第22話 体術Lv.2
パンッ!パンッ!スパンッ!!
「ん?!」
今日は午前の勉強はちょうど区切りのいいところまで終わったということで早めに切り上げてくれた。だから空いた時間で丸太を攻撃していた。すると、手応えが少し変わった。
スパンッ!!スパンッ!!スパンッ!!
「やっぱり…」
気のせいかと思ってもう数発打ち込んだが、やはり感触も音もさっきまでとは違う。俺は緊張しながらステータスを見てみる。
「よしっ!」
予想通り、体術がレベル2となっている。今日の午後は父さんとの特訓なので、ちょうど良い。俺は嬉々として家に帰り、昼食を食べる。
「ヌル、木鎌と木刀を持ってきてるってことは…」
「ついに体術がレベル2になったよ!」
最近は使っていなかった木鎌と木刀を持って家を出たことで父さんに体術がレベル2となったことが知られた。
「5ヶ月でレベルが上がるとは大したもんだな」
「だいぶかかった気がするよ…」
なんと、体術のスキルレベルを上げるのに5ヶ月も費やしてしまった。ちなみに、その間に他のスキルを取得したり、スキルレベルが上がることは無かった。
「いや、自主練習と模擬戦だけと考えたら5ヶ月でスキルレベルを上げられるのは普通に凄いぞ」
理屈はわからないが、戦闘系スキルレベルを上げるには命の取引をしていた方が同じ時間練習するよりも格段に効率がいいそうだ。つまり、襲ってくる魔物などと戦いながらの方が良いらしい。
ちなみに、生産系スキルではどうなのかはわかっていないらしい。そのため、酔狂な職人はわざわざ魔物が出る森の中で生産系スキルを使ってスキルレベルを上げたりするそうだ。
「でも、もうすぐ11歳になるからもう少し前にレベル2にしたかったよ」
職業を授かってまだ1年は経っていないが、もう少しで俺は11歳となる。これは辺鄙な村だから纏めて行うため、翌年まで待たなければいけないからだ。
「まあ、そんなことは今は置いておいて、木鎌を持ってかかってこい」
父さんは剣の鞘を持つと、先端を俺に向けてそう言ってきた。
「じゃあ、行くよ!」
「来い!」
俺も体術のレベルが上がってどう変わるか気になっていたので、すぐに父さんに向かって走る。
「はっ!」
父さんは俺が近付くと伸ばした腕を少し曲げる。そして、素早く再び伸ばして突きを放ってくる。父さんと俺では身長差があるので、俺が腰を曲げて体を前に出したら避けられる。しかし、そんなことは父さんも分かっていた。鞘の先を斜め下に変えて、俺が低姿勢になろうとも確実に当てようとしてくる。
「ふっ…!」
俺は咄嗟の判断で鞘先を左肘で下から軽く小突いた。すると、鞘は俺の肘を撫でながら上へ方向転換した。これが剣なら俺の腕はズタズタだな。
「ふっ!」
そして、鞘が滑ったのを感じると、左手に持っていた鎌を肘を伸ばして振り上げた。
普通の剣ならその行為になんの意味もないが、俺が持っているのは木とはいえ大鎌だ。巨大さ故に肘を伸ばしたことで鎌の先が父さんの顎に迫る。
「おっと…」
父さんは驚きながらも危なげなく仰け反って鎌を避ける。俺は追撃のためにさらに右足を踏み込んだ。
「やっ!」
「おおっ!?」
俺は左手を鎌から離し、右手で鎌の柄の先を殴った。すると、鎌は俺の傍から離れて仰け反っている父さんの方に向かって行く。武器を手放すという行為に父さんは俺と戦っていて初めて焦ったような声を出す。
「とおっ!」
しかし、すぐに引き戻した鞘で鎌を弾かれる。俺は心の中で舌打ちをしながらまた数歩父さんに近付く。
「うぐっ!」
しかし、俺の攻撃が届く間合いに入る前に、父さんは足を振り上げた。避けられないと判断して腕をクロスにしてガードしたが、それでも1、2m転がり、腕もかなり痺れる。
「今のは意表を突くということに関しては良いアイディアだったぞ。少し本気で動いてしまったくらいだ。だが、サブの武器が無いのに、メインの武器を手放すのはダメだ。現にもし今鎌を手に持っていたら蹴りも鎌で防げたはずだ」
「うん…」
俺は腕を曲げ伸ばしして、痺れを取りながら鎌を取りに行く。鎌を手放して殴るのは良いアイディアだと思ったが、それで相手を倒せなかったら武器が無くて不利になるのは俺だな。
「だが、選択肢は増えたようだな」
「うん!」
前までは鎌を手放して殴るなど頭の片隅にもなかった。だが、その選択ができたということは体術をある程度使えるようになったということだ。
「もう満足したのか?」
「まだまだー!」
俺はそれからも何度も父さんに挑み、何度も攻撃を食らって地面を転がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます