第30話 お試し無属性魔法

「よし、じゃあ無属性魔法を試してくれ!」


「うん」


昼ご飯を食べ終え、残り1つとなった未使用のスキルである無属性魔法を試す。ただ、実際に使う俺よりも父さんがウキウキしている気がする。


「えっと…ん?」


午前の2つのようにまずは無属性魔法を使おうとした。しかし、俺は首を傾げる。


「何かあったのか?」


「えっと…やれることが多い?」


使うのが闘力というだけで普通の魔法と変わらないと思っていたが、どうやら少し違うようだ。


「まあ、とりあえず試してみろよ」


「わかった」


父さんに急かされて俺はまずは無属性魔法を使ってみることにした。


「斬れ!スラッシュ!」


俺がそう唱えながら木鎌を振ると、木鎌の刃のある部分から身体強化の時と同じ半透明の白い斬撃が放たれた。その斬撃は木に当たると、木の半分程の切れ込みを入れる。


「おおっ!」


「…凄いわね」


その様子を見て両親は驚いたように目を見開く。

ただ、驚くのはまだ早い。俺はもう1度無属性魔法を使う。


「撃て!アタック!」


今回も先と同じように魔法を唱えながら木鎌を振る。すると、今度は木鎌から顔よりも一回り大きいくらいの弾が放たれる。その弾はまっすぐ木に向かっていき、木に当たると木の幹を抉る。しかし、まだこれで無属性魔法は終わりでは無い。


「守れ!シールド!」


間髪入れずにそう唱えると、俺の胴体程の大きさの薄い板が俺を守るように現れる。


「……ふんっ!」


「ちょっ!」


父さんはそのシールドを興味深そうに見ると、いきなり殴ってきた。俺は慌てて木鎌で防ごうとしたが、木鎌に当たる前にその前にあるシールドによって防がれる。


「ヌルが悶絶するくらいの威力で殴ったが、それでもヒビが入る程度だから耐久力にも優れているな」


「試すにしてもいきなりはやめてよ!」


俺に断りもなくシールドの耐久を試した父さんに文句を言うが、父さんはどこ吹く風だ。


「はあ…とりあえず、今使えるのはこの3つかな」


俺は父さんへ文句を聞き入れてもらうのは諦めて、2人にそう報告した。


「それじゃあ、その3つをもっと試してみようね」


無属性魔法でも母さんの様々な実験を行った。その結果、スラッシュの斬撃とアタックの弾、シールドの盾は闘力の量で大きさや形をある程度なら変えられることがわかった。ただ、現時点では最大で斬撃は2m、弾は1mほど、盾は俺の身体の大きさほどが限界だった。

鎌を一回転しながら振って全方位に斬撃を飛ばしたり、押しつぶせるほど大きい弾を放ったり、全身を囲って守れるシールドを生み出したりできればと思っていたが、それは無理だった。



「あっ!」


「どうかしたか?」


俺はここで1つ気になることができた。急に声を上げたのを不思議そうにしている両親を無視して俺は早速思い付いたことを行う。


「無属性付与」


俺は無属性魔法で付与魔法を使った。無属性魔法を使ったことがなかったのでさっきの付与魔法では行っていなかったが、今ならいける気がした。


「せ、成功した!」


結果、俺の実験は成功した。俺の木鎌は身体強化と同じモヤを纏っている。ちなみに、無属性魔法を付与すると、魔力は消費されず、闘力だけが消費された。


「はいっ」


そんな俺を見ていた母さんが薪を投げてきた。俺はそれを木鎌で切った。


「…え?」


なんと、薪が真っ二つに斬れたのだ。木鎌には刃などないので普通なら斬れるわけが無い。それは木剣を持った父さんにだって不可能だ。つまり、これは無属性魔法を付与したからだろう。


「少し調べましょうか」


それから両親、主に母さんと無属性魔法の付与魔法を試した。



「どうやら、無属性魔法の付与は武器の斬れ味を増加させるみたいね」


「うん」


その結果、無属性魔法の付与には斬れ味増加の効果があるのがわかった。



「これで全部試し終わったな」


「そうだね」


これでもう俺が使ったことの無いスキルは無い。


「明日からは俺達のどちらかが見てはいるが、ヌルは1人でそのスキルらを使いこなせるようにならないといけないぞ」


「わかってるよ」


一応安全のために両親のどちらかが見てはくれるが、今日試した3つのスキルを両親は取得していないから何も教われない。だから俺が1人で頑張るしかないのだ。

俺は次の日からその3つのスキルを重点的に取り組み、使いこなせるように特訓を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る