第57話 初日
カーンカーン!
「もう朝か」
昨日は18時の鐘の音で起き、1回の食堂で夕食を食べた。夕食はボアのスープとウルフのステーキと黒パンだった。ウルフのステーキはボアよりも固く、筋っぽいが、脂身が少ないからかしつこさは少なかった。
俺は料理を1人で楽しみ、2階に戻るとまた眠った。
そして、今目が覚めたら朝になっていた。昨日はほとんど何もしてないな。その分今日は頑張らないとな。
「よっと…」
俺はベッドから出て装備を整えた。それから忘れ物が無いかを確認して部屋を出て1階に降りた。
「あ、帰ってくるの待ってますね!」
「ああ、ありがとう」
厨房に居た女の子が俺を見つけて声をかけてくれた。わざわざ出る時にも声をかけてくれるとはかなり優しい人なのだろう。
ちなみに、この宿は女の子とその両親で切り盛りしているようだ。
「ギルドは…そこまで人が多いわけじゃないな」
ギルドの中に入ったが、そこまで人は多くなかった。さすがに昨日の昼過ぎに来た時よりは多いが、10人もいない。さすがに朝が早すぎたのか?
「んーー…」
依頼ボードを見ている少ない人に混じりながら依頼ボードを見たが、昨日とそこまで代わり映えしていないようだ。増えたのは護衛依頼くらいか。
「まあ、いっか」
わざわざ受けようと思う依頼は無かったので、特に依頼を受けずに俺はこの街から出ることにした。
「Eランクになったら次の街に行くか」
俺は歩きながらそう決めた。たった今、次の街への護衛依頼を見たが、どれも受けられるのは最低でもEランクからだった。父さん曰く、ランクの昇格で上に行くほど色んな依頼を受ける必要があるそうだ。だから次の街に行くついでに護衛の依頼は受けておきたい。
「さて、とりあえず手当り次第に狩るか」
街の外に出たが、どこにどんな魔物がいるかは今回は調べていない。まあ、近場に高ランクの魔物の依頼がなかったから調べなくていいと判断した。
だからとりあえず林や森の中に入って見つけた魔物を全て狩ればいいだろう。
「お、早速ウルフがいたな」
道から逸れて林に入ってすぐ5体のウルフを見つけることができた。もしかすると、このウルフ達は道に誰かが通るのを待っていたのかもしれないな。
「来いよ」
「「「ガアッ!」」」
大鎌を抜いて挑発するように声を出すと、ウルフ達は勢いよく向かってきた。
「動きはボアほど単調では無いが、ボアよりは遅いな」
ボアほど直線的な動きでは無いが、その分スピードに乗っていないから速さは無い。この程度なら身体強化をするまでもなく狩ることができた。
「……解体がだるいけど仕方ないか」
あまりこの街ではマジックポーチは使いたくない。王都とは違い、ここではマジックポーチを持っている者は少ないだろう。だからこそ、あまり目立つ真似はしたくない。だからお金を取り出す時はポケットを使ってたし、今も無駄にでかい鞄を背負っている。
「討伐証明は牙で、売れるのは魔石と毛皮と肉だけど、肉はいいか」
肉も売れるが、大きく重いため邪魔になるから諦めた。ささっと毛皮を剥ぎ、牙を切り、魔石を取り出して死体は放置した。
「さて次行くぞ」
その後もどんどん進んでいくと、かなりの数の魔物に遭遇することができた。人が多いところほど近くに魔物が多いという噂があると母さんから聞いたが、本当かもしれない。
「こんなものでいいか」
体内時計だとまだ4時過ぎで早いが、もうゴブリンを14体、ウルフを17体、ボアを11体、またボブゴブリンを1体、ビックウルフを2体狩れたので戦果としては十分だろう。
「換金をしてくれ」
「かしこまりました」
俺はギルドに戻ると、ボブゴブリンとビックウルフ以外の袋に入った討伐証明を受付に出した。その2つは今の俺のランクじゃ狩ってもお金が貰えないからな。
「えっと…これはパーティの戦果では無いのですよね?」
「いや、俺1人だぞ。パーティを組んでないのはギルドカードを見ればわかるだろ」
ギルドカードにはパーティを組むとそのパーティ名が表示されるらしい。俺にはそれが無いからパーティを組んでいないのは分かるだろう。
「……かしこまりました。では、合計で大銀貨1枚と銀貨8枚と大銅貨2枚になります」
「おう」
「魔物の素材売り場は左の奥になります」
「わかった」
それから今日の魔物の素材を売りに行った。肉は重いから持って帰らなかったが、余計な傷を付けずに綺麗に殺れて居たので、素材でも銀貨5枚になった。ただ、そのうちビックウルフだけで銀貨4枚だった。低ランクの魔物の毛皮や牙や魔石はあまり売れないようだ。今日の分の肉が全てあったら大銀貨に達していたそうだ。だとしても重いから持って帰ろうとは思わないな。もし持って帰るとしても最後に殺ったやつだけだな。
それにしても、今日だけで宿を46日泊まれるだけのお金が手に入ってしまった。別にお金に執着してはいないが、貰える分には嬉しいな。だからといってここで怠けずにギルドランクとレベル上げのために毎日狩りに行こう。
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