第20話 闇魔法

「暗がれ!ダークボール!」


俺は早速闇魔法を使った。そして、できるだけ魔力を抑えるために魔力の流れを止めようとした。


「え?」


すると、ピタッ!と魔力が全く動かなくなった。


「どうしたの?」


魔法の詠唱を唱えたのに発動しなかったのが不思議だったのか、母さんが少し心配そうにそう聞いてきた。


「いや…魔力を制限しようとしたら全く動かなくて」


「そんなことあるの………?いや…ヌルだけかも」


俺の言葉を聞いて母さんはぶつぶつの独り言話し、自分の中で答えを見つけたのか、俺の方に向き直った。



「とりあえず、体に異変は無いわね?」


「特に何も無いよ」


魔法が発動しなかったからと言って、体に何かおかしなことは無い。


「普通はどんなに魔力操作のスキルレベルを上げようと、魔法を使おうとしてるのに使わずに止まるってことは無いはずなのよ」


つまり、今の現象は闇魔法が奇才を超えたことで生まれた現象なのかもしれないのか。


「じゃあ、今度はほんの少しだけ魔力を流すイメージで闇魔法を使ってみて」


「うん」


俺は手のひらを的の木に向けて少しの魔力で闇魔法を使おうとした。


「あっ」


俺のそんな間の抜けた声とともに、拳より少し小さいくらいのダークボールが俺の手のひらから放たれ、的に向かっていった。そして、的に当たったダークボールは木の幹を少し削った。


「…今、詠唱してないわよね?」


「うん。何か少しの魔力を使って闇魔法を使おうとしたら勝手に出た」


闇魔法を使おうとしたら詠唱する前に勝手に放たれた。



「…今度も少しの魔力で闇魔法を使ってみて」


「うん」


俺はまた闇魔法を使おうとする。今度は詠唱しないと出ない気がしたので、普通に詠唱する。すると、さっきと同じくらいのダークボールが放たれる。


「もう1回」


「ダークボー…「ストップ」ル?」


母さんはもう1回と言ったのに、詠唱中に急に止めるように指示してきた。俺は慌てて魔力を動かすのを止める。


「ふぅ…ちゃんと止まった。急に止めるように言われても難しいよ」


あと少し遅かったら普通に闇魔法を放ってしまっていただろう。


「普通は詠唱中に自分の意思で魔法を止めることはできないわよ」


「え?」


詳しく聞くと、詠唱中に攻撃されたとか、口を塞がれたとかの外部からの要因で強制的に詠唱を止めることは可能だが、自分の意思で詠唱途中の魔法を止めることはできないらしい。


「ここからが重要よ。もう1度闇魔法を使ってみて」


「うん…あっ」


さっきと同じように闇魔法を使おうとすると、勝手に手から放たれた。


「…大体どういう原理かは分かったわ。もう少し詳しく調べましょうか」


それからは母さんに指示に従って闇魔法を何度も使った。そして、最終的に俺の闇魔法の原理が分かったのは夕方になった頃だった。



「闇魔法に限り、魔法を1つだけ発動状態でストックできるようね。そして、ストックに魔力を使わなかった時は魔法を放つ時に魔力をどれくらい消費するかは選べて、ストックする時に魔力を使っていたらその消費魔力の闇魔法が放てるのね」


どうやら、俺の闇魔法は1つに限り何時でも放てる状態にしておくことが可能のようだ。

ちなみに、ストックする時の2つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがある。

まず、前者ではその時に応じて必要になる魔力を使って闇魔法が放てる。しかし、ストックの闇魔法を使った時に魔力が消費されてしまう。

後者では逆に、ストックする時に魔力を使うので、闇魔法を使った時には魔力は消費しない。しかし、闇魔法の威力はストック時に決まってしまい、その場で調整することはできない。


「ストックしている時はストックを消費しないと闇魔法が使えないのが少し難点だけど、他の魔法は普通に使えるし、かなり役立つ能力ね」


ストックをしている時は新しく闇魔法が使えないが、雷魔法や氷魔法は普通に使える。


「レベル4の謎も少し予想着いたし、とりあえず家に帰りましょ」


「うん」


俺は新しく闇魔法も使えて、普通には無い能力も持っていたということでニコニコしながら家に帰る。

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