第49話 変わった狩り場

「じゃあ、行ってくるね」


「「行ってらっしゃい」」


半黒化ビックボアと冒険者の2人を殺ってから3日が経ち、俺はまた狩りに出かけた。ちなみに、別に3日前のことがあったから狩りの日を開けた訳ではなく、元からその予定だった。



「昨日、一昨日は大変だったな」


だからといって昨日、一昨日は家でのんびりしている訳ではなく、父さんと母さんと戦ったりしていた。実際に襲われる事件があったからと、いつもよりも厳しい実践的な訓練になったのでかなり疲れた。


「だからって2対1はだめだよ…」


なんと、昨日は父さんが前衛、母さんが後衛の2対1で俺は戦ったのだ。加減はしてくれたけど、ほとんど相手になれなかった。人との戦いでは後衛から倒すのが基本らしいのだが、母さんの元へ辿り着くことさえできなかった。


「そう考えると、3日前は幸運だったな」


もちろん、相手が俺でも勝てるくらい弱かったのが1番の幸運だが、他にも運が良かった点は多い。もし、俺を殺そうとしたのが魔法使いだったら遠くに居たと思うので、あんな簡単に最初に1人を殺ることができなかった。また、全員が物理職であのくらいの強さだとしても4、5人ともなれば勝てたかは怪しい。


「逃げることも考えないとな」


これは両親にも言われたことだ。勝てないと判断したら獲物を諦めてでも逃げないといけない。獲物は取られてもまた狩れるかもしれないが、命は1度失ったらもう絶対に戻ってこないのだ。



「でも、今日からは…」


なんと、今日からはビックボアなどが居るくらいまで森の奥に入っていいという許可が出たのだ。もしかすると、昨日2対1をしたのはその許可を出せるかどうか実力を見るためという意味もあったのかもしれないな。


「まあ、レベルも上がったしな」


いつ上がったかは分からないが、3日前に確認すると、レベルが1上がっていた。正直、かなり大変だったので、2、3レベル上がって欲しいところではあったが、そう簡単では無いようだ。


また、なんと闇魔法がレベル5になったのだ。黒ボアに闇魔法、闇付与、闇身体強化と闇魔法を多用したかいがあった。レベル5になったのでそれなりに広範囲の闇魔法も使えるようになった。ただ、広範囲魔法はその分魔力消費も激しいので出番は少ないだろうな。

さらに、3日前の反省を活かして、今はそれなりに魔力量を使ったダークランスをストックしている。広範囲魔法をストックしようかとも思ったが、広範囲魔法は使い時が難しいと母さんが言っていたのでやめておいた。



「おっと、ビックボアだ」


なんて考えていると、少し先にビックボアを発見した。


「何か…物足りなく感じるな」


先に半黒化したのと戦ったせいか、ビックボアがただのデカいだけのボアに感じてしまう。


「まあ、油断はしないけど」


半黒化したのに勝てたのに、普通の奴に油断したから負けたとなったら笑いもんだ。それに、早くも許可が出た森の奥での狩りを禁止されてしまう。


「雷身体強化」


俺は雷身体強化をしてビックボアに向かって行く。


「はあっ!」


「ヒブッ!?」


俺は後ろからビックボアの首を斬り付けた。


「ちっ…浅いか」


しかし、俺の攻撃では致命傷を与えることはできなかった。暴れ狂うビックボアから距離を取った。


「さすがに強化が弱ったか」


黒ボアには身体強化と闇身体強化をそれぞれ全力で使っていたが、今は敏捷が大きく増す雷身体強化しか使っていない。さすがに攻撃力が足りなかったようだ。


「まあ…でも」


俺にビックボアは突進をしてきた。そのスピードは黒ボアよりもかなり遅い。


「凍てつけ!アイスウォール!」


「ヒグッ!?」


俺が出した厚い氷の壁にビックボアが突っ込んだ。厚くしたおかげで氷の壁は砕けることはなかった。


「よっ…はあっ!」


「ブゥ…」


俺は氷の壁を飛び越えて視界が氷の壁でいっぱいになっているだろうビックボアの首の傷をもう一度斬りつける。同じ場所を斬り付けたことで今度は深い傷となり、ビックボアは倒れた。


「死んだよな?」


黒ボアの件があるから警戒したが、ビックボアは完全に死んだようだ。


「これなら複数体でも問題ないかな」


強化を変えて消耗を気にしなかったら一撃で倒せそうなので、ビックボアが複数やってきても問題は無いだろう。


「解体は…森の浅い所に行ってからにするか」


さすがにここで解体するのは少し怖い。だからビックボアをマジックポーチにしまうと、また森を歩き出した。そして、その後も何体かのビックボアを狩ってから森を出た。

この調子でビックボア主体の狩りを何日も続けた。

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