第32話 本物の武器
「準備はいいか?」
「うん」
12歳となった誕生日に俺はルイ父さんに作ってもらった本物の大鎌を握り、父さんと向かい合っている。父さんと特訓する時はいつもだったら動きやすい服装だったが、今回は魔物の革で作った防御力が少し高い服と革の防具の中間のようなものを着ている。だからいつもと比べたら少し動きずらいが、まあこれくらいなら大丈夫だ。
余談だが、12歳になる少し前にある1つのスキルのレベルが上がった。そのスキルは隠蔽である。隠蔽は常時使っているスキルなのでこんなに早くスキルレベルが上がるのも納得できる。
「じゃあ、始め!」
「身体強化!」
父さんが俺の準備が完了しているのを確認すると、打ち合いを始めた。俺は早速身体強化を使い、父さんに向かっていく。
ちなみに、身体属性強化は使わない。その理由は父さんを舐めているとかではない。シンプルに使う必要があまりないのだ。氷の身体属性強化ならまだ意味があるが、他の身体属性強化では身体強化と同時に使っても全力の身体強化に毛が生えた程度しか強くないのだ。それは同時に2つを全力で使えないことに起因する。
「はあっ!」
俺は父さんに近付くと、大鎌を振る。父さんはそれを当然のように防いでくる。それを予想していた俺は何度も大鎌で攻撃していく。
「…木鎌よりも全然攻撃が重いな。かなり強いぞ」
「それはありがと!」
父さんは冷静に分析して褒めてくれる。いつもの木鎌よりも大鎌自体の重量が増したから攻撃も重くなったのだろう。
それにしても、父さんは俺が両手で全力で振っている大鎌を片手に持った鉄剣で簡単に防いでいる。そんなつもりは全くないのだろうが、少し煽られている気になってしまう。
「ふっ!」
「…!」
ついに父さんが反撃してきた。最初は凄く簡単に防げる攻撃だったのだが、そこからどこまで防げるかを確認するかのように段々と攻撃の鋭さが増してくる。
「くっ…はあ!」
「ほう」
俺は父さんの突きの攻撃をジャンプして避け、その鉄剣を蹴るように踏んで、父さんに迫る。そして、父さんの顔面に蹴りを入れる。もちろん、その蹴りは父さんの片腕で防がれる。しかし、これで俺は父さんに両手を使わせたことになる。俺はそこで深入りせずに顔の前にガードとしておいた父さんの腕を蹴って離れる。
「なんだ、いつもと比べて随分慎重じゃないか」
確かにいつもなら今の場面でも木鎌で攻撃していただろう。しかし、今日は訳が違う。下手に父さんからの攻撃を食らったら一撃でノックアウトだ。だから安全にいかなくてはならない。
「確かに安全第一は大事だな。だが、そんなんじゃ俺に攻撃することは不可能だぞ?」
「……」
俺の目標はいつでも純粋な魔法無しで父さんに一撃を入れることだ。だが、今の安全第一ではそれは絶対に叶わない。
「それに今日はヌルがどう動こうが絶対に1発食らわせる予定だからな」
「くぅ…!」
父さんはそう言いながら俺に向かってきて攻撃し続けてくる。その攻撃は言葉通り俺に当たるまで止まらなそうだ。
「だったら…!」
父さんの攻撃はいつかは必ず当たるだろう。スタミナが父さんの方が多い以上、それは時間の問題だ。父さんが俺に攻撃するつもりならそれは覆らない。だから攻撃を食らうことはもう許容しよう。その代わり、タダでは食らわない。
「ふっ!」
俺は父さんの腕が伸びきった瞬間に父さんの懐に潜り込む。
「はあっ!」
そして、右下から左上へと大鎌を振る。父さんには背中を攻撃されるだろうが、その代わり俺も父さんを攻撃する。
「柄の長い大鎌で特に策なく、懐に入るのはダメだぞ」
「あっ!」
俺の大鎌の柄を父さんは踏むように抑える。大鎌を振り始めて間もないので、まだ勢いがついていなく簡単に止められる。いつもより重かったことで大鎌を振る速度が遅くなっていたのだ。そこまでは頭になかった。
「がはっ!」
そして、俺の背中に衝撃が走る。父さんが俺の背中に鉄剣を当てたのだろう。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫…」
一瞬息が止まったが、父さんは加減してくれているので打撲程度済んでいる。
「まだやるか?」
「も、もちろん!」
俺はまた父さんに向かっていく。闘力が少なくなって身体強化ができなくなると、身体属性強化を使って父さんと打ち合った。この日は父さんから3度攻撃を食らった。
次の特訓から攻撃を食らう回数を少なくしたかったが、次からも同じくらいの数の攻撃を食らうことになった。
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