第19話 魔力操作

「あっ!」


俺がそんな叫びをあげたのは素手のみでの戦いが始まって2週間が過ぎた日の夜だった。つまり、魔力操作のスキル取得を目指してから1ヶ月と2週間が経過していた時だ。



「ステータス!」


俺は自分のステータスを見るためにそう唱える。ちなみに、「ステータス」とだけ言えば自分だけが見れる。


「よっしゃー!!魔力操作取得したぞー!」


ステータスを確認すると、魔法スキルの場所に魔力操作Lv.1という文字が浮かんでいた。俺はそれが嬉しく、両腕を上に伸ばし、大声で叫んだ。

日々少しずつ魔力が動くようになっているのは実感していたが、今になって急に遮っていた壁を破壊して水が一気に流れた時のようにぬるぬると魔力が動くようになった。

それにしても、新しくスキルを取得してもステータスを授かった時のように頭の中で何かが浮かんでくるということは無いのか。ステータスを確認するまで分からないもんなんだな。


「夜遅いんだから静かにしなさい」


「あっ…ごめんなさい」


俺の寝室に入ってきた母さんに注意されてしまった。つい、叫んでしまったが、今は日課の寝る前の魔力操作の練習中なので夜もそれなりに深けている。シアとルイがもう住んでいないので、すぐそばに家がある訳では無いが、静かにはした方がいいだろう。



「でも、まあおめでとう。こんなに早く取得できるとは思っていなかったよ。毎日ちゃんと努力したかいがあったね」


「ありがとう。ルイに負けるわけにはいかないからね」


この1ヶ月と2週間は毎日寝る前に長くて2時間、最低でも30分程度は魔力操作の特訓をしていた。その努力が身を結んだのはとても嬉しい。しかし、まだルイのスキルレベルには追い付いていない。まだまだ努力は欠かせない。


「でも、本当に凄いと思うわよ。最初に荒い方法を取ったとしても、普通は生活魔法を使って取得するのにね」


そう、普通は魔力操作を生活魔法を使って取得するものらしい。魔力操作で消費される魔力は1なので、何度も繰り返し使えるのだ。また、生活魔法は家でも気軽に使えるのもいいだろう。だから普通は生活魔法を繰り返し使うことで魔力の動きを学び、自由に動かせるようになるらしい。しかし、俺には生活魔法は無いので、魔法を使ったり地味な瞑想のような形でやるしか無かったのだ。



「明日の魔法の特訓では闇魔法を使ってみましょうか」


「ほんと!?」


俺は両親からの指示でまだ早いからと使ったことの無いスキルが5つある。その1つが闇魔法だ。しかし、その闇魔法はやっと解禁となった。

ちなみに、禁止とされているスキルも最低でも12歳で全て使わせると言われてもいるので、隠れて使うようなこともしていない。下手に使うと怪我をすると言われているしな。でも、正直めちゃくちゃ使いたくはある。


「だから、今日は早く寝なさい」


「わかった!」


俺は今日の特訓をこれで終わりにして明日に備えて早く寝ることにした。




「じゃあ、魔法の特訓を始めるわよ」


「やっとだ!」


午前の勉強を乗り越え、やっと魔法の特訓がやってきた。ここまでを覚えないと魔法の特訓を遅らせるとか言われたせいでかなり集中していつも以上にやらされてしまった。


「じゃあ、まずは魔力操作で使う魔力を抑えながら雷のボールを使ってみて」


「轟け!サンダーボール!」


俺は母さんの指示に従ってできるだけ流される魔力をできるだけ防ぎながらサンダーボールを木に向かって放った。


「おお!」


すると、俺の放ったサンダーボールは今までよりも、ふた周りほど小さかった。そして、木に当たった時の威力も少し減っている。また、ステータスを確認すると、魔力が4しか消費されていない。


「魔力を制限することで普通よりも威力を落とすことができるのよ。次は氷魔法で逆に魔力をいつもよりも送り込んでみて」


「凍てつけ!アイスボール!」


今度は逆にいつもよりも魔力を送り込んで氷魔法を放った。


バキッ!ドンッ!


「まじか…」


俺の放ったアイスボールはいつものふた周り大きく、その威力は増していた。現に今俺が的にした木は俺の魔法が当たった場所が大きく抉れ、そこから木が折れて倒れた。またステータスを確認すると、今度は12も消費されている。



「ちゃんと魔力操作ができてるようね。じゃあ次は闇魔法のボール系をできるだけ威力を減らして使ってみなさい」


「うん」


そして、俺は次に闇魔法を倒れた木のすぐ隣にある木を的に放つことになった。

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