第26話 魔法の進歩
「暗がれ!ダークアロー!」
俺が闇魔法を唱えると、太さは落ちている木の枝程で、長さは肘から手くらいまでの短い矢のような魔法が3つ現れた。3つの矢は俺の意思で連続で放たれる。
「3発中2発ならまだまだね」
「くっ…!」
今の俺は動く的に魔法を当てる訓練を行っている。
ちなみに、鬼ごっこを始めてからもう1ヶ月が経過している。それでもまだ父さんに触れることはできていない。とはいえ、全く成長していない訳ではなく、スムーズな動きはそれなりにできるようになっている。しかし、そこからあと1歩が足りない。その1歩をどうするかは一応考えついている。
「一定の速さで動いてるんだからちゃんと当てないと駄目よ」
一定の速さで動くものなんて自然にはないと言っていいだろう。ならどうやっているかと言うと、母さんが火魔法で作った顔くらいの大きさのボールを空中で回しているのだ。
ちなみに、放つはずの魔法を待機させたり、自由に動かしたりするのにも魔力操作が使われる。今の俺の魔力操作の低レベルでは少しの時間待機させるのが限界でこんなに自由には動かせない。
「まっすぐ飛ばすだけなんだからこのくらいの距離なら百発百中じゃないと駄目よ」
「くっ…」
的までの距離は5mちょっと離れている。
もっと近くにしてと言ったこともあったが、そうすると的も小さくなり、結局やっていることは変わらなかった。むしろ、狙う場所が小さくなってやりずらかった。
また、本当の魔物はこの火よりも何倍も大きいが、魔物は不規則に動くので、これくらいの動く的なら百発百中くらいにならないとダメらしい。
「轟け!サンダーアロー!」
「やっぱり雷魔法の命中率はいいわね」
次に放った雷魔法は3発とも的に当たった。これはまぐれではなく、雷魔法ではほとんど100%命中するのだ。
「魔法の速度が関係してそうね」
魔法によって放たれてからの速度に違いが出る。俺の取得している魔法の中では雷魔法が1番早く、その次に闇魔法で1番遅いのは氷魔法だ。これはスキルレベルにも関係はしているそうだが、その属性の魔法本来の能力が大きい。まあ、そうじゃなかったらスキルレベルが高い闇魔法が雷魔法に速度で負けないもんな。
「そうなると、悪いのは魔法じゃなくて、ヌルの頭かもしれないわね。単純に魔法の速度と火の移動を計算できていないってことだから」
「うぐっ…」
確かに魔法は普通にまっすぐ放てている。それでも的に確実に当てれないのは俺の予測の甘さの問題だ。
「ヌルはきっと雷魔法を基準に少し遅く、もっと遅くって考えているのだと思うわ。だから、基準なんて設けず、とりあえず今日はいくら外してもいいから魔法ごとに速さをつかみなさい」
「わかった」
言われてみれば、雷魔法はこのタイミングだから、闇魔法はこの辺…という感じで考えていた場面もあった。しかし、唱えてから発動までの時間は闇魔法が雷魔法よりも少し早かったりするから上手く合わなかったのか。
「よしっ!」
俺は頭を横に激しく振り、手のひらで顔をパンっと叩くことで、気持ちを切り替えて気合を入れた。
今日はもう闇魔法だけを使う。そして、闇魔法で的に百発百中すれば次は氷魔法を完璧する。そして、全てが一応完璧になったら交互に色んな魔法を使ってやってみよう。
「うん。全部の魔法で的に当てるのは完璧だね」
「しゃっ!」
鬼ごっこを始めて5ヶ月が経ったと少し経った頃ようやく的に当てるのは完璧になった。
的に当てるときのやり方を変えて1ヶ月で闇魔法も氷魔法も的に当てることはできるようになった。しかし、それは1つの魔法を使い続けた場合だった。交互に使うようになったらまた難しくなった。
また、アローだけではなく、ボール系やスピアというそれぞれの属性でできた1本の槍を放つような魔法でも的に百発百中で当てれるようにさせられたため、思いのほか時間がかかった。
「もし、明日ヌルがお父さんを捕まえられたら次からは身体属性強化で、捕まえられなかったら付与魔法ね」
「ああ!」
まだ鬼ごっこは父さんを捕まえられていなかった。しかし、それは今日までのつもりだ。明日は本気で父さんを捕まえるつもりだ。そのための作戦も完璧のはずだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます