第50話 最後の味気無い狩り

「今日は5体…多いな」


もうビックボア狩りを始めてからかなり時が経つが、5体同時は最多記録だ。


「今日で最後だし、気合い入れるか」


俺は気合を入れるために闇身体強化を強めにかける。

ちなみに、今日でこの森で狩りをするのは最後となる。なぜなら、俺は明後日で15歳の誕生日となるからだ。


「闇れ!」


俺は近くの草むらから飛び出し、まず1番大きなビックボアの頭をストックしていたダークランスで貫いた。他のビックボアは突然のことに固まっている。そんな暇はあるのかな?


「はあっ!」


「「ヒブッ!」」


俺は1番近くにいたビックボア2体の首を斬り落とした。この1年弱でレベルもそれなりに上がったので、ビックボア程度ならもう一撃で殺れる。


「ブヒッ!」


ここでやっとビックボアが動き出した。ビックボアは突進して俺に向かってくる。しかし、俺が近くにいるせいで俺にぶつかってもそこまでスピードが付いていないだろう。


「よっと…!」


だから俺は大鎌を一旦しまい、ビックボアの角を受け止める。踏ん張っていたが、少し足が引きずられてしまった。しかし、それでも動きを止めることに成功する。


「おらっ!」


「ブゥ!?」


俺はビックボアの頭を右拳で殴った。体術ではビックボアでも一撃では倒せない。


「らあっ!」


「ブッ?!」


次はビックボアの顎を膝で蹴った。すると、今度は身体が少し浮いたので、腹を蹴り上げる。


「撃て!アタック!」


腹を蹴り上げたことでより腹が見えた。俺に腹を見せて縦になったビックボアの腹に無属性魔法を放つ。体感だとこれで殺れたはずだ。

無属性魔法でビックボアが吹っ飛ぶと、距離を取ってスピードに乗って突進を仕掛けてくる次のビックボアやってきた。


「暗がれ、ダークボム」


俺が放ったダークボールよりも一回りほど小さい黒い玉がビックボアに当たると、爆発した。そして、ビックボアの顔を消し飛ばした。


「逃がさんぞ」


俺は逃げようとしているビックボアを追い、首をはねた。



「突進がワンパターンだからもう楽勝だな」


攻撃手段が突進くらいしかないので行動が読みやすい。だからもうビックボアに苦戦する未来が見えない。俺はビックボアをマジックポーチにしまうと、次の獲物を探し始めた。



「レベルも上がらなくなったし、今日はこのくらいで帰るか」


また、その後も森をさまよったが、ビックボアが見つからなかった。最近はビックボアの経験値が低いのか全然上がらなくなった。最後がこれだと呆気ない気もするが、黒化しているビックボアを探しても見つかるわけがないので今日はこれで終わりにしよう。途中でビックボアを解体して俺は家に帰った。



「おかえり、今日も何も無かったか?」


「良くも悪くも何も無かったよ」


俺はあれから冒険者に襲われることも特別強い魔物に会うことも無く平凡な日々を送れていた。


「明後日からヌルが居なくなるからまた俺が狩りに行かなくちゃならないんだよな…」


「父さんにとってはそれくらいなんの苦労でもないでしょ」


俺が狩りをするようになってから父さんは狩りには行かなくなった。ただそれは俺がレベル上げをしたくて代わってもらったに過ぎない。俺よりも強い父さんならビックボアを狩ることくらい問題ないはずだ。

また、父さんが言った通り、明後日の15歳になった誕生日で俺はこの村を出ていく。だから父さんは再び狩りに行くことになるだろう。


「…ヌルが怪我をしていないようなら明日は予定通りやれるな」


「少しくらい怪我をしてても明日はやるつもりだよ」


明日、俺が村にいる最終日になるが、俺は父さんと森で本気で戦う予定になっている。まあ、本気を出すのは俺だけで、父さんにどれだけ本気を出させられるかの勝負になると思うけど。ただ、父さんに隠しているやつとかもあるからそこそこ戦えるとは思う。

ちなみに、母さんとは戦わない。母さんには魔法を連発されるだけで負けてしまう。だからといって近くから戦いを始めると武器を突きつけるだけで俺が勝ってしまう。要するにやってもあまり面白みがないから戦わないのだ。まあ、明日は父さんに集中するという意味もあるな。



「楽しみだな」


「ああ」


俺と父さんはお互い明日のことで少し緊張しているか、今日の会話はあまり行われなかった。そして、今日は早めに休んで次の日となった。

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