第17話 特訓の変化

「じゃあ、魔法の特訓を始めるわよ」


「うん!」


午前中の勉強を乗り越え、午後の魔法の特訓の時間がやってきた。今日の午前の勉強では計算を中心的にやった。依頼金を誤魔化されないために計算が大事なのは両親から言われて理解しているが、それでも計算の勉強は難しいからあまりやりたくない。

しかし、午前と比べて今は楽しみだった魔法の特訓だからやる気十分だ。


「あっ…」


なんて思っていたが、昨日の魔力切れを考えると、少し憂鬱になってきた。



「今日は魔力切れになる予定は無いわよ。したいならしてもいいけど」


「い、いや!別にいい!」


母さんのいらない提案を俺は食い気味で断った。


「じゃあ、今日は雷のボール系の魔法を使ってみて。その時に魔力切れになった時に空いてた空間を意識してね」


「わかった」


俺は母さんの言う通りに、昨日違和感があった場所を意識しながら、雷魔法を発動しようとする。


「轟け!サンダーボール!あっ!」


俺の魔法はしっかりと発動し、的として狙った木の幹に当たった。木の幹は昨日のアイスボールのようにえぐれたが、雷だからか今度はえぐれた部分が少し焦げてもいる。


「気が付いた?」


「うん」


魔法を詠唱している途中に意識していた場所から何が流れ出て手を通じて魔法として出ていった。


「流れまで掴めたなら後はそこから魔力を魔法を使わずに動かしてみなさい」


「うん」


俺はそれからその場にあぐらをかいて頑張って動かそうとした。




「少し気分転換したくなったら木の幹に魔法を放つといいわ」


「うん」


1時間ほどやっても全く進展しなかった俺に母さんはそう助言する。確かにうんともすんとも流れないし、動かないので、魔法を使って流れる感覚を掴もう。

俺は時々氷魔法と雷魔法を使ったりしながら何とか魔力を動かそうとした。ちなみに、なぜか闇魔法は使うのを禁止されている。



「今日は日が暮れてきたから終わりね」


「はあ…」


結局、その日のうちに魔力を操ることはできなかった。


「魔力操作は1から取得しようとしたらどんなに早くても1ヶ月はかかるから焦らなくてもいいわよ」


「あ、そうなんだ」


なんだ、てっきり俺はすぐに取得できるものだと思っていた。しかし、その考えは甘く、新しくスキルを取得するのはかなり大変で時間もかかるそうだ。


「まあ、魔法を使わなければ家でもやれるから強くなりたいなら暇な時はやっているといいわ」


「わかった!」


ルイは元から魔力操作を取得していた。ルイと比べたら俺は既に遅れているのだ。だったら時間を見つけて暇な時は取得できるように特訓するしかない。



「さて、そろそろ父さんも帰ってくる頃だから家でご飯の準備をするわ。少し手伝って」


「うん」


こうして、今日の特訓は終わり、俺は家に帰った。

また、夕飯後の夜は昨日と同じように両親の冒険者話を聞き、寝た。そして、次の日からも同じように特訓をして過ごした。

特訓の内容は両親の都合で日によって変わる。ただ、内容自体は父さんとの打ち合いか魔力操作か勉強の3つで分けられていた。そして、両親はその3つが均等になるように調整してくれていた。


しかし、勉強の方は進展はあるものの、1ヶ月経っても打ち合いでは一方的にボコられて、魔力操作はまだ取得できないままだった。

そんな中、父さんとの打ち合いの内容が変化する。



「ヌル、これからは当分は武器を使わず、素手で俺と戦ってもらう」


「え?」


そう、今まで木の武器を使って父さんと打ち合っていたのに、急に素手で戦うことになったのだ。


「期間も定めようと思う。期間はヌルの体術のスキルレベルが2になったらだ」


「え!?そんなに!?」


1ヶ月経っても俺のどのスキルもレベルは上がっていない。つまり、単純計算だと、1ヶ月以上は素手で戦うということだ。


「何も理由なくそう言っているわけじゃないからな」


「まあ、そうだよね」


両親が俺のためにあれこれ考えて特訓してくれているのは俺にも伝わってきている。


「それが分かってくれてるなら良かったぜ。その理由を聞きたいか?」


「うん」


そして、父さんはなぜ素手での特訓をそんな長期間行うかを話しだす。

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