第24話 身体強化
「今日から身体強化を行っていく」
「うん!」
今日はこの午後の特訓で待ちに待った身体強化を行う。つまり、俺は今日で11歳となった。
「まずは俺がやるから見てみろ」
父さんはそう言うと、身体強化を使った。
「白…透明なモヤ?オーラ?」
身体強化を使うと、父さんは白く透けているモヤのようなものを身体全体纏った。
「これが身体強化だ」
「これが…」
今、父さんが纏っているものこそ闘力によって発動した身体強化らしい。
「身体強化中は攻撃、防御、敏捷が上がるのはもちろん、体力、反射神経などのステータスで見えない部分まで上がる」
「おお…」
身体強化は全ての身体能力が強化されるらしい。
「ヌルももう使えるだろうから使ってみろ。もちろん、最初は弱くすることを心がけろ」
「わかった」
俺は魔法を使う時に魔力操作を行う時のように弱く弱くと意識しながら身体強化を行う。
「で、できた…」
スキルがあるから身体強化はすぐに成功した。俺は父さんに比べたら少ないが白い透けているモヤを纏っている。
「まずはいつも通り手に持った木鎌で俺を攻撃してみろ」
「うん」
俺は父さんに言われ、いつも通り父さんに攻撃するために1本踏み出した。
「あだっ…!」
「地面に頭突きをしろとは言ってないぞ」
いつも通り、父さんの元に走ろうとしたが、足に力を入れて地面を蹴ったら勢いよく前回転して地面に顔をぶつけた。身体強化が弱かったから口の中に土が入るくらいで怪我とかは特にしなかった。
「身体が思うように動かないだろ?」
「う、うん…」
普通に歩いたりするのは身体強化中でも問題ないが、激しく動こうとするとどうしてもいつもと感覚が合わない。
「それが分かったら十分だ。それなら軽く走るぞ。木鎌を置いて付いて来い」
「わかった」
どうやら、最初に打ち合いのようにさせたのは俺がどれほど身体が上手く使えていないかいつもと比べさせることでわかりやすくするためだったのか。
俺は木鎌を置いて父さんの後ろを着いて走る。
「ちゃんと付いてこれるようだな」
「な、なんとか…」
足に力を入れ過ぎると前に居る父さんにぶつかりそうになるし、逆に力を抜き過ぎると父さんから離れてしまう。その絶妙なバランスを保つのが大変だ。
「いきなり全力を出させなかった訳は分かったか?」
「うん。これでもこんな調子なのに全力を出せたらまともに走れもしない」
今の身体強化は弱いので、まだこの程度の誤差で済んでいる。これを最大な強化でやったら下手するとその強化に負けて身体が変な風に曲がったりして怪我をしそうだ。
「ただ、ヌルが身体強化を使いこなせるようになればゴブリン程度には無傷で勝てるぞ」
「ほんと!?」
ゴブリンはEランクで最低ランクの魔物だ。しかし、群れる性質があるので油断はできない魔物らしい。また、上位種という進化したゴブリンが現れることが度々あるので、その点でも恐れられている。まあ、1番恐れて居るのは人間の女を犯し、孕ませることだけど…。
「そのためにも今は走るぞ」
「うん!」
今日は結局走るだけでその日が終わった。午後の特訓自体は1時間ちょっとで終わったことになるが、それには理由がある。
「かはぁ…こはぁ…」
それは俺の闘力が尽きたからだ。
「闘力が無くなると、そうなるから覚えておけ。そして、絶対に無くさないように注意しろ」
父さんは倒れて動けない俺を抱えながらそう言う。
闘力が尽きた瞬間、俺は身体強化を強制的に解除されて倒れ込んだ。そして、今まで体験したことの無いような疲労感が襲ってきた。もう話すことすらできなく、呼吸するので精一杯だ。とはいえ、身体が疲れているだけで頭は普通に働いている。
「まあ、ステータスが上がったらその疲労感も少なくなるが、戦闘中に疲労感がやってきたら大変だからな」
「かひゅ…」
こんな疲労感の中で魔物と戦うなんか想像したくもない。あ、でも魔法を使えばできなくもないかも?いや、動けないんだから普通に無理だな。
「まあ、魔力と同じく闘力を回復させるポーションなんかもあるからそれを飲めば解決するんだけどな」
「はひゅ…」
主に薬師という職業の者が作って販売している魔力ポーションや闘力ポーションというのは名前の通り、魔力や闘力を回復させてくれる。また、回復させるだけでなく、0になったことによる気持ち悪さや疲労感を一気に解消してくれるらしい。ただ、かなり苦くてあまり美味しくはないそうだ。
ちなみに、今日の訓練はこれで終わり、俺は夜ご飯も食べずに横なって朝まで眠った。
また、それからの特訓では闘力を切らさないように注意しながら父さんとランニングを行い、闘力が少なくなったら、身体強化無しで打ち合いを行った。
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