第47話 黒化
「ただいまー…」
森から出ると誰にも見つからないように家に帰った。血だらけなので人に見つかると変な勘違いで心配されそうだったからな。それと、父さんが庭に居なかったらもう家に帰っているのだろう。
「早かったわね。おか…どしたの!怪我は!?」
「ヌル!?どうしたその血は!?」
「とりあえず、綺麗にしてくれないかな?」
血だらけの俺を見て両親は今までに無いように慌てていた。それに対して俺は冷静に希望を伝えた。
「ウォッシュ」
「ありがと」
とりあえずこの血が怪我によるものでは無いと分かってくれたのか、母さんは生活魔法で俺の血を綺麗にしてくれた。
「怪我はここに牙が刺さっただけだから心配しないで」
「ヌルの話は後で聞くとして、今は装備を脱げ」
「あ、うん」
俺の話は無視された。俺が装備を脱ごうとしていると、父さんと母さんも手伝って脱がせてくれた。
「目立った外傷は腹の刺傷だけだな。他に痛むところは背中だけか?」
「よく分かったね」
どうやら、俺の立ち方がいつもと違ったことで木に激突した背中が痛いのも知られたようだ。
「背中は普通に曲がるな?この怪我なら普通の回復ポーションで大丈夫そうね。飲みなさい」
「わかった……うげっ…」
俺は母さんから渡された回復ポーションを飲んだ。そして、その口の中に纏わりつくようなどろどろ感と強い苦味に顔を顰める。口の中の不快感と引き換えに俺の腹のズキズキとした痛みと背中の鈍い痛みは無くなった。
ちなみに、回復ポーションは飲むだけでなく、怪我にかけるだけでも効果がある。ただ、それは1箇所限定のため、今回の俺のように複数の場所に怪我をしていたら飲まないと全てに効果は無い。
「それで何があった?普通のボアじゃあこうはならんだろ?」
「そうだね…」
回復して座った俺に父さんが質問してきた。俺は時系列順に黒ボアを連れて村に逃げようとしている冒険者に背中を押され、黒ボアを押し付けられたこと。そして、黒ボアを倒した後に黒ボアを奪い、口封じに俺を殺そうとしていたことも説明した。
「なるほどな」
「そうなのね」
俺の説明で両親は俺に何が起こったのかをほぼ完全に把握したようだ。
「黒ボアとやらは後で見せてもらうとして…冒険者の死体はどうした?」
「マジックポーチに入れてあるけど」
「それなら森で焼きましょう」
俺達は森の浅い場所に行き、装備を剥いだ冒険者達を母さんの火魔法で燃やした。
今回のことで別にどこかに報告とかいらないそうだ。結局、死人に口なしということらしい。ただ、今回は殺したが、殺さずに捕らえた場合は自警団や騎士団に連れて行き、事実関係を調べ、犯罪奴隷として売ることができるそうだ。そして、売値の大部分を貰うことができるらしい。まあ、今回はそんな余裕は全くなかったな。相手がどれくらい強いかも分からなかった。そして、今後も生きて捕える余裕はあまりないと思う。
ちなみに、死体を焼いた理由はスライムに捕食されるのが遅かった時に人間の死体はゾンビやスケルトンなどのようなアンデッドの魔物となるからだ。
「次は黒ボアとやらを出してくれ」
「うん」
庭まで移動し、俺は黒ボアを出した。
「…ビックボアの黒化途中か」
「そうね」
「黒化?」
まず、ビックボアとは普通のボアが大きくなって進化した魔物らしい。つまり、あのブラックボアというのはあの冒険者の戯言だったらしい。そして、黒化の説明は父さんからされた
「黒化とは稀に魔物の色が変わって1色に染まることだ。完全に染まり切った魔物はただ強くなるだけでなく、色が変わる前の魔物なら覚えられない身体強化や魔法なんかを使い出す。そのため、ランクも1、2ほど上がる」
ちなみに、今回の黒ボアはよく見ると、腹や角は黒では無いので、黒化途中ということらしい。黒化途中では特殊な力は使えないが、普通よりも力や生命力なんかは強くなっているのでビックボアがDランクなのだが、今回の黒化途中のビックボアはD+からC-ランクらしい。ただ、完全に黒化していたらCランク以上になっていたそうだ。
また、今回のような黒化途中の魔物を半黒化、完全に黒化した魔物のことを全黒化とも言うらしい。さらに、色も黒だけでなく、赤や白何かに染まる赤化や白化などもあるので、それらの魔物が色に染ることを彩化という。
「通りで首を斬ったのに向かってくるわけだ」
今回、首を深くまで斬ったのに立ち上がって突進していたのは半黒化して生命力が高くなっていたからのようだ。
「それじゃあ、一緒に解体するぞ。半黒化でも普通のビックボアの何倍も高価で取引されるぞ」
「やった!」
俺の狩った魔物の素材を売ったお金は俺の冒険者資金として貰っている。今回のこの魔物でかなり溜まりそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます