第29話 お試し付与魔法
「次は付与魔法だな」
「うん」
身体属性強化を試し終わったので、次は付与魔法を試してみる。無属性魔法を先に試さなかったのはまだ闘力が回復しきっていないからだ。まあ、身体属性強化で魔力も消費しているけど、魔力の方がまだあるからね。
「うーんと…」
どうやら付与魔法は武器に使うもので、俺の取得している魔法の属性を付与できるようだ。だから俺はまず木鎌を握る。
「雷付与」
まずは雷魔法を木鎌に付与する。付与魔法を使うと、手から木鎌に魔力が移ったのを感じた。
「わっ!わわっ!!」
「「ヌル!?」」
魔力が移りきると、木鎌がバチバチという音と共に雷を纏った。雷は柄の先まで纏ったので、思わず慌てて放り投げるように木鎌を手から離してしまった。
少し離れてそれを見ていた両親は心配そうに俺に駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫。びっくりして離しちゃっただけで特に手がどうかなっているわけじゃないよ」
改めて確認したけど手は雷で痺れていない。また、木鎌も雷で焦げていたりしていない。付与魔法で付与した雷では俺の武器や身体に影響はないようだ。
「もう1回やって見る」
俺は手放した木鎌も掴むと、もう1度雷の付与魔法を使う。やはり、手に当たっている雷は特に何も感じない。
「父さん、ちょっと触ってみてくれない?」
「あ、ああ…」
現状、付与魔法の効果がわからない。だから父さんには悪いが、少し付与されている雷を触ってもらう。父さんは恐る恐る手を木鎌に近付ける。
「ほわっ?!」
そして、もう数cmで木鎌に触れるというところで父さんは変な声を上げて手を引っ込める。
「一瞬ビリッとしたぞ。俺の防御の数値だからダメージは無かったけどな」
特にダメージを受けたわけでないが、びっくりして手を引っ込めたらしい。詳しく聞くと、静電気でビリッとした感じに近かったらしい。
「次はこの木を切ってみて」
「うん」
母さんがどこからか持ってきた薪を取り出してそう言った。母さんは俺が鎌を構えると、ヒョイっと俺に投げてくる。俺はそれを木鎌で切る。もちろん、木鎌なので、薪は全く切れることなく、少し飛んで行って地面に転がる。
「うん、薪は少し焦げてるね」
「ほんとに?!」
どうやら、俺の木鎌が触れた場所が少し焦げているようだ。つまり、雷を付与すると雷魔法に当たったかのようなダメージも与えることができるのか。
「やっぱり付与魔法は武器に魔法を纏わせるみたいだね」
どうやら付与魔法は武器に自分が取得している魔法を纏わせることができるようだ。
「あっ、消えた」
なんて色々試していたが、付与された雷が勝手に消えた。
「時間制限がある感じね。それはスキルレベルが上がれば制限時間も伸びるかも」
目算で時間制限は1分だそうだ。ただ、さっき手を離した時のように自分で切ろうと思えば1分待たずに切ることができるようだ。ただし、時間いっぱいまでやろうが、1分待たずに切ろうが消費する魔力の量は変わらない。
「他の属性も試そうぜ」
「うん」
それから氷属性と闇属性での付与も試してみた。
氷の付与だと、柄に薄く氷が張り、刃のあるであろう部分は白色の冷気を放っていた。そして、薪を切ると、薪の周りに氷が張った。また、父さんが手を近付けると父さんの指には軽く霜が降りた。
氷の付与はおおよそ予想通りだった。だが、問題は闇の付与だ。
「何もならないな」
「…だね」
闇の付与をすると、木鎌が見えなくなるほどの濃い闇に覆われた。しかし、問題はだからといって他に変わった点が無いことだ。薪を切ろうが、父さんが闇を纏った木鎌を掴もうが何も起こらない。
「うーん…こればっかりはゆっくり試していくしかないな」
「それしかないね」
その後も魔力が無くなるギリギリまで闇の付与を試したが、結局何もわからなかった。闇の付与は今後も試していくしかない。
それからまた少し試したが、身体属性強化と同じく、2つの属性を付与することはできないようだ。
「そろそろ昼だし、昼飯を食おうぜ。そうしたら次は無属性魔法を試そうか」
「わかった」
もうお昼ということで午前の特訓はここまでで終わった。お昼ご飯を食べたら午後の特訓で無属性魔法を試そう。今日は午後の特訓でも両親が居てくれるので、試したい放題だ!
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