第36話 イベント
「久しぶりだな!大きくなったな!」
「うわっ!」
俺は突然後ろから話しかけられた。その声には聞き覚えがあるし、気配もなく後ろから話しかけられることにも覚えがある。
「シア父さん!」
「相変わらず気配感知はできてないようだな」
俺の後ろにいたのはシア父さんだった。
今日はシアの父さん、母さんとルイの父さん、母さんの4人がやってくる日なのだ。父さん達は王都に行ったふた家族と文通していた。だからこそ、今日この村にやってくると約束していたのだ。
「シアとルイは……少し学校忙しいみたいで来れないらしいわ。すまんな」
「別にいいよ」
ちなみに、俺はシアとルイと文通はしていない。何となく、次に再開した時の約束をしているので、手紙を送るのが気恥ずかしかったのだ。もちろん、送ってきたら送り返すつもりだったが、2人も同じ気持ちだったのか送ってこなかった。だから2人とは全く交流は無い。まあ、両親は手紙で2人の動向ことも少し知っているらしいが、聞いてはいない。
「なんでヌルはこんなとこに居たんだ?」
「迎えに来たんだよ!」
俺がシア父さんから声をかけられた場所は村の入口付近だ。そこで4人がやってくるのを待っていた。
「そろそろ3人も……ほら来たぞ」
ちょうどタイミングよく、3人の姿もここから見えた。
「急に先に行くっていったが…」
「ああ!ばっちり成功したぜ!」
「はあ…」
「ふふふ…」
どうやら、シア父さんが先行してやってきたのは俺にイタズラを仕掛けるためだったようだ。それを知り、シア母さんがため息を吐く。
「ご飯を用意しているので、どうぞ!」
「疲れてたんだ!早く行くぜ!」
4人は途中までは馬車で来たそうだが、最後の都市からは歩いてきたそうだ。
俺の家に招待すると、父さん達との再会もよろんでいた。そして、その日はもうそこからは大宴会を行った。
そこには3年前はよく見ていた懐かしい光景であった。そうなると、この場にシアとルイが居ないことが少し寂しく思ってしまう。ただ、2人は2人で頑張っているのだから仕方がない。
「さて!ヌルがどれだけ強くなったか見てやるぜ」
「ふふっ!」
そして、次の日の朝はシア父さんが特訓に付き合ってくれることになった。
「油断するなよ」
「うん」
父さんはニヤニヤしながらそう助言してくる。もちろん、父さんと同じくらい強いのだから油断はしない。
ちなみに、この場にはみんな集まっていて、俺達を見ている。
「始め!」
「身体強化」
俺は父さんからの始めの合図で身体強化を発動する。そして、一直線にシア父さんに向かっていく。
「はあっ!」
「おお…!これは強いな」
俺の大鎌をシア父さんは逆手で持っている左手のナイフで簡単に止める。
「ふっ!はっ!」
「動きもいいな。よく鍛えられてるぞ」
シア父さんは両手に持ったナイフで俺の大鎌を意図も簡単に受け流している。いつも父さんは受け止めているからこの受け流されるという感覚は初めてだ。
「轟け!サンダースピア!」
「おっと」
俺はそのまま至近距離で魔力を抑えた魔法を詠唱して放つ。その魔法は俊敏なシア父さんは簡単に避ける。
「聞いてはいたが、実際にこう戦っている最中に魔法を使われると恐ろしいな」
「そう思うなら少しは食らってよ!」
とは言いつつ、シア父さんが魔法を食らうことがないだろうと予想していた。両親から俺の話は聞いている以上、魔法は必ず警戒するだろう。
その後も雷魔法や氷魔法を何度か放つがそれらは全て避けられた。
闘力も魔力もかなり少なくなったから仕掛けるならこのタイミングしかないだろう。
「…雷身体強化」
「おっ…!」
俺は身体強化を弱くして、雷での身体属性強化を行う。俺が急に速くなったことにシア父さんは驚いた反応をしているが、この程度では対した問題では無いだろう。
「轟け!サンダーボール!」
「っ!」
シア父さんが速くなった俺の対応に困っている間に俺は即座に魔法を詠唱して放つ。しかし、その程度ではシア父さんは避けるだろう。
「闇れ」
「っ!?」
避けようと1歩横に動いたシア父さんの足を地面に固定するために地面から俺のストックしていたダークバインドが放たれる。
「暗がれ!ダーク…」
そして、俺はそんなシア父さんに大鎌を振りながら魔法を詠唱を始める。これでんサンダーボールが外れても大鎌か闇魔法で攻撃をするつもりだ。
「しっ!」
「があっ…!」
しかし、気が付いたら俺は首を片手でシア父さんに掴まれて足が地面に着いていなかった。
「おっ!大人気ないぞ!」
「あっ!ご、ごめんな!」
「けほっけほ…大丈夫…」
シア父さんはハッとなったように慌てて手を離し、謝ってきた。ルイ父さんからの野次を聞いて、喉を強く掴まれたことで詠唱は途中で止まったが、別に俺に実害があったわけではないから大丈夫だ。
それにしても、最後のシア父さんの動きは全く見えなかった。やはり、シア父さんに勝つのは無理だったな。
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