を使えると言っていた。今すぐそれくらいの強さを求めるのは無理だろうが、いずれはそれくらいの強さになること目指すだけでも変わってくるだろう。
「ん?どうした?」
目の前の5人がぽかんと口を開けて固まっている。無口の子までもその調子なのが驚きだ。
また、少し横を見ると近くにいたギルド長まで同じように固まっている。一体なんなんだ。
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