第21話 レベル4の説
「大鎌術の他とは違う特殊な能力を詳しく話してくれる?」
「ああ」
夕食後の母さんの質問に父さんが答えた。とはいえ、現時点で分かっていることは最適な攻撃手段を半自動で選択できることくらいしかない。そして、それを聞き終えると、今度は闇魔法の特殊な能力を父さんに説明する。その後数分無言の時間が続いたが、母さんが口を開いた。
「なるほどね。レベル4の秘密が多分わかったわ」
「え!?」
「ほんとか!」
しかし、母さんにはその少ないヒントからレベル4スキルの謎について分かったようだ。母さんはその分かったことを話してくれた。
「どうやら、レベル4スキルは武器での攻撃と魔法での攻撃を両立させるためにあるようね」
「え?どういうこと?」
まだ武器と魔法を同時に使ったことの無いので、母さんの言っていることがよく分からなかった。父さんも同じようで首を傾げている。そんな俺達に母さんはもっと分かりやすく説明をしてくれる。
「まず、私は走りながら魔法を使うのは無理よ」
これは実戦の時の話らしい。例えば何も無い荒野で走りながら魔法を使うことはできるそうだ。しかし、実際に魔物と戦っている時に走りながら魔物を狙って魔法を使うことは母さんでも無理なんだそうだ。もちろん、しようと思ったことも無いそうだけど。
「走りながらでもそうなのに、武器で接近戦をしている時に魔法が使えるかしら?」
「「あっ」」
確かにそうだ。接近戦をしているということはただ警戒して走るよりも何倍も集中しなければならない。そんな時に魔法を使っている余裕は無い。
「それを改善できるのがレベル4のスキルよ」
「…半自動なら戦っている時の集中力も節約できるな」
「…ストックしてれば接近戦中でも詠唱要らずで魔法を使えるね」
母さんの言っている説には大きく納得できる。接近戦をしている最中に魔法を使うとした時に最低限必要なものがレベル4のスキルで揃っている。
「少し早い気もするが、ヌルに言っておくことがある」
父さんは母さんと一瞬目線を合わせると、俺の方を向いてそう言う。俺がそれに頷くと、続きを話す。
「ヌルは表向き物理職となっている。だから人前で魔法は使わないようにしろ」
「わかった」
俺はそれにすぐ了承する。母さんとの魔法の特訓だけやけに林に行くなと思っていた。的となる木がある所が林だからかとも思っていたが、やはり魔法を人目に付かせないためだった。
「そして、それは冒険者になってもだ」
「冒険者になっても?」
「そうよ」
冒険者になっても人前で魔法は使わない方がいいそうだ。それはただでさえほとんど使っている人のいない大鎌を振りながら、魔法を使う者がいたらすぐに広まるからだそうだ。物理職と魔法職の2つを併せ持つステータスを持っていると世間にバレたら貴族などからも声がかかり、満足に冒険者として活動できないそうだ。
「ただし、命が危ない、ここで魔法が使えたら…と思うことが少しでもあったら冒険者になる前だろうが、なった後でも迷わず使え。命と引き換えにしてまで隠すようなものでは無い」
「うん。わかった」
冒険者の中には高価なポーションやアイテムなどを使いたくないという気持ちで温存したせいで死ぬということもそれなりにあるそうだ。両親はそんな間抜けな真似を俺にはしてほしくないらしい。
俺もそんなことで死にたくないので、少しでも危ないと感じたら人前でも遠慮なく魔法を使おうと決める。
「他にも冒険者としての注意事項は色々あるが…それらはヌルがどれくらい強くなるかでどう言うかを判断しよう」
「強さによって注意の仕方があるからね」
どうやら、より詳しい注意などもっと強くなってからするようだ。
「あ、そうだ。ヌルにこれを見せようと思ってたんだ付いて来てくれ」
「ん?」
話が一段落したところで父さんはそう言って外に出た。父さんを追って俺と母さんも外に出る。そして、家の裏側までやって来た。
「これを見てくれ」
「これは?」
そこにあったのは地面に埋まった1.5m程で俺よりも少し大きい木の丸太だった。
「これはヌルが体術を練習する丸太だ。ここにこうやって!」
父さんはそう言うと、丸太に鋭い蹴りを入れる。
「蹴りを入れたり、殴ったりできる。もちろん、闇雲にやっても意味が無いから1発1発丁寧にやるんだぞ。魔力操作もひと段落したし、自主練習にいいだろ」
「ありがとう!」
確かにここなら部屋のロウソクの明かりが漏れているので、夜でも見える。これなら特訓以外の時間にも体術の練習ができる。
次の日から魔力操作の特訓は30分程度にし、他の暇な時間は丸太を殴ったり蹴ったりした。そんな日々が体術のスキルレベルが上がるまで続いた。
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