第28話 お試し身体属性強化

「新しい特訓なんだが、もう俺達が教えることは無いんだよ」


「え?」


鬼ごっこが早くに終わったので、家族3人で少しのんびりしていると、父さんがそう言ってきた。


「だって、ヌルのその3つのスキルは私達も見たことも聞いたこともないのよ」


「な、なるほど…?」


つまり、わからないスキルだから教えようがないということか。


「まあ、遅かれ早かれヌルは自分なりでスキルの使い方、戦い方を決めなきゃいけないからな」


人によってステータスの数値もスキルの種類も体格も考え方も違う。だから自分なりの戦い方を見つけないといけないそうだ。


「その点、ヌルは戦い方の自由度は誰よりもあるはずだぞ」


「そうだね」


俺は物理職と魔法職のステータスを持っているから他の誰よりもやれることが多いと思う。だからできる戦い方も他の人よりも遥かに多いだろう。


「どうせ時間が余っているのだから今からまだ使ったことの無い残りの3つのスキルをとりあえず試してみたら?」


「それがいいかもな。今は俺達が揃っているから大体のことに対応できるし」


「ほんと!よしっ!」


俺は2人の話を聞いて急いで木鎌と木刀を取りに家に向かった。そして、両親を急かして人目の付かない家の裏の林に入った。これで魔力も自由に使える。



「じゃあ、身体属性強化からやってみてくれ」


「うん!」


俺は父さんに言われて身体属性強化を行おうとする。すると、雷、氷、闇の3属性で強化ができるとわかった。


「雷身体強化」


まずは雷での身体属性強化を行ってみる。


「おお!?」


雷の身体強化を行うと、俺は体の周りに身体強化の時のようなモヤを纏った。ただ、身体強化と違うのはその色が半透明の白色ではなく、薄黄色だということだ。


「やっぱり身体強化の魔力版ね。強化のほどはどんな感じ?」


俺の様子を観察していた母さんからそう聞かれた。俺は少し体を動かして確かめてみる。


「攻撃は…少し、防御も少し。でも…速っ!」


感覚的に攻撃や防御の強化は身体強化の1段階目くらいだが、敏捷に関しては身体強化の3段階目ほどあると思う。


「なるほど…他の属性も試してみましょう」


「うん」


それから氷と闇での身体属性強化も含めて色々試してみた。

その結果、氷はモヤの色が半透明の薄水色で攻撃と敏捷が身体強化の1段階目くらいだが、防御は身体強化の3段階目ほどあった。

また、闇はモヤの色が半透明の薄黒色で敏捷と防御が身体強化の2段階目くらいだが、なんと攻撃に関しては身体強化の3段階目よりも強い。ちなみに、これらは全力で身体属性強化を行っている時である。まだ身体強化ほど段階に分けることはできないが、多少の強化の強弱をかける事はできる。



「つまり、雷が敏捷特化、氷が防御特化、闇が攻撃特化ってことね」


「そうだね」


ちょうどそれぞれの属性で特化している場所のバランスが取れている。


「闇だけが他よりも強いのは魔法のスキルレベルに関係してそうだな」


「うん」


闇だけ他の属性よりも少し強化が強いのは闇魔法のスキルレベルが雷魔法と氷魔法のスキルレベルよりも高いからだろう。


「そうなると、身体属性強化のスキルレベルは何なんだって話しなるけど、もしかするとスキルレベルが上がると同時に複数の属性が使えるようになるのかもしれないわね」


試してみたが、同時に2つ以上の身体属性強化はできなかった。母さんの言った通り、スキルレベルが上がれば同時に強化できるようになるかもしれない。


「それにしても、普通の身体強化と同時にはできたのはよかったな」


なんと、身体強化と身体属性強化は同時に行うことができたのだ。まあ、できたと言うだけで、身体強化を使い始めたばかりの時のように強化されたステータスに体が対応できてなかったから全く使いこなせていないけど。ただ、動きに関する強化が弱い防御特化の氷の身体強化なら今でも身体強化と合わせても使えるかもしれない。ただ、その辺はまだ要特訓だな。

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