第58話 いちゃもん

「きょ、今日もこんなに…1人で…凄いですね!」


初日のような数の討伐証明を5日連続で持ち込むと、受付の人にそう言われた。


「このまま調子だと2週間経たずにランクが上がりますよ!」


このペースを守っていれば2週間でランクアップすることができるらしい。

ちなみに、1週間は火の日、水の日、風の日、土の日、雷の日、氷の日の6日間で、それが5週間で1ヶ月となる。また、12ヶ月で1年となる。



「明日も頑張ってください!」


「ああ」


俺は受付から鼓舞を受けて、いつも通り宿に帰ろうとしたが、今日はそうはいかなかった。



「おい!お前!」


「あ?」


後ろから声をかけられた。振り返ると、俺とそこまで変わらないくらいの年齢に見える男が俺を睨み付けていた。その後ろには同じ年歳4人の女が居た。そのうちの1人は男と同じように睨んでいて、残り2人がそれを止めていて、最後の1人は我関せずみたいな態度だった。

ハーレムパーティかよ…羨ましくなんかないぞ。



「初日からずっと見てたぞ!人の狩った魔物を自分の手柄みたいにするなよ!」


「はあ?」


急に訳が分からないいちゃもんをつけられた。何故か、それが当たり前という感じで言っているのが気に食わない。現にそんなことはしていなく、全て自分で狩っている。


「ふんっ!そんなことしてもそんな狡なんてギルドは把握してるからランクは上がらないわよ」


「あっそ」


もう1人の睨んでいる女が何か言ってきたが、それこそギルドは馬鹿じゃないので俺が自分で狩ったことくらい分かるだろう。

俺は戯言を無視してギルドから出ようとしたが、追加で現れた者のせいでそれはできなかった。


「何の騒ぎだ?」


「あ、ギルド長」


「ん?」


ギルド長と呼ばれた男は剣を腰に携えていて、身長は高めですらっとしている。ギルド長とはギルドの人で1番偉い人で、かつ何かあった時に冒険者を率いて戦えるためにそのギルドで1番強い人らしい。



「なるほど…そういう事か」


ギルド長は俺がギルド長を見て固まっている間に受付から事情を聞いた。


「なら君達5人とそこの彼で模擬戦をすればいいんだよ。そうすれば強さでどっちが正しいかはすぐに分かるだろ。幸い、今日の特訓は終わって訓練所は空いているしな」


「さすがギルド長だぜ!おい!お前の不正を俺が暴いてやるぜ」


「は?俺にそんな戦いをやるメリットがない…」


ここまで言って俺は途中で言葉を止めた。俺は対人経験が少ない。父さんと母さんとあの冒険者くらいしかない。ちゃんとしたパーティと戦ったことは無い。目の前の奴らは見るからにあまり強そうでは無いが、それでも良い対人経験になるかもしれない。


「ん?」


何て考えていると、ギルド長がゆっくり近付いてきた。


「大丈夫、君が不正をしていないのは売られた魔物が同じ傷跡で分かっている。そして、ボブゴブリンやビックウルフを殺れることもね。

ただ、彼らはもう少しで冒険者登録して数ヶ月でのEランクへのランクアップなんだよ。これもかなり早い記録でもてはやされたのに、急に君という謎で更に早い者が現れて不服なんだよ。でももし、この模擬戦で勝てればすぐにランクアップさせてあげるよ」


「まじか!」


黙っているのが拒否するつもりだと思われたのか、ギルド長が囁いてそう伝えてきた。こんな好条件なら断るわけが無い。ギルド長が立ち会いの模擬戦なら重症を負うこともないだろうしな。

それにしても、俺に文句を言ってきた理由の1番は嫉妬からなんかよ。でも、話を聞いた限り俺と同じ15歳なのだろうな。

また、傷跡から俺の狩った魔物と分かるということは、逆に魔法を使った場合は俺の狩った魔物判定されないかもしれないのか…。


「わかった。戦ってやるよ」


「じゃあ、訓練所に行くぞ!」


そう言うと、そのハーレムパーティは意気揚々と訓練所に向かった。その際、止めていた2人の女は俺に向かって頭を下げてから行った。

ちなみに、訓練所はギルドの集会や個々の特訓に使われる場所で、大きい都市のギルドになるとほぼ確実にあるらしい。



「はあ…変なのに絡まれたな」


父さん達にも冒険者の話は面白がりながら聞いていたが、いざ自分がその立場になるとなかなか面倒だな。


「こんな理不尽も楽しめるようになってから冒険者の本番だぞ。ほら、周りを見てみろ」


「ん?」


俺の独り言が聞こえていたのか、ギルド長がそう言ってきた。言われた通りに周りを見ると、さっきまでよりも確実に人が増えている。


「おい!お前はどっちに賭ける?」

「俺はあのハーレムパーティに銀貨1枚だ!」

「なら俺はあのソロのやつに銀貨2枚だ!」

「俺は…」

「私は…」


「…当事者じゃないから楽しめるんだよ」


「まあ、そうかもな!」


周りで酒を飲んでいるやつは賭け金を話しながら酒を持って訓練所に移動している。あいつらからすると、急に始まったちょっとしたイベントみたいなもんなんだろ。


「さて、我々も行こうか」


「うん」


そんな人達と共にギルド長に案内されて俺も訓練所に移動する。

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