第40話 初の狩り終了
「いきなり石を叩いた時は何をしてるんだとびっくりしたぞ」
「ああ、あれは静かに近付いても俺じゃあ攻撃する前にバレそうだったからね。近くに敵が居ると知って焦ったボアがどんな行動するか分からなかったから、それならいっそ遠くで気付かせた方がいいかなって」
ボアの主な攻撃手段は突進による牙での攻撃だ。とはいえ、攻撃手段がそれだけというわけではないだろう。俺はボアに初めて会ったし、何なら魔物自体とこんな近くで会うのも初めてだ。だから近くで急に奇想天外な行動を取られたら対応できないと思った。そのため、わざと気付かせてボアの十八番の突進をしてもらったのだ。突進ならボアが動き出してからある程度時間の余裕もあるしな。
「ちゃんと考えを持って行動したんなら言うことなしだ。狩りには成功しているしな。ただ、基本的には不意をついた方がいいことの方が多いぞ」
「分かった」
ボアという弱い魔物だから今の俺の行動でも良かった。だが、これが強い魔物だったら不意をついて一撃入れることによるダメージが戦闘を続けると後々大きくなるそうだ。
「それにしても意外と弱かったな」
俺はすぐ下に横たわるボアを見下ろしながら率直な感想を言う。ボアに攻撃したあとの追撃まで考えていたのに一撃で終わってしまった。
「ヌルが特訓で強くなっているからそう思うのも分かるが、それは少し違うぞ。今回はボアが1体だったが、もしボアが3、4体…もっと大勢だったらどうする?」
「あっ…」
俺は自分の認識の甘さを自覚した。
ボアが同時に突進してきても2、3体くらいなら大鎌と魔法と駆使して何とかなると思うが、それよりも多くなると無傷で倒し切れると断言できない。
「それが分かれば大丈夫だ。だからこの先も油断しないようにな」
「うん」
父さんは俺の頭を乱雑に撫でながらそう言う。俺もその助言を心に留めておく。
「さて、次は解体だぞ」
父さんはそう言うと、ボアの横にしゃがみ込んだ。
「場所によっては魔物が出ないような場所まで移動してから解体したり、面倒ならそのまま持って帰って冒険者ギルドに預けるでもいい。だが、ここには強い魔物も居ないし、ここで解体するぞ。教えるからよく見ておけ」
「うん」
俺はそれから父さんが小刀で解体するのを教わりながら見ていた。ちなみに、解体は自分の取得している武器スキルの武器でなくても良いらしい。ただ、人によっては使い慣れたいつもの武器での方が解体しやすいと感じる人もいるそうだ。
「さて、解体も終わったし、次を探しに行くぞ」
「うん!」
父さんは解体したボアをマジックポーチに入れた。
マジックポーチとは魔導具と呼ばれる魔石や魔法などを使って作られるものだ。この父さんの持っているマジックポーチは見た目の小さい袋からは想像できないほど大きいものも仕舞うことができるのだ。
ただ、元々高ランクの冒険者だから持っているらしいが、手に入れるにはかなりのお金が必要になるらしい。
「次は…ゴブリンだな」
再び歩き出して数十分で2体のゴブリンを見つけることができた。ゴブリンは食べることができないが、人を攫ったりと厄介という習性があるので、見つけたら討伐することが推奨されているらしい。また、冒険者ギルドには常にゴブリンの依頼は用意してあるそうだ。
「じゃあ、俺がやるよ」
「おう」
ゴブリンも俺が相手することにした。2体程度なら魔法もあるから問題は無い。俺はまた身体強化と氷身体強化をすると、近くの石を叩いて音を出して俺に気付かせる。
「「グギャギャ!」」
俺に気付いたゴブリンは変な何声を上げながら2人揃って向かってくる。ゴブリンで警戒しないといけないのはその手に持っている棍棒だろう。どこで拾ってきたのか知らないが、ゴブリンは大体何らかの武器を使うそうだ。
「「ギャ!!」」
近付いてきたゴブリンが振り下ろしてきた棍棒を余裕を持って躱す。
「はあっ!」
そして、前のめりになったゴブリンの首を2体同時に飛ばして戦いは終わった。
「ゴブリンはこのままでいいんだよね?」
「ああ。問題無いぞ」
冒険者として依頼を達成するためには討伐証明となる耳などがいるらしいが、別に冒険者ギルドに届ける訳では無いから何もしなくて良い。
また、放置した死体もこの程度の量ならスライムという魔物が食べて綺麗にしてくれる。スライムという魔物は水色の水球のような姿で、死体やゴミなどを好んで食べる性質がある。生きている人に害がない魔物なので、ランク外となるFランクと認定されている。
「じゃんじゃん行くぞ」
「おう!」
その後も森を進み、最終的に今日は追加でボア1体とゴブリン3体が見つかった。それらは今度は魔法も使いながら危なげなく俺が狩った。
こうして、初の魔物討伐は終わった。ちなみに、ステータスを確認してもレベルは上がっていなかった。この日から父さんが狩りに行く時は毎回俺も着いて行くようになった。
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